6月の読書

6月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:5107

ウィリアム・モリス通信 (大人の本棚)ウィリアム・モリス通信 (大人の本棚)感想
この本はやさしい入門書ではなくて、ウィリアム・モリスの業績や評価など、ある程度は知っていることが前提で、そのうえでの「とは、いっても」の先から始まっている。何の下地もない私には難しかった。せめて、日常がそのまま自然への尊敬の表現になるような暮らし方を、ときには文明批判なども交えながら選び取っていけたら、と思う。
読了日:06月28日 著者:小野 二郎
わたしのあのこ あのこのわたし (わたしたちの本棚)わたしのあのこ あのこのわたし (わたしたちの本棚)感想
仲よくしていれば気まずくなることもある。離れたところから相手を見ていると、 相手のまわりの景色も見えてくる。相手を鏡にして、自分の気もち(持て余し勝ち)に向き合っていることもある。細やかに描かれる二人の気もちを読んでいると、仲良しからちょっと距離を置いたことで、育っているものもある、と感じられる。
読了日:06月27日 著者:岩瀬 成子
海のアトリエ海のアトリエ感想
絵本のなかから、夏の風が吹いてくる。海の匂いのする風だ。今日の日の事をずっと忘れないでいたい……そう思う日は、何のこともなく過ぎていく、ごく普通の日だった。子どもを子ども扱いしない、同じ場所に一緒にいても相手の領域を侵さないでいられる大人と、過ごした日だった
読了日:06月25日 著者:堀川理万子
野呂邦暢ミステリ集成 (中公文庫)野呂邦暢ミステリ集成 (中公文庫)感想
いったい何が正しくて何が正しくないのだろう。自分の思いに自信が持てなくなってくる不安。とりかえしのつかなさに声が出なかったり。血が流れるわけではない。何かを盗られるわけではない。ほとんどの場合、何も起こっていないのではないか。人(自分もふくめて)は迷路のようだと思えてくる。
読了日:06月24日 著者:野呂 邦暢
オオカミに冬なし―グリーンランドとアラスカとのあわい、ある不安な生活の物語オオカミに冬なし―グリーンランドとアラスカとのあわい、ある不安な生活の物語感想
暗い、冷たい、広大な土地の上で、何を成し遂げ、何に負け、何を諦めたのか。その時、その先には、何もないのか。何かがあるのか。一人一人の人間がより鮮明な浮彫になってくるようだ。物語は、容赦ない。厳しい。だけど、それでも(それだから?)くっきりと立ち上がってくるのは人間への信頼、希望。
読了日:06月23日 著者:クルト・リュートゲン
それぞれの世界へ (世界の子どもライブラリー)それぞれの世界へ (世界の子どもライブラリー)感想
ロッテンはとうとう自分の部屋を手に入れた。それは、ロッテン自身が一つの時代を通り過ぎ、次のステージに立ったということでもある。物語は開かれている。それぞれの前には、それぞれの(沢山の課題をかかえた)道がぼんやりと見えている感じ。でも清々しく見送れるのは、少女たち、なんとかここまでを自分の力で越えてきたからね。
読了日:06月21日 著者:マリア グリーペ
さいごのゆうれい (福音館創作童話シリーズ)さいごのゆうれい (福音館創作童話シリーズ)感想
幸福を横においても、進んで、悲しみや苦しみを自分のなかに迎え入れる覚悟を決める。苦しい選択でもあるけれど、同時に思いがけない素晴らしいものを迎え入れることでもあると思う。きっと。おとなになる、ということは、きっと自分の「大幸福時代」を自ら進んで手放すことでもあるのだ。
読了日:06月19日 著者:斉藤倫
運命の裏木戸 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)運命の裏木戸 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
あの本に印をつけた人物のことをもうちょっと知りたかった。古い時代のことで、知る由もないのはわかっているのだけれど。タペンスの体験が、そっくりそのまま、あのころの再現ともいえるのだろうけれど。今回目覚ましい活躍をしてくれたのが、トミーとタペンスの愛犬ハンニバルで、目覚ましい(?)活躍には何度も微笑んでしまった。
読了日:06月17日 著者:アガサ クリスティー
自分の部屋があったら (世界の子どもライブラリー)自分の部屋があったら (世界の子どもライブラリー)感想
自分の部屋があったら、というロッテンの願いは、うそをつきたくないから。誰にも覗かれる心配がない、説明することなく、自分のもの(秘密)をそのまま置いておける場所は、きっと誰にでも必要。自分の部屋とは、ロッテンの心そのものと思うし、成長の証みたいなものだろう。ロッテンのまわりも、ロッテン自身も、変わっていく。
