7月の読書

7月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:5016

スモーキー山脈からの手紙スモーキー山脈からの手紙感想
それぞれの計画に夢中の親たちの間で、老人と子どもたちとが、何やらやっている感じだ。その何やらが、こんなにも大きな温かい塊になるなんてね。 最後にモーテルの看板に掲げられた「ただいま満室」って言葉が、いいな。ここを発つ人たちはみんなきっと「満室」を持って帰る。わたしもまた。また来るね。
読了日:07月31日 著者:バーバラ オコーナー
エッジウェア卿の死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)エッジウェア卿の死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
最後の最後まで、思い切り振り回された。気持ちよいくらいに、すっかり騙された。 それにしてもなんとも強烈な人物のオンパレードだろう。いっそ清々しい。ある程度の度を越えると、驚きも、なんとなくの好感に変わるみたい。あの人もこの人も。知り合えてよかったかな。
読了日:07月28日 著者:アガサ・クリスティー
誰もいないホテルで (新潮クレスト・ブックス)誰もいないホテルで (新潮クレスト・ブックス)感想
読後感は、ちょっと滑稽なのも、不快なのも、なんと残酷なと思うものもある。だけど、どの物語もあとになってふりかえってみれば満たされた気もちになっている。形のないものが形のないままに、スケッチされていくのを眺めていく過程に、それぞれへの、目に見えない承認のようなものを感じる。
読了日:07月27日 著者:ペーター シュタム
夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)感想
エピローグで二十年後の彼らに再会する。すっかり大人になった彼らの目で二十年前を振り返れば、悲壮な覚悟で挑んだ日々は、同時に幸せな日々でもあった。団地のベランダ、放課後の酒屋、ビニールシートの秘密基地、公園のブランコ……名残惜しいね。懐かしいね。二十年が過ぎて、本当に夏を見送れる、と感じている。
読了日:07月25日 著者:岡崎 琢磨
千個の青千個の青感想
幸せな瞬間は、時を超える、という。時だけじゃなかったけど。読みながら、不自由、自由、不自由、自由……という言葉がリフレインしながら心の内を駆け巡る。これは幸せの物語。自由になるための物語。物語を読み終えて、本を閉じるとき、わたしも、解き放たれたと感じる。風が吹く。空が青い。
読了日:07月23日 著者:チョン・ソンラン
13枚のピンぼけ写真13枚のピンぼけ写真感想
物語のあちこちに挟み込まれる13枚の写真の枠は、その下の説明文を読めば、絵が見えてくる。物語の続き、行間、または別の風景が、この写真には写っていて、本文とともに物語を語っている。それでもピンぼけ。ぼけた部分は、戦争にまきこまれた人たちの痛みや苦しみにゆがめられているようだ。
読了日:07月21日 著者:キアラ・カルミナーティ
月からきたトウヤーヤ (岩波少年文庫)月からきたトウヤーヤ (岩波少年文庫)感想
登場人物たちもそれぞれ魅力的だけれど、草鞋づくりの道具たちの活躍が楽しい。長年使いこんだ道具たちが、かけがえのない子どもになり、「いい子だね」「きりょうよしだね」と声をかけられて大切にされているのがよい。詩(歌)で呼びかけられるなぞなぞに、詩で答える掛け合いも、リズミカルで楽しかった。
読了日:07月19日 著者:蕭甘牛
白バラはどこに (詩人が贈る絵本)白バラはどこに (詩人が贈る絵本)感想
少女「白バラ」の真心は、物事を目に見えるように変えることはできない。自分の身を削ってまでの仕事であったのに、大きな流れを変える役には立たないのだ。それよりも彼女は目の前の暗がりに(誰もが見ようとしなかった暗がりに)ひとつひとつ灯りをともすことに懸命だったのだ。良心は暗闇のなかの灯りのようだ。
読了日:07月18日 著者:クリストフ ガラーツ
白バラ抵抗運動の記録―処刑される学生たち白バラ抵抗運動の記録―処刑される学生たち感想
『白バラは散らず』と『白バラ抵抗運動の記録』を続けて読み、メンバーの高潔な情熱に圧倒されつつ、ただ英雄譚にしてしまっては、それまでなのだと思った。できるだけ客観的にみて、その思想や行動にはどんな意義があったのか、どんな問題があったのか、知りたいと思った。考えたいと思った。そういう意味でこの本を読めてよかった。
読了日:07月17日 著者:C.ペトリ
☆改訳版☆ 白バラは散らず: ドイツの良心 ショル兄妹☆改訳版☆ 白バラは散らず: ドイツの良心 ショル兄妹感想
著者は、「白バラ」のショル兄妹の姉であり、運動の実態に迫るよりも、遺族として、無念に散った弟と妹の願いや理想や行動を見える形で残そうとした、という印象だ。弟妹の追悼の意味もあるのだろう。巻末の「白バラ」が作成したパンフレット、ビラは、アジテーションというよりも、評論であったし、ときには一篇の詩のようだった。
読了日:07月16日 著者:I.(インゲ) ショル
