1月の読書

1月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2140

真昼のユウレイたち真昼のユウレイたち感想
幽霊たちのやさしさがしみじみと温かくて、人知れず静かに苦しんでいる人たちが、過去からこんなにも大切に見守られていることに、ほっとする。目に見えても見えなくても、あの人は、どこかできっとこちらのことを気にかけていてくれるかもしれない、とも思えて。
読了日:01月30日 著者:岩瀬成子
ウィンダム図書館の奇妙な事件 (創元推理文庫)ウィンダム図書館の奇妙な事件 (創元推理文庫)感想
学問の府で、科学や叡知が、理性の進歩を阻むこともあるみたい。凝り固まった考えがまわりまわって、物語に絡んでくる嫌らしさ。それであっても、ラストに灯された小さな光は、ひときわ明るい。作者がもともと児童書の作家さんであることにもよるかなあ、と思いつつ、ほっとしながら読み終えた。
読了日:01月25日 著者:ジル・ペイトン・ウォルシュ
よくできた女 (文学シリーズ lettres)よくできた女 (文学シリーズ lettres)感想
ミルドレッドの回りの人たちは、ミルドレッドが内面にどんなに素晴らしい宝をもっているかということも、その宝にしっかりと根を下ろして安定して立っているかということも、逆立ちしたって気づくことができない。少しだけ開いた手のなかの、彼女の宝物をちょっと見せてもらったような気持ちの読者である。
読了日:01月21日 著者:バーバラ・ピム
つきよのアイスホッケー (世界傑作絵本シリーズ)つきよのアイスホッケー (世界傑作絵本シリーズ)感想
闇は、くるまったマントのように温かく感じる。木々の向こうにいるかもしれない動物の気配も、子どもらを照らす親し気な満月も。きんとした冷たささえも含めて、やはり、温かい、と感じるのは、子どもたちの満ち足りた気もちによるのだろうか。目鼻があるかなきかという程度にしか描かれていない子どもたちの顔もよかった。
読了日:01月19日 著者:ポール・ハーブリッジ
蒼ざめた馬 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)蒼ざめた馬 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
自分のほうが敵より一枚上手、と思っていたのに、罠に嵌ったのは自分等の方。刻一刻と大切なものが奪われる時間が近づく。たちこめるオカルトチックな雰囲気。不安。緊張感。後半のドキドキしたことったら!主人公の恋も気になるところ。恋人への要望は、自分の人生、何に重きを置いて生きていくかの確認のよう。
読了日:01月15日 著者:アガサ・クリスティー
こえてくる者たち 翔の四季 冬こえてくる者たち 翔の四季 冬感想
遠景のようだった事件がいつのまにか近づき、巻き込まれていく事情は、二作目の「秋」に似ている。そして、物語のそこかしこに置かれた小さな切ないようなやさしいようなエピソードが愛おしく思えるのも。だけど、この本の結末は閉じているとは言えない。思いがけない方向からの「あれ」はどういうことなのか。待ち遠しい春!
読了日:01月13日 著者:斉藤 洋,いとう あつき
神様のいる街神様のいる街感想
幻の処女作『ホテル・トロール・メモ』を中心にした三つの章が若かった日を振り返る。神保町にも神戸にも「神」がいる。「神」ってなんだろう。地名の漢字あそびではなくて、出会った誰かではなくて、この一冊の美しい本のそこかしこに感じる、無数の物語に籠る何かの気配を「神さま……」と呼びたい。
読了日:01月10日 著者:吉田 篤弘
窓辺のこと窓辺のこと感想
どこにでもありそうな光景、時間が、どんなにかけがえがなかったかは、きっとあとにならないと気がつかないのだろう。特別なことは何もなくていい。なんでもない日がいい。そう思いながら読んでいる。だけど、いつもそこにある、これからもある、と思っていたものは、本当はなんと壊れやすいのだろう。
読了日:01月07日 著者:石田 千
ロサリオの鋏 (Modern&Classic)ロサリオの鋏 (Modern&Classic)感想
ロサリオを愛するアントニオの気持ちは切ないけれど、彼もエミリオも、良家の息子で帰る家があり、将来は安泰なのだ。彼らは、帰る場所を手放すことはない。アントニオのロサリオへの思いが切々とうたわれればうたわれるほどに、その立場の違いがいっそう引き立つように思えて、ロサリオの境遇の暗さ、救いようのなさが際立つ。
読了日:01月04日 著者:ホルヘ・フランコ

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