12月の読書

12月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2923

夏のサンタクロース: フィンランドのお話集 (岩波少年文庫 259)夏のサンタクロース: フィンランドのお話集 (岩波少年文庫 259)感想
フィンランド特有の風土の上で、動物、妖精たちと人びとが活躍する13の物語。森の小屋で、ひとりのおばあさんが糸を紡いでいる。「糸をつむぐとお話の毛糸玉ができる。毛糸玉ひとつにお話ひとつ、その仕事をおばあさんは、もう何百年もつづけてきたというのです」これはそのまま、おばあさんの仕事場のような童話集。
読了日:12月30日 著者:アンニ・スヴァン,ルドルフ・コイヴ
をんごくをんごく感想
これは、別れを受け入れる物語。その過程の物語だと思うのだ。別れがたい思いは、ときに執着に繋がると思う。辛いけれど執着を手放していく。「扇の要をはずす」という言葉があった。扇が扇としてまとまるのは、要があるからこそ。その要を外すのはきっとその先にある善きことを信じることでもある、祈ることでもあると思う。
読了日:12月25日 著者:北沢 陶
2ひきのカエル そのぼうきれ、どうすんだ?2ひきのカエル そのぼうきれ、どうすんだ?感想
世の中、何が起こるかわからないものだ、と思う。ページを開くたびに変っていく急展開のドラマはカエルたちの目線で、なんとダイナミック。背景は、池の青緑の水。広がりと底知れぬ深さを湛えて、涼し気だったり不気味に思えたり。はたこうしろうさんの訳による、ぽんぽんと飛び交うカエルの会話が落語みたいで楽しい。
読了日:12月23日 著者:クリス・ウォーメル
1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝 (朝日文庫)1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝 (朝日文庫)感想
ペアテが考案した条文は、結局、憲法草案からは、かなり削られてしまったものの「男女平等」という言葉は残された。当時の日本政府が「日本には、女性が男性と同じ権利を持つ土壌はない。日本女性には適さない」と撥ねつけようとしたことも、アメリカ側が「ここだけは」と通したことも、覚えておきたい。
読了日:12月20日 著者:ベアテ・シロタ・ゴードン,平岡 磨紀子
狼の幸せ狼の幸せ感想
物語は36章+1。山を背にした複数の男女の一年間。その時々の自然描写や人の仕事を抜き書きすれば、山の歳時記ができそう。この本は、作者から読者に贈ってくれた『フォンターナ・フレッダ三十六景』。人の暮らしの悲喜こもごもを、私は動かぬ山の立場で見ているような気がする。だから、物語が静かだと感じるのだろう。
読了日:12月17日 著者:パオロ・コニェッティ
レベル3 (異色作家短篇集)レベル3 (異色作家短篇集)感想
現在のわたしにとって、彼らの「小さな旅」の物語は、わたしのタイムマシーンだ。行ったきりにならないで、本を閉じると同時にここへ帰って来ることが約束されているから、ある主人公たちのように悩んだり躊躇することなく、このマシーンに乗れる。いちばん好きなのは『世界最初のパイロット』
読了日:12月15日 著者:ジャック フィニイ
ベアトリスの予言ベアトリスの予言感想
意志が強い、ということも過ぎれば、頑固者、融通が利かないとか、欠点になってしまう。身内が呆れるほどの子どもの強い性格を、母親は、そのまま大切な資質、として、伸びやかに育てた。少女も魅力的だが、彼女のもとに集まってくる仲間たちも良い。どのように生きたら生きやすいか、ということにはあまり興味がない人たちなのだ。
読了日:12月13日 著者:ケイト・ディカミロ
歌わないキビタキ 山庭の自然誌歌わないキビタキ 山庭の自然誌感想
この本を読んでいると、落ち着いたポジティブさや、安心に満たされてくる。全体として明るい話ではないのに。ないから?いつのまにか、わたし、励まされている?諦めではないのだ。先ずはありのままを受け入れる。そのうえで、どんな飛び方ができるのか、わたしもわたしなりに探していこう。
読了日:12月09日 著者:梨木香歩
ねこもおでかけ (わくわくライブラリー)ねこもおでかけ (わくわくライブラリー)感想
信ちゃんにとってトラノスケは自分にしばりつける「ペット」ではなくて、自分の知らない顔も持つ「友だち」なのだ。壁のポスターの動物たちみたいに友だちがふえていく。世代も種族も越えて。空気の温度も変わっていくようで、幸せな気持ちになる。猫も子どもも自由に歩き回れる町は本当に幸せな町なのだと思う。
読了日:12月07日 著者:朽木 祥,高橋 和枝
失われたものたちの本 (創元推理文庫)失われたものたちの本 (創元推理文庫)感想
自分が大人になるまでにどんな道を通ってきたかなどということは、都合よく忘れてしまったけれど、ディヴィッドの旅を追いかけながら、何度も息を呑み、ハラハラし、大人になるというのは容易なことじゃないと、つくづく思う。それに手を貸す大人にとっても、死なされるしかない親にとっても。
読了日:12月05日 著者:ジョン・コナリー
大司教に死来る (須賀敦子の本棚 池澤夏樹=監修)大司教に死来る (須賀敦子の本棚 池澤夏樹=監修)感想
次々に容易ならぬ出来事が起こるが、読んでいる私は何と穏やかな気持ちで安らいでいたことか。起った出来事の大きさや深刻さよりも、その都度の神父たちの心情のほうが静かなドラマだと感じるからかもしれない。また、この物語が、この世を去っていく人の満ち足りた思い出の物語であるからかもしれない。
読了日:12月01日 著者:ウィラ・キャザー

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