『こぶたのむぎわらぼうし』 森山京/佐野洋子(絵)

 

ぶたのおかあさんが、七ひきのこぶたにおそろいの麦わら帽子を編んでくれた。そっくりのむぎわらぼうしをまちがえないように、めいめい自分のめじるしをつけることにした。
いっぴきのこぶたは、きいろいかぼちゃの花。
べつのこぶたは、緑色の笹の葉。
白いユリの花や、赤いキイチゴの子もいる。
みんながどんどんきめていくなかで、七ひきめのおちびさんは、なかなかめじるしがきまらない。そこで、外にめじるしをみつけにでかけた。


そのめじるし素敵、とってもいいなあ。
だけど、こんなふうにあちこち歩いて、出会って、眺めて考えて、やっとみつけたものなら、それが、かぼちゃの花だって、笹の葉だって、やっぱり同じくらいうれしかったと思う。
こぶたのみつけためじるしがいいなあ、と思うのは、たぶん、出会うまでの物語全部が好きだから。このめじるしのなかに、それまでの物語がみんな入っているからなのだ、と思う。
自分だけが知っているうれしい物語が、帽子の上で揺れている。