10月の読書

10月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3938

アーモンドの木 (白水Uブックス)アーモンドの木 (白水Uブックス)感想
幽霊たちが、現世に心残りがあるとしたら、それは悔いや恨みではないのかもしれない。人のまわりに留まっているそれらの気配は(これから生まれようとするものとともに)、生身の人間によりそい、手を差し伸べようとしているようにも思える。背景に控える、魔法が掛かったような美しい風景描写も心に残る。
読了日:10月31日 著者:ウォルター・デ・ラ・メア
長距離走者の孤独 (新潮文庫)長距離走者の孤独 (新潮文庫)感想
階級格差の厳しい社会の、労働者たちを主人公にした八つの作品からは、労働者たちを見下し、平気で踏みにじろうとする小市民たちへのくすぶるような怒りが覗く。それから、労働者たちの暮すこの町への愛着、共感や、むしろ、下から上に向かって射す光だとか、落ちても弾むような弾力に、はっと気がついたりする。
読了日:10月28日 著者:アラン シリトー
夏感想
夏は命ある何もかもが美しく、同時に蒸し暑い空気は、ものを腐らせ、このうえなく不快だ。外から見たら、それはなんと滑稽な眺めだったことだろうか。世間知らずが、背伸びして、責任の意味もしらず、それみたことか、と。先にあったのは成長だろうか。屈服だろうか。
読了日:10月26日 著者: 
ベイビーレボリューションベイビーレボリューション感想
数えきれないくらいの赤ちゃんたちのはいはいは壮観で、ちょっと泣きたいような気持ちになる。だけど、同時に、心の片隅は醒めていて嫌なことを思っている。戦争地帯をハイハイしていく何億の赤ちゃんたちを見て、人びとはほんとうに我にかえるだろうか。爆弾をすてるだろうか。と。(いま、気持ちがちょっと萎えている)
読了日:10月24日 著者:浅井健一
三幕の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)三幕の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
二つの連続殺人事件が落とした腑におちないことばかりをあつめて、並べ替えて、吃驚の絵が出来上がる。「近ごろの世の中は、むしろ狂った童謡みたいなものだからね。」 大筋とは関係ないのだけれど、ある人のこのセリフが心に残った。クリスティーの物語に、よく童謡(マザーグース)がとりあげられるのは、そういうことなのかな。
読了日:10月22日 著者:アガサ クリスティー
家族のあしあと家族のあしあと感想
子どもなりの人情や、見境のないワクワクが、おおらかで眩しい絵になる。背景の、家族の、どちらかと言えば暗さや重さをじっとりと含んだ生活とともに。家族全員が笑い、あれやこれやを話しながらご飯を食べる場面のことを「人生のなかでもかなり上等な至福の時間」と書いている。子ども時代の至福の時間は、きっと生涯の宝。
読了日:10月19日 著者:椎名 誠
そらのことばが降ってくる: 保健室の俳句会 (teens’best selections 57)そらのことばが降ってくる: 保健室の俳句会 (teens’best selections 57)感想
俳句は余白が大きいから、いろいろなことが読み取れる反面、作者のこめた思いを読み取れないことが多々ある。それでいいのだと。それがいいのだと。「伝わるかもしれないけど、伝わらないかもしれない。それくらいの感触が、ちょうど心地よい」と、ソラはいう。私は、このソラの言葉が心地よい。
読了日:10月17日 著者:高柳 克弘
天に焦がれて天に焦がれて感想
「他人の人生ってね、いつまで経ってもわからないことだらけなの」だけど、テレーザは言うのだ。「わたしは彼の事をよく知っている」知るべきこと以外はどんなに大きな、衝撃的な、出来事があっても、天地がひっくり返ったとしても、たぶん、さほど重要なことではない、ということか。テレーザの境地がちょっと羨ましくもなる。
読了日:10月14日 著者:パオロ ジョルダーノ
緋文字 (光文社古典新訳文庫)緋文字 (光文社古典新訳文庫)感想
ヘスター自身は胸の緋文字をどう見ていたのだろう。これをつけることがまるで神様への祈りのように感じられるときがあった。恥というよりも畏れの気持ちで見ていたのではないかと思う時があった。このしるしによる痛みや苦しみにさえ一種の親しさのようなものを感じるのだが。それは、ヘスターが愛娘パールを見る目と被る。
読了日:10月10日 著者:ホーソーン
小鳥はいつ歌をうたう (Modern & classic)小鳥はいつ歌をうたう (Modern & classic)感想
「わたし」が幼いころ祖母に読んでもらった、塔に閉じ込められた姫の童話が象徴的だ。姫は塔を出ていくことが出来たのだろうか。姫が外に出ることで、もしかしたら、思いもかけないほど遠くまでの人々が救われることになるような気がするのだけれど。もしかしたら、不幸な記憶のなかの人たちまでも。
読了日:10月08日 著者:ドミニク・メナール
あいたくてききたくて旅にでるあいたくてききたくて旅にでる感想
民話っていったい何なのだろう、語るということは、聞くということは、本当はいったいどういうことなのだろう。「民話は生きもののようだと思うことがある。ときに貝のように固く蓋を閉ざして、聞き手であるわたしの理解を拒絶するかと思うと、反対に、ぐいと引き寄せて、隠れている淵を深々と見せて驚かす」
読了日:10月05日 著者:小野 和子
家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった感想
ただ、相手に対する絶大な信頼がある。障害者も健常者もなく、それぞれにできること(得意なこと?)もあれば、さっぱりできないこともある。そういう凸凹を愛おしみながら暮らしている感じが、とてもいい。なんだか元気になれるような気がする。「人を大切にできるのは、人から大切にされた人だけやねんな」お母さんの言葉だった。
読了日:10月03日 著者:岸田 奈美
ねじれた家 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ねじれた家 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
最初、結婚を勝ち取るために恋人同志が協力し合って事件を解決する物語化と思ったが当てが外れた。チャールズは探偵としては頼りない。恋人を思って悶々とする胸の内がほほえましいくらいのもので。ソフィアはあくまでも捜査される側。「ねじれた」迷路を手さぐりで進み、読み終えても、まだ、迷路のなかにいるような気分。
読了日:10月01日 著者:アガサ・クリスティー

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