4月の読書

4月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:4562

ペイントペイント感想
何かしらの枠を想定してその内側に閉じこもるところから生まれる不愉快なモノが背景にある。親子関係。実の親に育てられないことは不幸とはいえない。実の親に育てられることが必ずしも幸福ではないように。「子どもは親を選べない」というが違うかもしれない。子どもが、親を選ぶのだ。親たちは、心して受け入れるしかない。
読了日:04月27日 著者:イ ヒヨン
普通のノウル普通のノウル感想
自分を縛っているものが少しずつ消えて行く。伸びやかな気持ちに驚く。ついつい誰かに普通の幸せを祈りたくなってしまうわたしだから、ときどき、ノウルたちに会いにこの本の中に帰ってくるのがいいかな、と思う。楽ではない道を歩こうとしている人たちへの言葉が好き。「……みなさんはだれよりもキラキラ輝いているんですから」
読了日:04月26日 著者:イ・ヒヨン
庭とエスキース庭とエスキース感想
春夏秋冬、さまざまな場所から撮られた庭の写真の、不自然に作りこまれることのない美しさ。今だけが、自分の目のまえにある。未来をあれこれ想像して怯えるよりも、今を地道に生きていく感じだろうか、と励まされるように思う。表紙の写真を見返している。落葉の上にすわる犬は、誰かを待っているように見える。
読了日:04月24日 著者:奥山 淳志
あした、弁当を作る。あした、弁当を作る。感想
行動が伴わない口先の反抗ばかりが思い出される私から見たら、龍樹の自立への道はまっとうで清々しい。「ぼくはぼくでいたいだけだ」という龍樹の願いはいたってシンプル。龍樹の弁当の進化とともに、龍樹自身も少しずつ道を先へ進んでいる。親としては子を無意識にコントロールしていないか振り返ってみたい。
読了日:04月22日 著者:ひこ・田中
バグダッドの秘密 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)バグダッドの秘密 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
人のよい主人公が、あの人にもこの人にも、自分の知っていることや考えた事をぺらぺら喋ってしまうので、はらはらする。出し抜いたり出し抜かれたり、最後に笑うのはもちろん主人公であるはず。だけど、大いに気をもまされる。気持よくゴールインして、主人公との別れを名残惜しく思っている。
読了日:04月20日 著者:アガサ・クリスティー
阿弥陀堂だより (文春文庫)阿弥陀堂だより (文春文庫)感想
「『阿弥陀堂だより』は生命のはかなさに敏感になっていた小百合ちゃんにしか聞こえなかった森のささやきではなかったか」「森のささやき」というならば、この物語がそのまま、わたしには森のささやきのように感じられる。読書中、ずっと本の中の森の声を聴いていたんだなあ、と感じている。
読了日:04月18日 著者:南木 佳士
野原(新潮クレスト・ブックス)野原(新潮クレスト・ブックス)感想
地面の下は、なんて賑やかなんだろう。死者たちが語れば、その声は生き生きとその人や回りの景色を甦らせる。そして、現世の町に暮らす生者たちの日々から、色や音が消えていくように感じられる。いったい、どちらがほんとうの人生なのか、と考えてしまうほどだ。生と死の境界なんて、ほんとうにあるのだろうか、と。
読了日:04月16日 著者:ローベルト・ゼーターラー
グッゲンハイムの謎グッゲンハイムの謎感想
この世にたったひとつしかない芸術作品に対する理解が、この世にたったひとりしかいない、かけがえのないあなたや私への理解につながっていくのが気持ちよい。物語の最後の言葉が素敵だ。「ぼくはテッド・スパーク。ぼくは、ぼくでいられてうれしい」この言葉で読み終えることができて、わたしもうれしかった。
読了日:04月14日 著者:ロビン・スティーヴンス
スタッフロールスタッフロール感想
一見全く別の物語のように見える第一部と第二部、二つの物語が、思いがけない繋がりを見せ始め、気がついてみれば、しっかりと噛み合った、大きな一つの物語に、大きな「居場所」になっていく。その仕掛けに、ああ、と声をあげて驚いているうちに、エンド。スタッフロールが流れてくる。力いっぱいの拍手を送りたい。
読了日:04月12日 著者:深緑 野分
場所 (Hayakawa Novels)場所 (Hayakawa Novels)感想
読んでいて、娘から父への侮蔑は感じなかった。恥も感じなかった。ただ、父とのあいだにできてしまった隔たりに対する悲しみ、諦めを感じた。申し訳なさとともに。感情的な言葉は一切排除されているのに、わたしは、この文章が温かい、と感じる。この作品が、「名指しがたい隔たり」があった父に架けた、ほんとうの橋なのだ、と感じる。
読了日:04月10日 著者:アニー エルノー
かえりみち (ハリネズミ×感想×切り絵【2歳・3歳・4歳からの絵本】)かえりみち (ハリネズミ×感想×切り絵【2歳・3歳・4歳からの絵本】)感想
立ち止まり、じゅうぶんにしずかにしたときに初めて感じるたくさんの気配がある。それを賑やかだと思うのかもしれない。昼間の太陽の下では気がつくこともない、夜にこそ目覚めるものたち、この豊かな色たち……。ここが夜眠るものたちの世界ではないことをしらせてくれるようだ。
読了日:04月08日 著者:ブリッタ・ テッケントラップ
もの言えぬ証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)もの言えぬ証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
そもそもの始まりは、亡くなる数週間前のこと、愛犬が置き去りにしたボールのせいで、かの老婦人が危うく死にかけたことである。ポアロは手始めに、犬の濡れ衣を晴らす。自分があらぬ責めを負わされていることも知らず、物語のあちこちで意気揚々と吠え、駆けまわるテリア犬のボブが、なんともかわいい。
読了日:04月06日 著者:アガサ クリスティー
ベル・ジャー (Modern&Classic)ベル・ジャー (Modern&Classic)感想
作者の最期が、壮絶な自死であったという事実(作者のプロフィールによる)に、たまらない気持ちになってしまう。二度目のベル・ジャーの覆いを除けることは出来なかったのか、と。作者の死後、この物語が世界中で読まれていることを思いながら、物語の中のエスターは、作者から独り立ちして、いまも歩いているのだと信じている。
読了日:04月05日 著者:シルヴィア・プラス
87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし感想
本文中にこんな言葉がある。「料理本も好きです。レシピはそのまま作ることはないけれど、エッセンスをいただきます」ああ、そういうことだな、と思う。わたしも、この本からエッセンスをいただく。エッセンスは「隙間」だ。隙間の、気持ちよいリズムで、呼吸させてもらうため。
読了日:04月04日 著者:多良 美智子
ひみつの犬ひみつの犬感想
白か黒かで考えると、自分も周りの人も息苦しくなってしまう。そもそも、岩瀬成子さんの描き出すこどもの姿が単純ではない。大人が思う以上に細々としたことに敏感で、いろいろなことがちゃんと見えていたりする。その細かさの積み重ねにどきっとする。何十年も大人をやっていても、子どもにはかなわないと思う時がある。
読了日:04月02日 著者:岩瀬 成子
太陽諸島太陽諸島感想
全ての会話は外に開かれた問いかけのようだ。答えをみつけたいと思うことが旅の扉のようだ。人というには、あまりに捉えどころがない登場人物たち。ふわふわして、自由で……鳥かな。鳥かもしれない。鳥が飛ぶから島ができる。最初から島があるわけではなくて。さばさばと気持ちがいい。
読了日:04月01日 著者:多和田 葉子

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