『黒と白のあいだで:翔の四季 秋』 斉藤洋

黒と白のあいだで 翔の四季 秋 作者:斉藤 洋,いとう あつき 講談社 Amazon ジャーマンシェパードのトラウムと毎日散歩をしていた小学五年生の翔の夏休みの話が、前作『かげろうのむこうで: 翔の四季 夏』だった。そして、今は秋だ。校内では窃盗事件、町内で…

『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』 小野寺拓也、田野大輔

検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? (岩波ブックレット 1080) 作者:小野寺 拓也,田野 大輔 岩波書店 Amazon ナチスは「良いこと」もしたのか? 定期的に繰り返される議論だそうだ。 ヒトラーは民主的に選ばれた、当時のドイツ国民は熱狂的にナチを支持し…

『やまの動物病院』 なかがわちひろ

やまの動物病院 作者:なかがわちひろ 徳間書店 Amazon まちの動物病院は、山のふもとの一軒家。まちの先生のところには病気の動物はたまにしか来ません。たまにどころか、この本を読んでいる限りでは、たった一人ではないだろうか。やっていけるのかなあ、と…

『ハムネット』 マギー・オファーレル

ハムネット (新潮クレスト・ブックス) 作者:マギー・オファーレル 新潮社 Amazon アグネスと夫の間には三人の子どもがいる。真ん中のハムネット(双子の兄)は、1596年、11歳のときに黒死病で亡くなった。彼の父親はその四年ほどあとに『ハムレット』という…

『ルクレツィアの肖像』 マギー・オファーレル

ルクレツィアの肖像 (新潮クレスト・ブックス) 作者:マギー・オファーレル 新潮社 Amazon 「 歴史的背景 一五六〇年、十五歳のルクレツィア・ディ・コジモ・デ・メディチは、フェラーラ公アルフォンソ二世デステとの結婚生活を始めるべく、フィレンツェをあ…

10月の読書

10月の読書メーター読んだ本の数:13読んだページ数:2586こぶたのむぎわらぼうし (はじめてよむどうわ)の感想七匹がおそろいの麦わら帽子にそれぞれの目印をつけるが、末っ子はなかなか決まらなくて……。こぶたのみつけためじるしがいいなあ、と思うのは、出…

『こぶたのむぎわらぼうし』 森山京/佐野洋子(絵)

こぶたのむぎわらぼうし (はじめてよむどうわ) 作者:森山 京 小峰書店 Amazon ぶたのおかあさんが、七ひきのこぶたにおそろいの麦わら帽子を編んでくれた。そっくりのむぎわらぼうしをまちがえないように、めいめい自分のめじるしをつけることにした。いっぴ…

『幽麗塔』 江戸川乱歩;宮崎駿(カラー口絵)

幽霊塔 作者:江戸川 乱歩 岩波書店 Amazon 巻頭、16ページの宮崎駿のカラー口絵(コミックエッセイ)が良かった。本文のガイドとして以上に、読み応えのある小品という感じ。『幽霊塔』に魅せられ夢中になって読んだ少年時代の思い出、江戸川乱歩が『幽霊塔…

『目まいのする散歩』 武田泰淳

目まいのする散歩 (中公文庫) 作者:武田泰淳 中央公論新社 Amazon 作者は、富士山麓の山小屋から、別荘地や森を散歩する。大病後で、ときどき起こるめまいを警戒しながら、休み休み、そろそろ歩く。そのようにして始まった作者の散歩は、だんだん遠くへ行く…

『アメリカの鱒釣り』 リチャード・ブローティガン

アメリカの鱒釣り (1975年) 作者:リチャード・ブローティガン Amazon 短い断章から断章が続く不思議な本。それぞれに別個のタイトルがついていて、共通するテーマが「アメリカの鱒釣り」なのだ。アメリカの鱒釣り、って、ときどきは釣りそのものを指すけれど…

