5月の読書

5月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:4987

ベルリンは晴れているか (単行本)ベルリンは晴れているか (単行本)感想
現在進行形の物語の間に、アウグステの生い立ちの日々、幕間が挟みこまれる。幕間によって現在の物語が浮き出てくる感じ。一方で、わかっていたはずのことがわからなくなってくる。アウグステの道中は敗戦直後のベルリンの(不気味な)絵地図を描いていくようでもある。そしてこの物語、今さらだけどなんて凝ったミステリーだったんだ。
読了日:05月30日 著者:深緑 野分
おれの墓で踊れおれの墓で踊れ感想
手記を綴る少年の苛立ちが伝わってくる。書くことはなんて難しいのだろう。ソシアルワーカーに自分の行動の理由を説明すること目的の手記だったが、別の途方もなく大きなものでもある。最初に一点、最後にもう一点、新聞記事が載る。読者としても気になっていたことだが、それはどうでもいいくらいのものになっていた。
読了日:05月28日 著者:エイダン チェンバーズ
ロビンソン・クルーソー (光文社古典新訳文庫)ロビンソン・クルーソー (光文社古典新訳文庫)感想
孤独な島暮らしだったが、ロビンソンの日々は充実していた。やがてイギリスに帰り、資産が彼のもとに戻った時「今では心配すべきことが山のよう」という。幸福について、つくづくと考えてしまう。ところで……あの、すぺいんじんたちのことは、なぜ当初の予定どおりにならなかったのか、多いに気になっている。
読了日:05月26日 著者:ダニエル デフォー
オリーヴ・キタリッジ、ふたたびオリーヴ・キタリッジ、ふたたび感想
歳とともに、眠れぬ夜も増える。考えても仕方のないことを、そうと知りながらも考えずにはいられないことも増える。きっと誰もが思っているんじゃないだろうか、大なり小なり。どうしようもないことはどうしようもないままに、胸に抱えておくしかない。それを下手にごまかしたり、適当な希望に化かしたりしないのが、いい。
読了日:05月25日 著者:エリザベス ストラウト
児童文学の中の家児童文学の中の家感想
27のよく知られた児童文学(とは限らないが)の家の内外が、美しいイラストで紹介されている。家のまわりの動物の様子、人々の話し声、空気の匂いや時代背景までも感じられて、物語の舞台が浮かび上がる。主人公たちの思いや独り言(に寄せていた子どもの頃の私の気持ち)が蘇る。それら全部「児童文学の中の家」だったのだと気がつく。
読了日:05月23日 著者:深井せつ子
NかMか (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)NかMか (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
戦争真っ只中に出版されたこの本のなかに、人々の本音があちこちに織り込まれていることが頼もしい。ミステリとしてはたぶん易しい。それよりも、この物語の見所は、トミーとタペンスの掛け合いの楽しさと冒険のワクワク。まだ戦争の終結までには長い時間がかかるが、この暗い時代のさなかにあって、ほのぼのと明るい読後感がが嬉しい。
読了日:05月21日 著者:アガサ・クリスティー
草木鳥鳥文様 (福音館の単行本)草木鳥鳥文様 (福音館の単行本)感想
引き出しの縁が額縁や窓枠に見えて、鳥のいるもうひとつの外への開け払った入口みたいだ。「あとがき」に「鳥は、その場を「飛び立てる」という可能性を秘めたもの」という言葉がある。そうっと読まないと、次に開いた時、本のなかから、一斉に飛び去ってしまうかもしれない。布貼り、糸とじの、抱き締めたくなる美しい本。
読了日:05月18日 著者:梨木 香歩
ウォーリーと16人のギャング (こころのほんばこ)ウォーリーと16人のギャング (こころのほんばこ)感想
たった一人の小さな子どもが、16人もの屈強なギャングを思い通りにやっつける、なんとも愉快なお話だ。16人のギャングは、見るからに強くておそろしそうだけれど、ちょっと気のよいおじさんにもみえる。案外、子どもが大好きで、ウォーリーにしてやられることを思い切り楽しんでいたのかもしれない。というのはどうだろう。
