8月の読書

8月の読書メーター
読んだ本の数:18
読んだページ数:4711

教会で死んだ男(短編集) (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)教会で死んだ男(短編集) (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
八月も終わるがまだまだ暑い日が続いている。「ああ、ひげがぐにゃぐにゃになってしまった。この暑さのせいですよ!」とポアロも言っている。殺人事件、国家機密文書紛失(盗難?)、謎の失踪事件など、バラエティに富んだ内容の短編集。『呪われた相続人』最後のポアロの言葉で物語がころっと変わるところがおもしろい。
読了日:08月30日 著者:アガサ・クリスティー
そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森 ノースウッズ (文春文庫 お 80-1)そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森 ノースウッズ (文春文庫 お 80-1)感想
道中の数々のよき出会いが著者の夢を後押ししてくれる。道がないと途方にくれたときに力を貸してくれた人々の思い出がこちらをあたためてくれる。人々の温かさは、逆に言えば著者自身の誠実さによるものでもあったことだろう。ジム・ブランデンバーグを探す旅が、思いがけない出会いに繋がるさまに、わくわくする。
読了日:08月28日 著者:大竹 英洋
ノースウッズの森で (たくさんのふしぎ傑作集)ノースウッズの森で (たくさんのふしぎ傑作集)感想
音が満ちていると感じるのは、写真家が、カメラを通して音を聞こうとしているからではないか。森が生きて呼吸をする音を。森は賑やかだと思う。足元の苔の呼吸さえも、リズミカルに伝わってくる。人ならぬものたちにかこまれながら、私は数えきれないくらいの命の一点だと感じる。それが心地よい。
読了日:08月26日 著者:大竹 英洋
ぼくらのサブウェイ・ベイビーぼくらのサブウェイ・ベイビー感想
「ぼくらの家は、ちっちゃい。ぼくらの貯金箱は、からっぽ。でも、ぼくらの心は、いっぱいだ」なんて力強い言葉。奇跡は、ここから生まれたのだね。赤ちゃん、「きみ」の名前はケヴィン。これは、パパ・ピートが、ちいさかった「きみ」に、毎晩、語って聞かせた物語であるという。
読了日:08月24日 著者:ピーター・マキューリオ
人形の家 (岩波少年文庫)人形の家 (岩波少年文庫)感想
木でできた一文人形トチ―は強い。それは、トチ―自身も、家族の誰もが知っている。 だけど、軽いセルロイドでできている「ことりさん」のことはどうだろう。一番困難なときに、プランタガネットさんに「まるでことりさんは、またいちだんと軽くなったみたいだな」と言わせた、その軽さって、いったい、何だったのだろう。
読了日:08月23日 著者:ルーマー ゴッデン
額の中の街 (理論社の大長編シリーズ)額の中の街 (理論社の大長編シリーズ)感想
米軍基地の威圧的な影がこの物語の隠れた主人公のようにも感じる。あのときもこの時も、米軍基地の威圧感と、尚子自身の姿とが重なる。あなたがいるのは、あまりに暗い場所だった。そこはとても静かだった。あまりにひとりぼっちだった。ここで、何処にも発信しようもないSOSを封じ込める場所を育てていたのかもしれない。
読了日:08月21日 著者:岩瀬 成子
センス・オブ・何だあ? ― 感じて育つ ― (福音館の単行本)センス・オブ・何だあ? ― 感じて育つ ― (福音館の単行本)感想
目が見えない著者にとって、感じること、何だろうと思うことことは、生きていくための、文字通り命綱なのだ。研ぎ澄ましておかなければ、即座に事故につながるし、命を失う恐れもある。だけど、著者は何よりも楽しんでいる。自分の心の景色を豊かにしていく。まるで、大きな未完の風景画が少しずつ丁寧に描き重ねられていくように。
読了日:08月20日 著者:三宮 麻由子
ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
引退を決意したポアロが、最後に受けた、ヘラクレスにちなんだ12の依頼。ヘラクレスの難行が、各事件とどんな関わりをもっているのかを確認するのも楽しみだった。読み終えてみれば、本当にこれで引退?と首をかしげてしまう。寂しい……というより、なんだか始まりより、ポアロ、一段と若くなったような気がして。
読了日:08月16日 著者:アガサ・クリスティ
ギュレギュレ!ギュレギュレ!感想
