2月の読書

2月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:4229

ぼくとベルさん 友だちは発明王 (わたしたちの本棚)ぼくとベルさん 友だちは発明王 (わたしたちの本棚)感想
興味があっても手を出す前に、おまえには無理だと決めつける。大人たちの偏見、差別は、エディへの愛情、善意から出ている。それが、悪意からよりもずっと堪えた。だけど、人を曇りのない眼で見ることって、なんて難しいのだろう。ベルさんがエディにとって特別な人だったのはなぜなのか、どんなに素晴らしいことだったか、と思う。
読了日:02月28日 著者:フィリップ・ロイ
ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)感想
石に鳥を描く人の話の間に挟まれた六つの短編は石の鳥が語ったようだった。「私」たちが飛び立つ鳥や少年と過ごす野の日々に感じるのは、静けさと平和、透明感。少年も鳥もたぶん、(サソリのように)どうしようもない人間たちのが求めてやまない(でも、決して所有できない)、憧れであり、聖性のようなものなのだろうと思う。
読了日:02月26日 著者:稲見 一良
鏡は横にひび割れて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)鏡は横にひび割れて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
真相を知ったとき、物語がミステリかどうかなんてどうでもよくなった。やりきれない、いたたまれない思いでいっぱいの読後感だけれど、タイトル(テニスンの詩の一節だそうです)とともに、長く忘れないだろうと思う。ミス・マープル自身も、外から見たら年をとったように見えるが、内側は変わりのないミス・マープルにほっとする。
読了日:02月23日 著者:アガサ・クリスティー
ジョイ・ラック・クラブ (角川文庫)ジョイ・ラック・クラブ (角川文庫)感想
八つの人生の物語を小間切れに読んだはずだけれど、実は、母と娘と、二つの物語だったような気がしている。そして、二つの物語は、いつだって入れ替わるように思うのだ。母は誰かの娘であるし、娘は誰かの母でありうるのだから。途切れることなく続いているこの流れがどうして葛藤や絶縁の連鎖であるだろうか。
読了日:02月21日 著者:エィミ タン,Amy Tan,小沢 瑞穂
さくら村は大さわぎさくら村は大さわぎ感想
日常は、たくさんの驚きや喜びを隠している。この本のなかで、子どもたちも大人たちも、よく待っている。期待に胸をふくらませて、何かが始まる時を待っている。物語のおしまいは、うれしい期待が膨れ上がる長い待ちだし。そしてね、気がつくのだ。ああ、わたしたちも、今、大きな待ちの時にいるのだ、と。
読了日:02月19日 著者:朽木 祥
海と山のオムレツ (新潮クレスト・ブックス)海と山のオムレツ (新潮クレスト・ブックス)感想
大勢の人々と囲んだテーブル、そのときどきの料理の思い出は、鮮やかだった。食べる思い出は、ほかの思い出も連れてくる。料理の乗ったテーブルの向こうに、はるかな時代をたゆまず歩いてきた先祖たちの姿が見えないだろうか。たぶん伝統とか文化ってそういうものなのだろう。
読了日:02月18日 著者:カルミネ アバーテ
くらやみに、馬といるくらやみに、馬といる感想
時間が経つにしたがって見えてくる、暗闇だからこその色合い。輪郭が曖昧だからこその豊かさ。暗闇だからこそ聞き分けられる音もある。くらやみのなかで考える、生きること、死ぬこと。異種の友だちのこと。言葉(ことに言葉にならずに抜け落ちていくものたち)のこと。私たち、昼よりも暗闇で考え、話したほうがいいことがあると思う。
読了日:02月16日 著者:河田 桟
夜と朝のあいだの旅夜と朝のあいだの旅感想
「人生でいちばんすばらしい時間だ。だから、大抵人間はこの時間に死を迎える。夜は行こうとしているがまだ朝にはなりきっていない。そんな時間だ。色調は夜だが、もう朝の匂いがする。」それは、この物語全体の雰囲気に似ている。朝と夜の間の旅をしているのはラフィク・シャミ自身の魂かもしれない。
読了日:02月15日 著者:ラフィク・シャミ
パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
こちらの列車の客室から、あちらの列車の客室の殺人を目撃してしまうという劇的な幕開け。しかも死体がなかなかみつからない……。ミス・マープルがずいぶん弱っているようで寂しかったが、分身のようなルーシーの登場が楽しい。彼女に夢中になる、くせのある老若の男たちの言い寄り方が、あまりにそれぞれらしくておかしかった。
読了日:02月12日 著者:アガサ クリスティー
マリオと動物たち (昭和39年)マリオと動物たち (昭和39年)感想
森のゴイサギばあさんの小屋に隠れ住んだマリオは森を自由に飛び回るようになる。彼は森そのものだった。彼という存在が森だった。森の匂いが本のなかから広がってくるようだった。ドイツの森の広さ深さ豊かさを存分に味わった。でも、ここは閉じられた世界だ。いつか出て行かなければならない楽園なのだ。
読了日:02月10日 著者:ボンゼルス
ブッチャーズ・クロッシングブッチャーズ・クロッシング感想
人が狂気に囚われるなら、町も狂気に囚われる。人が何かを失い、同時に成長するなら、町もまたそうなのだろう。祭りのようなバッファロー狩りは、取り返しのつかない狂気の祭りのようだ。旅の間に青年の皮膚は厚く固くなり、主人公はもうぼんぼんではなくなった。だけど、成長とは何なのだろう。彼は何を失い、何を得たのだろう。
読了日:02月08日 著者:ジョン・ウィリアムズ
子どもの道くさ (居住福祉ブックレット)子どもの道くさ (居住福祉ブックレット)感想
道くさは、子どもの貴重な時間、空間だ。これを取り上げることは、子どもの成長の機会を奪うことにさえなる。子どもたちの道くさの状況が写真とともに紹介されるが本当に面白い。昔の道くさと今の道くさでは、環境も変わってしまったせいで、いろいろ違うのだけれど、道くさの気持ちというか方向性というかは、ちっとも変わっていない。
読了日:02月06日 著者:水月 昭道
木霊草霊木霊草霊感想
「二十一か月、植物の生き死にを考えつめた」という伊藤比呂美さんの、『図書』に連載したエッセイをまとめたものだ。植物に関するエッセイであるし、取り上げられる植物の幅はとても広いのだけれど……伊藤比呂美さんというフィルターを通したら、どれもむんむんするほどのエネルギーを放ち始める。凄みがある。
読了日:02月04日 著者:伊藤 比呂美
風のヒルクライム ぼくらの自転車ロードレース (物語の王国Ⅱ)風のヒルクライム ぼくらの自転車ロードレース (物語の王国Ⅱ)感想
レースといえば、勝ち負けが気になるではないか。順位やタイムなど、大切ではないか。だけど、いつのまにかそれを忘れる。目指すゴールはそれぞれで違うし、走っているうちに変わってくることもあるのだ。柔軟に、おおらかに変わっていく彼らの走りはなんて気持ちがいいのだろう。
読了日:02月02日 著者:加部 鈴子
ポケットにライ麦を〔新訳版〕 (クリスティー文庫)ポケットにライ麦を〔新訳版〕 (クリスティー文庫)感想
ニール警部とミス・マープルとで事件を解明していく。「いまも申しあげたように、あなたとわたしは異なる視点に立っています」とのニール警部の言葉通り、別のルートを追って事件解決に向かう。その道すじが二重奏のようで楽しかった。「子供時代が幸せだったなら、それを奪うことは誰にもできません」物語のなかで心に残った言葉。
読了日:02月01日 著者:アガサ・クリスティー

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