読了日:05月16日 著者:リチャード ケネディ
天文屋渡世 (大人の本棚)天文屋渡世 (大人の本棚)感想
三つの章(天の章、地の章、人の章)の内、もっとも大きい章は天の章だったけれど、天空を語る言葉も、人との出会い(別れ)を語る言葉も、隔てがなくて似ているように思えた。親しんだ人や、その人たちの思い出が残る土地、出来事を語るように、あるいは会話を採録するように、天の話も語って聞かせてくれた。
読了日:05月15日 著者:石田 五郎
ぼくはおじいちゃんと戦争したぼくはおじいちゃんと戦争した感想
おばあちゃんが亡くなって元気がないおじいちゃんだったが、ピーターは自分の部屋をとられたことが気に入らず宣戦布告する。ほとんど罪のないイタズラの応酬のうちにおじいちゃんはすっかり元気になっていた。その一方で二人の間にあったあれらは本当はどういうことだったのか。思いがけない奥行きを持った物語に気がつく
読了日:05月12日 著者:ロバート・K・スミス
動物園ではたらく (イースト新書Q)動物園ではたらく (イースト新書Q)感想
動物園の役割は「教育」「研究」「レクリェーション」「自然保護」の四つ。その役割は「種の保存」「環境教育」という分野に発展している。この本には、そうした取り組みがたくさん書かれていて、興味が尽きない。それとともに心に残った言葉は、「動物園に第5の役割があるならば、人の心を癒し笑顔にすることではないかと思います」
読了日:05月10日 著者:小宮輝之
おしどり探偵 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)おしどり探偵 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
カーター長官から、期間限定で探偵事務所の所長をやってみないか、と持ちかけられたトミーとタペンス。16編の「探偵ごっこ」の記録。事件は日常の謎的なささいなものから殺人事件まで多種多様。マリオット警部の言葉ではないが「あなたたちのように生活を楽しんでいる人を見ると、うれしいんですよ」ほんんとにね。楽しかった。
読了日:05月08日 著者:アガサ・クリスティー
ゴールデン・バスケットホテルゴールデン・バスケットホテル感想
大人たちのおおらかな見守りのうち、伸びやかに遊びまわる二人の女の子のホテル泊まりの休日。 旅先ならではの、ちょっと浮つくこともオーケイの楽しさは、なんて輝いていることか。全力で楽しむ子どもたちの一分一分がとても素敵で、そのままホテルの屋根の上の金のバスケットの中にしまってとっておきたいようだ。
読了日:05月07日 著者:ルドウィッヒ ベーメルマンス
道行きや道行きや感想
思い通りにずんずん生きているように見えるけれど、その実、案外不器用に、たくさんのまわり道や戻り道をしている伊藤比呂美さんの『道行き』。おおらかに、繊細に。 どの回り道も(どうにもしんどそうに見えるけれど)後悔の「こ」の字も見当たらない。楽しそうなくらい。
読了日:05月05日 著者:伊藤 比呂美
ジャーニー・ボーイ (朝日文庫)ジャーニー・ボーイ (朝日文庫)感想
思い出すのが『日本奥地紀行』の、以下のこの件。初めて読んだときのなんと印象的だったことか。「世界中で日本ほど、婦人が危険にも不作法な目にもあわず、まったく安全に旅行できる国はないと私は信じている」とバードは書いている。……伊藤はこの部分、読んだかな?
読了日:05月03日 著者:高橋克彦
秘密機関 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)秘密機関 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
トミー&タペンス・シリーズの最初の一冊。そんなにあっと驚くミステリじゃないと思う。どちらかといえば、楽しい冒険重視のイメージじゃないだろうか。探偵役が二人、というのもおもしろい。凸凹な一人と一人は、組み合わせると素敵なコンビになる。ぽんぽんと弾む会話も楽しかった。
読了日:05月01日 著者:アガサ・クリスティー

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