7月の読書

7月の読書メーター
読んだ本の数:18
読んだページ数:4359

シカゴ育ち (白水Uブックス 143 海外小説の誘惑)シカゴ育ち (白水Uブックス 143 海外小説の誘惑)感想
訳者あとがきによれば、ニューヨークの愛称がビッグアップルであるように、シカゴといえばウィンディシティ、風の街なのだそうだ。風。この短編集を読むことは、自分がひと吹きの風になり町を渡りながらあたこちの風景に触っていくような感じだ。『冬のショパン』『荒廃地域』『夜鷹』が特に好き。
読了日:07月30日 著者:スチュアート・ダイベック
【旧版】深夜特急1 ー 香港・マカオ (新潮文庫)【旧版】深夜特急1 ー 香港・マカオ (新潮文庫)感想
好奇心と人懐こさを携えて気の向くままに自分の足で歩き回った香港の街には、ガイドブック片手の名所巡りとは別の出会いがある。一期一会の人たちが印象的。失業者の青年とともに「そば」をすすった事。路上で漢詩を書く「乞食」。子どもの顔に戻った物売りの少女たちの住所。マカオの俄かギャンブラーの内なる声は天使か悪魔か。
読了日:07月29日 著者:沢木 耕太郎
結局,ウナギは食べていいのか問題 (岩波科学ライブラリー)結局,ウナギは食べていいのか問題 (岩波科学ライブラリー)感想
ウナギの絶滅は人にとってどうなのかという問題ではない。絶滅危惧種に関わる問題って難しい。純粋に、絶滅が大問題なのに、別の立場(というより次元?)の団体や業界の思惑などが絡むとますますややこしくなってしまう。表紙には「そのモヤモヤにお答えします」が、小さなモヤモヤの解決はもっと大きなモヤモヤの入口かもしれない。
読了日:07月28日 著者:海部 健三
星条旗の聞こえない部屋 (講談社文芸文庫)星条旗の聞こえない部屋 (講談社文芸文庫)感想
ベンの父は日本語を軽蔑していた。その日本語にベンがのめり込んでいくことは、父との決別も意味したのだろう。先に読んだ温又柔さんの『「国語」から旅立って』の言葉「日本語はわたしたちのものである」という言葉が蘇る。「わたしたちのもの」の意味はとても深くて大きいのだと思う。
読了日:07月26日 著者:リービ 英雄
「国語」から旅立って (よりみちパン! セ)「国語」から旅立って (よりみちパン! セ)感想
「日本語はわたしたちのものである」という言葉。わたしたちとは(日本人も含めて)日本語とともに生活する地球の上のたくさんの人びとのことだ。胸をはって大きな声で、私もその「わたしたち」のうちの一人と言えるようになれば、いいや、そんなこと言うまでもないでしょ、と思えるようになれば、誰もの居心地の悪さは消えるはずだ。
読了日:07月24日 著者:温又柔
草原のサラ草原のサラ感想
サラがやってきて二年目の夏、草原は大干ばつに見舞われる。『のっぽのサラ』の続編。枯れた大地だろうが、緑と青い海に囲まれた大地だろうが、その地を愛する人だけが知っている豊かさがある。目に見えても見えなくても、その人は、自分の大地に名前を書く。それは、たった一つである必要はない。
読了日:07月22日 著者:パトリシア マクラクラン
のっぽのサラのっぽのサラ感想
絵本『人生の最初の思い出』からこの本を思い出して再読。『人生の……』の「わたし」は両親とともに大草原から海辺の町へ引っ越していく。その逆コースのサラの思いに、『人生の……』の「わたし」の思いが重なる。そうか。この物語は、海からやってきたサラが、大草原に、どうやって海を持ってきたか、という話でもあったのだ。
読了日:07月21日 著者:パトリシア・マクラクラン
茶色の服の男 (クリスティー文庫)茶色の服の男 (クリスティー文庫)感想
大海原を渡る客船の旅、アフリカを横断する列車の旅、移り行く風物を楽しむ。同行する人びとがそれぞれに個性的でおもしろい。(だけど、そのうち一人は間違いなく怖い奴)町を走り抜けて、隠れ家にひそみ、見えない敵を欺き、欺かれる。怪しいのやそうでないのが次々に行動をおこし、ロマンスなども芽生えて華やか。明るい冒険譚。
読了日:07月19日 著者:アガサ・クリスティー,Agatha Christie
おうまさんしてー!おうまさんしてー!感想
膝の上で子はうふふと笑う。笑いながら、からだがパッカパッカと横揺れしている。 本をもってきて大人の肩にむかって足を上げていることもある。読んでほしいのかなー、それとも、おうまさんしてほしいのかなー、どっちかな。どっちでもいいや。 読むことと遊ぶことの境界、ないんだね。からだ全体で絵本を楽しんでいる。
読了日:07月18日 著者:三浦 太郎
人生の最初の思い出 (詩人が贈る絵本 II)人生の最初の思い出 (詩人が贈る絵本 II)感想