読了日:06月16日 著者:マリア グリーペ
岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020 (岩波少年文庫, 別冊2)岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020 (岩波少年文庫, 別冊2)感想
「……特に紙の本が滅びるといわれてひさしい時代だが~けれども本は滅びなかった」本が滅びないのは、細やかな神経と長い時間とをかけて自信をもって本をこの世に、読者たちのもとに送り出してくれた、多くの作り手たちのおかげ。七十年(この先もっと!)変わらずに読まれ続けられる本を送り出してくれた人々の仕事に感謝している。
読了日:06月14日 著者:若菜 晃子
かはたれ 散在ガ池の河童猫 (福音館文庫)かはたれ 散在ガ池の河童猫 (福音館文庫)感想
『かはたれ』が福音館文庫になった。この季節にうれしい涼やかな表紙。単行本より詳しくて美しい地図がついているのも魅力的。 物語には「聞こえない音楽」という言葉が出てくるが、この物語は、読むというよりも聞こえない音楽を聴いているようだ。これはきっと目で聴く音楽。そして文字で見る絵。
読了日:06月12日 著者:朽木 祥
類感想
森類の身に起こった事だけを並べれば、不幸な人といえるかもしれない。いいや、ちがう。彼が不幸なものか。どん底の暮らしをしていても、類には不思議なゆとりがある。自分を笑い飛ばす余裕がある。愛し愛され、むしろ、なんて幸せな人生だっただろう。きっと、生涯を照らし続ける光のようなものを、父は子どもに残してくれたのだ。
読了日:06月11日 著者:朝井 まかて
スティル・ライフ (中公文庫)スティル・ライフ (中公文庫)感想
夢と硬質な現実とは、長い天秤棒の、遠く離れた端と端にあるものと思う。だけど、そうなのかな。もしかしたら、それらは同じ性質のものになることがあるかもしれない、と読んでいるうちに思えてくる。向こうの端とこちらの端を出会わせるための特別の手だてを持っている人もいるんだろうな。
読了日:06月08日 著者:池澤 夏樹
ウサギとぼくのこまった毎日 (児童書)ウサギとぼくのこまった毎日 (児童書)感想
動物の世話ってほんとに大変。愚痴りながら、悪態つきながらも、何とかしなくちゃ、と動く「ぼく」がほほえましい。ひどいことのあとからやってきたよいものは、「ぼく」たち家族が呼びこんだのだ。特別な家族じゃない。慎ましい日常。特別な事件ともいえないと思う。だから。「ぼく」の気持ちがゆるやかに変わっていく過程が楽しい。
読了日:06月06日 著者:ジュディス・カー
親指のうずき (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)親指のうずき (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
危機に直面したタペンスが、簡単に回避できるはずと目算していたものの、突然、いまや自分は若くない、むしろ老人なのだ、ということに気がついてひるむところ、はっとした。読んでいるこちらも、すっかり忘れていたのだけれど、そうだった、彼ら、もう若くはないのだ。若くない、ということが恐ろしい、と感じた場面だった。
読了日:06月05日 著者:アガサ・クリスティー
鬼ヶ島通信 70+6号鬼ヶ島通信 70+6号感想
私の目当ては、朽木祥さんの『ルーデンス』で、いそいそとページを開く。 保護すべき生き物と駆除すべき生き物を決める人間は、もしかしたら傲慢かもしれない。まして、上等か上等でないか、なんて、誰が決められるのだろうか。誇り高くて、寂しがり屋のルーデンス。あなたはすごく上等だ。どこかにいるだろうか。
読了日:06月03日 著者: 
エレベーターで4階へ (世界の子どもライブラリー)エレベーターで4階へ (世界の子どもライブラリー)感想
ロッテンの危なっかしい綱渡りが、だんだん愛おしくなってくる。ロッテンが大切にしようとしているものの意味が少しずつ私にもわかってきたように思える。読めば読むほどに、知れば知るほどに、人は見た目通りではないことがわかってくる。少女たちも成長していくはずだ。物の見方も考え方も変わっていくだろう。
読了日:06月01日 著者:マリア グリーペ

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