『パレスチナのちいさないとなみ』 高橋美香、皆川万葉

パレスチナのちいさないとなみ 作者:高橋 美香 かもがわ出版 Amazon イスラエル占領下のパレスチナ自治区の暮らしについて、2019年に書かれた本である。簡単な歴史なども書かれている。二人の著者は、長い間パレスチナの人々の間に入り、さまざまな形で支援…

『一葉のポルトレ』 薄田泣菫、戸川秋骨、他;小池昌代(解説)

一葉のポルトレ (大人の本棚) 作者:薄田 泣菫、戸川 秋骨、幸田 露伴 他 みすず書房 Amazon 樋口一葉は、肺結核のため、25歳で亡くなった。一葉亡きあと、友人、妹、同時代の文学者たちが、一葉の思い出を綴る。執筆者は、薄田泣菫、戸川秋骨、岡野知十、疋…

『無実はさいなむ』 アガサ・クリスティー

無実はさいなむ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 作者:アガサ クリスティー 早川書房 Amazon 資産家のアージル夫人が殺害され、容疑者として養子(五人の養子のうちの一人)ジャッコが逮捕される。ジャッコはアリバイを主張するが立証できず有罪となり、獄…

『秋の四重奏』 バーバラ・ピム

秋の四重奏 (Lettres) 作者:バーバラ ピム みすず書房 Amazon 四人の男女、エドウィン、ノーマン、マーシャ、レティは、ある会社の同じ部署に勤務する同僚だ。四人とも六十代独身で、定年を間近に控えている。 定年になったら、どんな暮らしをしようか。様々…

『博物館の少女 騒がしい幽霊』 富安陽子

博物館の少女 騒がしい幽霊 作者:富安陽子 偕成社 Amazon 上野の国立博物館内にある怪異学研究所に勤める花岡イカルは、13歳という若さながら骨董や美術品の目利きである。というだけではなく、本人に自覚はないが、目に見えない怪異にも目利きであるような…

『終わりのない日々』 セバスチャン・バリー

終わりのない日々 (エクス・リブリス) 作者:セバスチャン・バリー 白水社 Amazon 「私」ことトマス・マクナーティが相棒のジョン・コールに出会ったのは14歳の頃だった。生い立ちは違うが、二人とも子ども時代を何とか生き抜いてここまで来た。整った顔立ち…

『大つごもり・十三夜 ほか五篇』 樋口一葉

大つごもり・十三夜 他五篇 (岩波文庫 緑 25-2) 作者:樋口 一葉 岩波書店 Amazon 『大つごもり』『ゆく雲』『十三夜』『うつせみ』『われから』『この子』『わかれ道』の七編が収録されている。 『大つごもり』は、たいそうなご身代ながら、世間から「吝(し…

『にごりえ・たけくらべ』 樋口一葉

にごりえ・たけくらべ (岩波文庫 緑25-1) 作者:樋口一葉 岩波書店 Amazon 「……赤蜻蛉田圃に乱るれば横堀に鶉(うずら)なく頃も近づきぬ、朝夕の秋風身にしみ渡りて上清が店の蚊遣香懐炉灰に座をゆづり……」一葉の文章は、雅俗折衷体というのだそうだ。リズム…

『おばあちゃんのにわ』ジョーダン・スコット/シドニー・スミス

おばあちゃんのにわ 作者:ジョーダン・スコット 偕成社 Amazon おとうさんは「ぼく」を、毎朝、車でおばあちゃんの家におくっていく。「ぼく」はおばあちゃんが用意してくれた朝ごはんを食べる。学校までの道は、おばあちゃんが送り迎えしてくれる。おばあち…

9月の読書

9月の読書メーター読んだ本の数:10読んだページ数:1473ある犬の飼い主の一日 (新潮クレスト・ブックス)の感想当たり前の一日は、何かが起きそうな(実際起きても起きなくても)小さなディテールのつみかさねで出来ている。当たり前の一日は、いつのことでも…

