1月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1684
幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)の感想
茫然とするような暗闇が目のまえに広がる、暗闇の底に落ちていくような思いを味わうのだけれど、これは、一つの、姿を変えた希望なのだろう。希望、といっていいならば。……ほんとは泣きたい。一方、希望など持ちようもない袋小路で、ただひたすらに生きていくしかない者たちの、深い諦感、究極の孤独が、心に迫る。
読了日:01月27日 著者:クラーク
母さんの小さかったとき (福音館の科学シリーズ)の感想
『おばあちゃんの小さかったとき』に改定された。嘗てのお母さん(わたしたち)は、いまやおばあちゃんの歳なのだ。パソコンがあり、スマホがある現在、変わったものはたくさんだけれど、そんなに変わらないものもたくさんある。読みながら確認するあれこれが楽しい。小さな共感の積み重ねがたのしい。
読了日:01月25日 著者:越智 登代子
いずみさん、とっておいてはどうですか: こどもの時間のモノ語りの感想
山口いずみさん(昭和27年生)と妹のわかばさん(昭和29年生)姉妹が子どものころに大切にしていた玩具や日記などが写真と文章で紹介される。玩具たちを眺めていると、のびやかに遊ぶ子どもたちのまわりの、あたたかい大人たちの目配りを感じる。この本が楽しいのは、それだからだと思う。幸福な玩具たちだ、と思う。
読了日:01月24日 著者:高野 文子,昭和のくらし博物館
メソポタミヤの殺人〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 12)の感想
事件後、現地を離れ、再び東洋を訪れることはなかった登場人物の回想を通して、最後の最後に、オリエントの香りがふわっと立ち昇るのを感じている。そして事件後、ポアロはシリアに戻り、「その一週間後にオリエント急行に乗り、そこで別の殺人事件に出くわした」そうだ。郷愁に満ちた過去の回想の後の既視感ある未来(?)が楽しい。
読了日:01月20日 著者:アガサ・クリスティー
わたしたちの感想
「わたしたち」は、四人の女性たちのことではない。「わたしたち」は、私たちのことだ。言いたいことをあけすけに言い合っているようにみえて、そうではない。相手の生き方に対する敬意が見え隠れする。無言の信頼だろうか。私の前でも後ろでもない、隣を歩くって、そういうことなのだろう。老いていく2021年の海は気持ちがいい。
読了日:01月18日 著者:落合 恵子
すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集の感想
短編集だけれど、(ルシア・ベルリンのもう一分冊『掃除婦のための手引き書』とともに)全部まとめて、一つの長い物語を読んだような気持になる。惨憺たる有り様と思うが、あっけにとられるほどの、さばさばと突き抜けるような、この人の人生(の一瞬)。いま、わたし、何を見ているのだろう。
読了日:01月17日 著者:ルシア・ベルリン
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