「わたし」が置いていきたくなかったもの、こと。「わたし」が持っていこうと思ったもの、こと。中身は違うけれど、思いは一緒。「わたし」の言葉を読みながら、私は、私の思い出をさがしている。一つ一つ取り出して、皺をのばして、ほら、ちゃんとここにある、と確認している。
読了日:07月16日 著者:パトリシア マクラクラン
北は山、南は湖、西は道、東は川北は山、南は湖、西は道、東は川感想
人なり動物なりが探していたこの場所に辿り着いたことは、この場所の側にこそ意味があるのかもしれない。そのために長い長い年月、準備をしてきたこの寺の奥庭が、彼らを一瞬迎え入れることができた、ということに。ハンガリーの作家は、わたしを京都に連れていってくれただけではなく、もっと深い奥庭まで連れて行ってくれた。
読了日:07月14日 著者:クラスナホルカイ ラースロー
火の鳥ときつねのリシカ――チェコの昔話 (岩波少年文庫)火の鳥ときつねのリシカ――チェコの昔話 (岩波少年文庫)感想
最後のお話が『おわりのないお話』で、「……きょうはここまで。また今度、お話のつづきをしましょうね」名残を惜しみつつも、ここでおしまいではないこと、このつづきがあることに納得して、楽しみを近い未来に持ち越しながら本を閉じられるうれしさ。 いつかどこかで、お話のつづきがまた始まる、きっと。
読了日:07月13日 著者:出久根 育
四日間の不思議 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)四日間の不思議 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)感想
ミステリもよいが、それよりも主人公たちと一緒にちょっとゆっくりめの休日を楽しむつもりで読んだ。ミルンのもう一つのミステリ『赤い館の秘密』に、さらに輪をかけて(殺人事件を扱っているにもかかわらず)牧歌的で呑気だった。もちろん、あと味も……辟易するくらい、良し!なのだった。
読了日:07月10日 著者:A.A.ミルン
複眼人複眼人感想
不思議な複眼人の存在は死者に寄り添う。その対極のような存在が、ゴミの島に乗ってやってきた少年アトレで、生者に寄り添う存在と思う。「天気はどうだい」「よく晴れているよ」が神話の始まりのような気がする。それぞれが自分自身の歌を歌い、物語を語るのを聴いている。物語が寄り集まって新しい神話になっていくようだ。
読了日:07月09日 著者:呉 明益
王の祭り王の祭り感想
日本の軽業師の娘とイギリスの革手袋職人の息子が、混乱のなかで、自分の道を開こうとすること心に残る。あっと驚くのは最後のページ。そういうことだったのか!成長した彼らがどこかで再会できたらいいのに。勿論そんなことはあり得ない……だろうか?ファンタジーの力を借りて。妖精パックの力を借りて。あり得る話、と思う。
読了日:07月08日 著者:小川 英子
清兵衛と瓢箪・小僧の神様 (集英社文庫)清兵衛と瓢箪・小僧の神様 (集英社文庫)感想
もっとも好きなのが『城の崎にて』と『焚火』。静かな日々は死を隠している。はっとするけれど、同時に腹の据わった覚悟のようなものも感じて、いっそう今の山里での充実した時間が愛おしく思えてくる。ことに『焚火』がいいな。わたしも、梟の声を聴いたら、きっと(物語を思い出して)「五郎助、奉公」と聞きなすだろう、と思う。
読了日:07月06日 著者:志賀 直哉
ハツカネズミと人間 (新潮文庫)ハツカネズミと人間 (新潮文庫)感想
浮き彫りになるのは、渡り労働者たちの、明日のない厳しい生活だろうか。そして時々は起こってしまう、どうしようもない事件。何度も語られるふたりの夢はひときわ美しく輝く。ジョージが語る話を、わたしもレニーと一緒に何度でも聞きたい。サリーズ川のほとりの木の下で。
読了日:07月04日 著者:ジョン スタインベック
謎のクィン氏 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)謎のクィン氏 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
ちょっと変わったミステリだった。変わった幽霊譚であり、たまには、気の利いたおとぎ話のようで。一作一作を読み終えた時には、謎が解けた驚きよりも、そこに関わっていた人のその後が気になって(本当の気持ちに気がついたから)このまま読み終えたくないように思えてくる。
読了日:07月01日 著者:アガサ・クリスティー

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