ここにいる品物たちは、使い勝手のよい道具にしてはいけないのだ。見た目と能力とが驚くほど違う品々は、さらに思っている以上の存在なのだ。「ぼく」はそれがわかる人なのだろう。ちょっと力が抜けた野心なんかあまりないような持ち主と物との暮らしはちょっと素敵だ。持ち主も、品物たちも、ともにいてそこそこ幸せそうだ。
読了日:08月14日 著者:斉藤 洋
愛がなんだ (角川文庫)愛がなんだ (角川文庫)感想
利用する男と利用される女。これは愛か、愛なんかじゃないかもとか、そんなことはどうでもいいのだ。どちらも自分がしていることも、相手がしていることもわかっているし相手が分かっていることも知っている。あっけらかんとして、双方、図太いくらいの凄味があって……そのぶれない一途さは、ちょっと清々しい。
読了日:08月13日 著者:角田 光代
ラ・ボエーム (光文社古典新訳文庫)ラ・ボエーム (光文社古典新訳文庫)感想
しょうもない連中、しょうもない生活、と思うが、沁みるような輝きもある。短い夏を歌いつくそうとする夏のキリギリスの儚い生の輝きかな。ほんとうに後年大成した(してしまった!)四人のうちの一人は、こう言って振り返る。「……仕方ないさ。おれは堕落したね。もう上等なものしか愛せなくなっちまった」
読了日:08月11日 著者:アンリ ミュルジェール
グランマ・ゲイトウッドのロングトレイルグランマ・ゲイトウッドのロングトレイル感想
146日間で3300キロ!だけど、エマのアパラチアン・トレイル走破は達成ではなくスタートだったということが素敵だ。一度きりで彼女は気がすんだりはしなかったのだ。本の扉には著名人たちの引用句が三つ。一番最後のはエマ・ゲイトウッド自身の言葉。「歳をとるにつれて速くなる」 
読了日:08月09日 著者:ベン・モンゴメリ
ないしょの五日間 (カメレオンのレオン)ないしょの五日間 (カメレオンのレオン)感想
これまでの二作では、レオンが私たちの世界(桜若葉小学校)のお客だったのに、今回は読者の私もレオンの側にいる。桜若葉小学校にレオンと一緒にでかけるときは、お客さんみたいな、懐かしいところに里帰りしたような、変な感じ。お話三つ。それからおまけのヒキザエモンの冒険が楽しかった。「ゆるしてつかわす」いいな。
読了日:08月07日 著者:岡田 淳
小学校の秘密の通路 (カメレオンのレオン)小学校の秘密の通路 (カメレオンのレオン)感想
桜若葉小学校の子どもとたんていレオンが協力して、事なきを得た出来事が四つ。だけど、子どもたちは、話したって誰も信じてくれないだろうと(そもそも自分自身が一番信じられないのかも)、話さないでいるので、大抵の人は、この小学校に不思議なことが起るなんて思わないのだ。ごく普通の小学校です。
読了日:08月06日 著者:岡田 淳
カメレオンのレオン つぎつぎとへんなこと (岡田 淳の本)カメレオンのレオン つぎつぎとへんなこと (岡田 淳の本)感想
へんなことは解決した。へんなことが突拍子もないなら、解決の方法もおもしろい。ひとつだけ、ほかの事件とはちょっと毛色がちがうのがある。ヒキガエルのヒキザエモン。彼がいうサンダユウの悪だくみが起っていることだとしたら、彼は「へんなこと」の外の人(?)だろう。何者だったのかなあ。
読了日:08月05日 著者:岡田 淳
遠い声 遠い部屋 (新潮文庫)遠い声 遠い部屋 (新潮文庫)感想
大人になることの一面の、とってもシニカルな比喩なのだろうか。大人の望むように成長することを拒否して飛び出した子どもはそのまま飛び去ることはできないのだ。飛べない鳥になることを辛いと思うことを忘れる。彼をひきもどすのは、やはり、遠い声、遠い部屋、なのだろうか。小癪な小僧が、気持ち悪いくらい大人しくなったね。
読了日:08月04日 著者:カポーティ
ヒルは木から落ちてこない。 ぼくらのヤマビル研究記ヒルは木から落ちてこない。 ぼくらのヤマビル研究記感想
最初、太ったヒルの写真に怖気づいたが、読み終えるころには、「ヒル、めっちゃ、かわいいですよ」という子どもたちの気持ちが分かるような気がした。私は「ヒルがかわいい」とはまだ思えないけれど、「かわいい」という子どもたちが素敵だと思ったし、こんなにも夢中の子ども時代を持った彼らのことが羨ましくなってしまった。
読了日:08月03日 著者:樋口 大良,子どもヤマビル研究会
ようこそ森へようこそ森へ感想
絵本を読んでいると、ああ、こんなキャンプがしたいなあ、と思う。いやいや、キャンプじゃなくてもいいのだ。カケスやほかの動物たちと同じように、人間もまた森の生き物なんだ、と実感できる時間があったらいい。そこにわずかな時間でもいいから、一緒にいられたらいいのになあ、と思う。
読了日:08月02日 著者:村上 康成

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