6月の読書

6月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:3667

注文の多い料理店 (角川文庫)注文の多い料理店 (角川文庫)感想
大自然の掟、人ならぬ者の倫理感が、人の世界の良し悪しや情と重ならないことを思い知らされる、それだからこその畏れも湧いてくる、ダイナミックで幻想的な世界。 重なることのないものがともに暮らし、互いが(あるいは人知れずどちらか一方が)歩み寄ろうとする時、物語が生まれる。
読了日:06月29日 著者:宮沢 賢治
雨の日は、いっしょに (おはなしみーつけた! シリーズ)雨の日は、いっしょに (おはなしみーつけた! シリーズ)感想
黄色い傘は、親の手を振り切ってどんどん遠くへ駆けていく子どもみたいだ。雨の日、色とりどりの傘が、街の中を歩いていく。すれ違う傘同志でちょっと挨拶をかわしているかもしれない。傘立てのなかではおしゃべりの花が咲いているかもしれない。そう思うとちょっと楽しい。
読了日:06月27日 著者:大久保 雨咲
桜の実の熟する時 (岩波文庫)桜の実の熟する時 (岩波文庫)感想
少年期から青年期まで。寂しさの内側には一途な激しさを秘めている。捨吉の鬱屈した心については、それでよしと肯定的に書かれているように感じる。沈み込んだ日々は不幸ではないのだと思う。むしろ、浮わついた明るさから離れ、深く思うことの多い、幸せな時代だったともいえるかもしれない。
読了日:06月25日 著者:島崎 藤村
シャルロットのアルバイトシャルロットのアルバイト感想
ちょっとした事件が起こるがほとんどは生活のなかのぼんやりした違和感の正体を見極めたり、起こりそうな事件を未然に防いだり、ささやかなうえにささやかなミステリだ。そういう小さなざらつきは生活の中に簡単に紛れ込んで、見て見ぬふりでやり過ごしそうなことばかり。でも、ささやかなものは案外おそろしい。
読了日:06月22日 著者:近藤 史恵
せなか町から、ずっと (福音館創作童話シリーズ)せなか町から、ずっと (福音館創作童話シリーズ)感想
この島の暮らしがえいのあこがれと失意の眠りの上にあるということを住んでいる人たちは誰も知らない。知らないでいるのがいいな。空気や時間みたいに、誰もが知らずに(忘れて)いられるほど大きくて当たりまえな感じがいいな。大きくてゆっくりな物語が続いている。つづいている物語の上で、人たちは自分の物語を続けている。
読了日:06月20日 著者:斉藤 倫
海浜の午後 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)海浜の午後 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
戯曲三作中『ねずみたち』が一番おもしろかった。一場の舞台の上に閉じ込められて追い込まれて、限られたわずかな人間たちの印象がどんどん変わっていく。短時間中の登場人物たちの変貌ぶりは、まるで人からねずみへと、見る間に変身していくようだった。(ねずみに申し訳ない)
読了日:06月17日 著者:アガサ・クリスティ
八月の梅八月の梅感想
原爆、差別、原罪。読者に対しての問題提起と思えばいいのだろうか。主人公はさまざま考えをめぐらすものの本当はどう考えているのか今一つはっきりしないことに、少し苛立つ。戦後二十年の日本のここまで細やかな描写は作者の体験を踏まえてのものなのだろう。文章の間から懐かしい町の気配や暮しの匂いが沁み出てくるようだった。
読了日:06月15日 著者:アンジェラ・デーヴィス=ガードナー
こんにちは、アンリくんこんにちは、アンリくん感想
子どもの暮らしは、驚くような大事件は起こらないけれど、身の回りには、数えきれないほどの小さな驚きがいっぱいある。明日も明後日も今日と同じくらいには変わったことやおもしろいことがきっと起る。子どもの日々は一刻一刻が尊いな。そんなふうに思わせてくれるアンリくんと猫のミシェルくんのお話。
読了日:06月13日 著者:エディット・ヴァシュロン,ヴァージニア・カール
エミリの小さな包丁 (角川文庫)エミリの小さな包丁 (角川文庫)感想
何がすごいって、素材の調達に始まり、丁寧に料理すること、おいしく食べきるまでの一連が、もしかしたらいちばん「効く」のではないか、と思えること。その工程次第で、一つの食材がどのような料理にも仕上がるものなら、いったいどんなふうに仕上げたいだろうか、どんな風に味わおうか。気持ちの良い風。凛と風鈴が鳴る。
読了日:06月11日 著者:森沢 明夫
熊出没注意―南木佳士自選短篇小説集熊出没注意―南木佳士自選短篇小説集感想
そんなに簡単になんでもわかるわけもなくて、たくさんの謎と空白とを携えて、主人公の前にあらわれる老人たちの姿は、どの人もそれぞれのグロテスクさや喜劇性を見せつける。だけど、そのように描かれた老人たちには、得体が知れないままに共感の気持ちが湧き上がってくる。
読了日:06月09日 著者:南木 佳士
新装版 魔女の宅急便 (角川文庫)新装版 魔女の宅急便 (角川文庫)感想
魔女の仕事の代価は「おすそわけ」。おすそわけって気の置けない人たちの間でやりとりするものだと思えば、魔女のひとりだちって、つまり、ひとりでも生きていけます、食べていけます、ということではなくて、気ごころの知れた人とたくさん出会うこと、お互いにもちつもたれつの「おすそわけ」仲間になっていくことなのだろう。
読了日:06月06日 著者:角野 栄子
キリン解剖記 (ナツメ社サイエンス)キリン解剖記 (ナツメ社サイエンス)感想
著者の解剖に明け暮れる日々の記録には、明るい出口を信じて長いトンネルを手さぐりで歩く人にとっての、たくさんのヒントが隠されている。「自分の力ではどうしても変えられないことは、きっと世の中にたくさんある。大事なのは、壁にぶつかったそのときに、手持ちのカードを駆使してどうやって道を切り開いていくかだ」
読了日:06月05日 著者:郡司芽久
ちいさな桃源郷ちいさな桃源郷感想
昭和33年から58年まで25年間続いた、山の雑誌『アルプ』から厳選の33篇。急激な経済成長の波にも流されず、我が道に誇り高くある。山を愛する人たちの思いがそうだったのか。「アルプ」という雑誌に、そういう人たちが集ったのだろうか。心に残るのは『廃屋の夏』『峠の日記』『ちおんばの山』『黒沢小僧の話』
読了日:06月03日 著者: 
かげふみかげふみ感想
「そっとしといたり(そっとしておいてやりなさい)」が心に残る。それは児童館の中庭で遊ぶ大勢の子どもたちの姿に繋がる。一緒に遊んでいるのは顔見知りの子たちの間に初対面の子が突然現れても屈託なく仲間になってしまう。遊ぶなら人数が多い方が楽しいもの。(一緒に生きる人が多いほうが楽しいもの)
読了日:06月01日 著者:朽木祥

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