8月の読書

8月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:1977
ク スクップ オルシペ―私の一代の話 (1983年)ク スクップ オルシペ―私の一代の話 (1983年)感想
繰り返される差別に対しては、泣き言や恨みごとをほとんど書かない。心に残るのは、アイヌとして生まれ、アイヌとして生きた人の誇りと矜持だ。「アイヌはどこから来たのでもない、もともとこの日本の国、ポイヤコタン(小さい島の国)に住んでいたほんとうの日本人なのです。」
読了日:08月30日 著者: 
トラウマ・プレート (Modern&Classic)トラウマ・プレート (Modern&Classic)感想
『トラウマ・プレート』というのは防弾チョッキのこと。この本を読んでいると読書にも防弾チョッキが必要な気がしてくる。そう思いながら、ちょっと気がついている。そんなものはまったく役に立たないこと。本当は物語の中の世界と同じくらい私の住むこの世界も奇妙だ。ここでも防弾チョッキなんか役に立たないだろう。
読了日:08月26日 著者:アダム・ジョンソン
上林暁傑作小説集『星を撒いた街』上林暁傑作小説集『星を撒いた街』感想
七つの私小説が収められている。胡散臭いような、ハミダシ者と言われそうな人たちが多く登場するが、彼らが、身の内に思いがけない魅力を隠していることは、知る人ぞ知る。しょぼくれた景色に垣間見える明るさ、おかしみの欠片。一見地味な場面が、読む人にとって、かけがえのない場面になっていく感じが好きだ。
読了日:08月22日 著者:上林 暁
幻の馬幻の騎手 (文学のおくりもの 27)幻の馬幻の騎手 (文学のおくりもの 27)感想
第一次大戦の気が滅入るような町の描写、人びとの描写。スペイン風邪の流行期でもある。この既視感。物語の初めでミランダは夢を見ている。早朝、厩から愛馬を引き出して駆けていく夢。清澄な朝の空気。そこでなぜ馬を止めたのか。横を駆け抜けていく人は誰なのか。読みながらずっと気になっていたが。
読了日:08月19日 著者:キャサリン・アン・ポーター
いちじくのはなしいちじくのはなし感想
おはなしなら、最初から、嘘か本当かなんて野暮なことは誰も聞かない。おもしろかったら「こころ はずんだよ。いいもの聞いたよ」と思って終わるだろうけれど、本当のことだと思って聞いたなら……。あ、でも、いちぢくは、これがほんとうのお話、とは一言もいっていない、のだ。だとしたら、お客さんたちの論争は何なのだろう。
読了日:08月12日 著者:しおたにまみこ
トランペット (白水Uブックス)トランペット (白水Uブックス)感想
収録されているのは七つの物語に幽霊や精霊たちが闊歩するような話はなかった。それなのに不思議な物語を読んだと感じる。幽霊より生きた人間が不気味なのは、ないものを人は想像でつくりだしてしまうから。あるものを想像でゆがめてしまうから。不思議なものなどないはずなのに何かあるような気配。何かが聞き耳をたてているよう。
読了日:08月10日 著者:ウォルター・デ・ラ・メア
アクナーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アクナーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
アクナーテンが目指すエジプトは美しい。国民たちにこうあってほしいとの願いも。 だけど、それだけでは、のっぺりとした単なる絵にすぎないのだ、ということを思い知らされる。失脚する王のまわりには長い時間をかけて周到に奸計がめぐらされていく。 物語が、ずんずん悲劇に向かって進んでいくのを、じりじりしながら見守っていた。
読了日:08月08日 著者:アガサ クリスティー
川釣り (岩波文庫)川釣り (岩波文庫)感想
「渓流の岩かげから泡立つ淵を目がけて釣竿を振る。もうそれだけで充分である。自分は谷川の一部分になっている。もうそれだけで結構である」気持ちがいいな。そんな風に感じられる時間を持てるって幸せじゃないか。暑い日、涼をとろうと本の中の渓流に逃げ込んだ。本のなかではせせらぎの音は心地よく、風が涼しかった。
読了日:08月04日 著者:井伏 鱒二
どこまでも食いついて (創元推理文庫)どこまでも食いついて (創元推理文庫)感想
事件解決を決意する湿地三人組の目の前で町に現れた政府機関の二人組が事件を丸ごと浚っていってしまう。フォーチュンを追う武器商人の影もちらほら。さらに、この町の町長選挙の行方が気になる。二つの婦人会による勢力争いでもあるから。どんどんよい感じになっていくお似合いの二人がますます気になる。偽りの身分が心配。
読了日:08月01日 著者:ジャナ・デリオン

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