『すてきなひとりぼっち』 なかがわちひろ

 

 

一平くんが教室で絵を描いているところを、クラスメートたちが感心してみている。
だけど、休み時間は短いし、子どもたちはやることいっぱいだから、あっというまにだれもいなくなってしまった。
一平くんはひとりぼっち。こういうひとりぼっちにはなれている、という。
一人で帰る雨の道で転んでけがして、傘もこわしてしまったけれど、こういうひとりぼっちにもなれているのだ。
それから……
……
「ぼくは このよに ひとりぼっち」


町を歩く一平くんのまわりはにぎやかだ。
たくさんの声に囲まれているけれど、一平くんはひとりぼっちだ。
声もひとりぼっちなのかもしれない。町の中をワイワイと漂う。
だけど、ひとりぼっちの声が別のひとりぼっちに向かうとき、その声は意味ある言葉に変わっていく。


みつけたものがあった。
ひとりぼっちだから見えるものがある。聞こえるものがある。出会えるものがある。
ひとりぼっちじゃなかったら出会えなかったかもしれないものはいろいろある。
こんなふうにも言えるかな。ひとりぼっちっていうのは別の何かを迎え入れる入れ物。


さて。
うーんと伸びをして、きもちいいひとりぼっちを胸に吸い込もう。