愛の重さ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)愛の重さ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
一途に相手に尽くす二人の女性の愛情は、ともに献身的だけど、一方は相手をまるごと外から包み込んでいるよう。もう一方は相手の真横に並んでいる。一方の愛情は相手にとって重すぎるが一方はそうではない。人をちゃんと信頼しているかどうか、ということだろうか。人の人生に敬意を持てるかどうか、ということでもあるかもしれない。
読了日:07月14日 著者:アガサ・クリスティ
ノマと愉快な仲間たち: 玄徳童話集ノマと愉快な仲間たち: 玄徳童話集感想
何と他愛のないことよ。だけど、その他愛の無さがまぶしいくらいに懐かしくて、子どもの頃の、なんてことのない思い出が鮮明に蘇ってきたりする。1938年から39年。そんなに昔の子どもたちのお話であることに、隣の国のお話であることにも、びっくりしてしまうほどの既視感。
読了日:07月12日 著者:玄徳
それでも、世界はよくなっているそれでも、世界はよくなっている感想
それで、世界はよくなっている?「状況は変化している。少しずつ、小さな前進が積みかさなっている」先人たちがここまで道を切り開いてきたのだ。ここで足踏みするわけにはいかない。「自分は小さすぎて何も変えられないと思う人は、夜寝ているときに蚊に刺されたことがない人だ」「希望は簡単に捨てられないもの」ですって。
読了日:07月11日 著者:ラシュミ・サーデシュパンデ
コカチン 草原の姫、海原をゆくコカチン 草原の姫、海原をゆく感想
「勇気をもとうと思います。ただし、運命に従う勇気ではありません。運命を切り開く勇気です」その言葉どおりの道行きになったわけだけれど、姫の言葉も行動も、ともに、これから長い旅を始める人たちへの、なんと清々しいはなむけだろう。気持ちよく本を閉じながら、コカチン姫のその後の消息を知りたいものだと思っている
読了日:07月09日 著者:佐和 みずえ
小道をぬけて小道をぬけて感想
アイルランドの四季折々の風景を背景にして描かれる作家の半生の物語。家族・親族の結びつきの強さが、印象的だった。成長していく子どもたちを助けた、いちばん大きなものは、すでにこの世の人ではない(天国にいる)母の見守りで、この母は、子どもたちと一緒にいられるわずかな時間に、一生分の宝を手渡した人だった、と思う。
読了日:07月08日 著者:ジョン マクガハン
あなたの知らない、世界の希少言語 世界6大陸、100言語を全力調査!あなたの知らない、世界の希少言語 世界6大陸、100言語を全力調査!感想
川の流れに運ばれ、あちこちに移動する泥や砂粒のように、人と一緒に言葉も混ざり合い、置き去りにされる。その言語がそこに生きのこっている事情を知ることは話者の先祖たちの来し方を知ることでもあり、地球を歩いてきた人たちの足跡をたどるための大切な手がかりでもある。
読了日:07月07日 著者:ゾラン・ニコリッチ
警視庁アウトサイダー (角川文庫)警視庁アウトサイダー (角川文庫)感想
署のエース刑事の推理力と元マル暴刑事の人脈や経験が、タッグを組んで事件を解決していく。という表と、秘密の目的のために相手の長所をしたたかに利用しようとする裏の顔とをもちながら、ともに、人がいいところが魅力的。二人を見張る存在も気になるところ。続き、読まないわけにはいかないのではなかろうか。
読了日:07月06日 著者:加藤 実秋
つむじ風食堂と僕 (ちくまプリマー新書)つむじ風食堂と僕 (ちくまプリマー新書)感想
「一度しかない人生を絶対楽しく生きたい」とリツ君は思っている。それは大切だし、奥が深いのだよね。路面電車に乗って食堂にでかけていくことは、ひと駅分、むかしに戻ること。そのむかしの中心につむじ風食堂がある。ここから、リツくんは将来へ向かう。楽しく生きるための仕事、きっとみつかるね。
読了日:07月04日 著者:吉田 篤弘
愛の探偵たち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)愛の探偵たち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
戯曲『ねずみとり』の小説版『三匹の盲目のネズミ』目的。戯曲で読んだときには、一場の舞台が、舞台の外にも世界があるのだということを想像させられ、広々と感じたものだったが、舞台に制約のない小説ではむしろ、雪に閉じ込められた密室状態を強く意識して一層閉塞感を感じた。足りない宿泊客はどうしているのだろう、と気になった。
読了日:07月03日 著者:アガサ・クリスティー
おとうさんのちずおとうさんのちず感想
お父さんは、この家に、そして「ぼく」に、本当は何を持ちかえったのだろう。家族がどんなにか欲しがっていたパンのかわりに。「ぼく」のおとうさんが持ち帰った地図は、豊かに広がり続け、90年も後のわたしたちの目の前にも、「ぼく」ユリ・シュルヴィッツの筆を通して、ひろがっている。
読了日:07月01日 著者:ユリ シュルヴィッツ

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