『ある犬の飼い主の一日』 サンダー・コラールト

ある犬の飼い主の一日 (新潮クレスト・ブックス) 作者:サンダー・コラールト 新潮社 Amazon 高齢の愛犬スフルクと暮らすヘンクは56歳の看護師。彼が、朝ベッドで目を覚ましてから夜目を閉じるまでの、ある夏の一日。 ヘンクは仕事場での昨日の小さなトラブル…

『ごきげんなすてご』 いとうひろし

ごきげんなすてご (BOOKS FOR CHILDREN) 作者:いとうひろし 徳間書店 Amazon 「あたし」のおとうとが生まれた。おとうとはかわいくない。「おさる」だもの。それなのに、お母さんはおとうとばっかりかわいがる。だから、「あたし」はすてごになろうと思った…

『ちっちゃい おおきい おんなのこ』 クレア・キーン

ちっちゃい おおきい おんなのこ 作者:クレア・キーン ほるぷ出版 Amazon マティスはちっちゃい女の子。ちっちゃい女の子には、できることはたくさんあるし、楽しめることもいろいろある。大きなお店のなかをちょろちょろするとか。お店の広い通路をぴょんぴ…

『トラや』 南木佳士

トラや (文春文庫) 作者:南木 佳士 文藝春秋 Amazon 野良の仔猫トラが、一家にやってきたのは、医師であり作家である著者が鬱病に苦しんでいたときだった。トラと関わりが深かったのは二人の子どもたちで、世話をしたのは妻だった。最初は、著者がそこまでト…

『チャイナタウンからの葉書』 リチャード・ブローティガン

チャイナタウンからの葉書―リチャード・ブローティガン詩集 作者:ブローティガン,リチャード サンリオ Amazon ブローティガンの七冊の詩集から訳者池澤夏樹さんのチョイスで六十余編の詩が選ばれた。訳者は、一切の「注」をあえてつけなかったという。だから…

『死への旅』 アガサ・クリスティー

死への旅 (クリスティー文庫) 作者:アガサ・クリスティー,奥村 章子 早川書房 Amazon 優秀な科学者が次々に失踪するという事案がヨーロッパ各地で起こっている。イギリス情報部は、ある秘密結社の陰謀とみている。失踪中の物理学者を追って妻のオリーヴが、…

『海鳴りの丘』 ジル・ペイトン・ウォルシュ

海鳴りの丘 (1981年) (あたらしい文学) 作者:ジル・ペイトン・ウォルシュ 岩波書店 Amazon 『夏の終りに』で、子どものころのマッジとポールが毎夏を過ごしていた祖母の館ゴールデングローブ荘の、その後の物語。最愛の祖母が亡くなったのは『夏の終りに』の…

『夏の終りに』 ジル・ペイトン・ウォルシュ

夏の終りに (1980年) (あたらしい文学) 作者:ジル・ペイトン・ウォルシュ Amazon コーンウォールの海辺の高台のゴールデングローブ荘が、ポールとマッジの祖母の家。従姉弟同志の二人は、毎夏を祖母の家で過ごすのを楽しみにしていた。二人の家族はなぜか互…

『時ありて』 イアン・マクドナルド

時ありて 作者:イアン・マクドナルド 早川書房 Amazon エメットは戦記物を専門にする古書ディーラーだが、この日掘り出したのは詩集だった。『時ありて』、イニシャルだけの著者名、発行年は1937年になっている。出版社は記されていない。後に、入手したとき…

『水平線のかなたに 真珠湾とヒロシマ』 ロイス・ローリー/ケナード・パーク

水平線のかなたに 真珠湾とヒロシマ (文学の扉) 作者:ロイス・ローリー,ケナード・パーク 講談社 Amazon 1941年12月7日(日本時間8日)、日本による真珠湾攻撃で、米軍の戦艦アリゾナ号は数分で沈んでしまい、1177人の兵士が犠牲になった。1945年8月6日、ア…