2月の読書

2月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:4271

大西洋の海草のように (Modern&Classic)大西洋の海草のように (Modern&Classic)感想
セネガルの離島とフランス、どちらにも漂着できず漂っていくサリの境遇のなんと不安なこと。といいつつ、この物語は、なんだかからりと明るい。それは、サリが自分の境遇やふるさとのありようを徒に嘆いていないこと(時にはユーモアに変えてしまう)、それから遠く離れた祖母や弟に寄せる温かく柔らかい思いに満ちているからだ。
読了日:02月28日 著者:ファトゥ・ディオム
流れのほとり (福音館文庫 ノンフィクション)流れのほとり (福音館文庫 ノンフィクション)感想
森や草原に囲まれた北限の集落。のびやかに遊ぶ子どものしなやかさに驚いてしまうが、実は容赦のない厳しい自然に抗う日々だった。死の不安。家族に感じる近しさと遠さ。大人の不公平さが子どもの領分に浸食してくる苦さ。男の子に許されて女の子に許されないこと。「あたし、おとなしくなりたくない」という言葉が印象的だった。
読了日:02月26日 著者:神沢 利子
庭は私の秘密基地庭は私の秘密基地感想
「今、庭は自分で生き始めてる、と感じます」ああ、そうか。庭が生き生きとするように手を貸してやることが庭仕事なのだね。結果、人も気持ちよく過ごせる。「私と庭は共存して、ゆっくりと生きていきます」という言葉は、なんて気持ちがいいのだろう。 人も庭も気の合う相棒を得て幸せそうだ。
読了日:02月24日 著者:銀色 夏生
ゼロ時間へ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ゼロ時間へ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
伏線を読み逃すまいと思いながら読んでいたはずだけれど、終わってみれば(あれはもうあそこで終わったと思っていた)まさかのあのことがここに蒸し返され繋がっているとは、と驚かされる。これでおしまいかなと思っていると最後の最後まで。誰が犯人で誰が探偵だったのか。最後の一行が、新たなゼロ時間に向かう始まり、かな。
読了日:02月21日 著者:アガサ・クリスティー
幸いなるハリー幸いなるハリー感想
知っているけれど、決して語らない秘密がある。語らない理由も、伴う感情も、本当にさまざまだ。それでもあえて語らないことで、なんとかバランスを保っていられるものも、さまざまある。なんてあやふやな足場だろう、と思ったり、逆に、だから安心して足をのせていようか、と思ったり。こういう短編を少しずつ読んでいるのは幸せ。
読了日:02月20日 著者:イーディス・パールマン
でんしゃ くるかな? (0.1.2.えほん)でんしゃ くるかな? (0.1.2.えほん)感想
私も、孫といっしょに駅に電車を見にいく。電車がくる。手をたたいて、手を振って、ばいばーい。ほんとに何がそんなにうれしいんだろうね。「(のぼりもくだりも)いっちゃったよ、帰ろうか」子どもは静かに首をふる。動かない。次の電車が来るのは、だいたい四十分後だって……
読了日:02月19日 著者:きくちちき
星を継ぐもの (創元SF文庫) (創元推理文庫 663ー1)星を継ぐもの (創元SF文庫) (創元推理文庫 663ー1)感想
始まりは月面の死体。そうして、わたしが彼らと共に夢中で歩んできたのは、生命の果てしない迷路だと気づく。大道、横路、行き止まり。途切れかけて、また繋がり……。これは、なんという壮大な物語だろう……。生きてここにいる、ということの不思議さ、かけがえのなさとせつなさとをしみじみと味わう。
読了日:02月18日 著者:ジェイムズ P.ホーガン
センス・オブ・ワンダーを探して ~生命のささやきに耳を澄ます~センス・オブ・ワンダーを探して ~生命のささやきに耳を澄ます~感想
たぶん、生物学だけではなく、私自身や、私のみのまわりのいろいろなものに言えることなのだと思う。二人が語ってくれるのは、モノの見方だ。これはこういうものだから、という常識(?)から解き放たれてみれば、目の前に現れるのは、今まで気がつかなかった思いがけない、モノの姿。
読了日:02月16日 著者:福岡 伸一,阿川 佐和子
博物館の少女 怪異研究事始め博物館の少女 怪異研究事始め感想
時代は明治の中頃。舞台は上野の界隈だ。長い眠りから目覚めた町は明るい活気に満ちている。一方で、長く守ってきたものをあっというまに崩され奪われたた人たちのひそやかな悼みや諦めも感じる。村岡イカルは、西から飛んできて博物館に迷い込んだ鳥だ。鳥の活躍、鳥の成長、楽しみに見守っていきたい。
読了日:02月14日 著者:富安陽子
裸の春―1938年のヴォルガ紀行 (群像社ライブラリー)裸の春―1938年のヴォルガ紀行 (群像社ライブラリー)感想
時にはユーモラス、時にはただ美しいが、何よりダイナミックで野生的な力を感じる。 ここに登場する人びとが森の厳しい自然の戒律を守って生きる猟師たちである事を思えば。春の大洪水季節、狩る側と狩られる側の法が、ときにはあとまわしになるが、こういう地で暮らす生き物たち(人も含めて)のおおらかな知恵なのだろう。
読了日:02月13日 著者:ミハイル プリーシヴィン
泡感想
なにかが大きく動くわけではない。物語の最初と最後と何がどう違うのか、はっきりと説明できるわけでもない。だけど、読み終えたときに胸の内には丸く膨らんでくるものがある。泡みたいに。生まれて消えて、消えて生まれて……束の間を生きる泡たち、そう棄てたものではない、と思えるのだ。
読了日:02月12日 著者:松家 仁之
殺人は容易だ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)殺人は容易だ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
何人、不慮の死をとげようが、誰も殺人なんて思いもかけない村である。亡くなった人たちは、互いにどこにも接点がなさそうだし、共通の敵がいるようにも見えない。 だけど、やはりなんだかおかしい。このおかしいが、村や館に漂う、神秘的でありながら即物的でもある、奇妙な雰囲気に溶け合っている。陰鬱なテーマパークみたい。
読了日:02月10日 著者:アガサ・クリスティー
みさきっちょみさきっちょ感想
「ひとりひとりのこころがにぎわってる。黄金色のマグロが、胸の内で、ぴちぴち跳ねている」そのひとりひとりのなかに、もちろん著者いしいしんじさんもいる。ふんだんな長谷川義史さんのスケッチがとてもよい。そうそう、こういうところだと思っていたよ、と言いたくなる、本文にぴったりの三崎だった。
読了日:02月08日 著者:いしいしんじ
わたしのバイソンわたしのバイソン感想
嘗てバイソンと過ごした美しい日々を思い出す。胸にひたひたと満ちてくる言葉は、懐かしい日々を取り戻させるようだ。だけど、この二人の満ち足りた日々に、少し不穏なイメージをもってしまう。夏の間の「ほかのバイソン」と一緒のバイソンを思うから。戻らない理由も知らずに受け入れるしかないことも。
読了日:02月06日 著者:ガヤ・ヴィズニウスキ
北西の祭典 (セルバンテス賞コレクション)北西の祭典 (セルバンテス賞コレクション)感想
読後心に残るのは、フアンのひどい渇きだ。彼は飲みたい水を得られない。彼は水の飲み方を覚える機会さえなかったのだ、と思うとあまりに哀れだった。それを飲んだらますます渇くと知っていても飲まずにいられないものが、水のかわりに目のまえにある。友を騙って。それでも「親友」と呼ばずにいられない、彼の孤独の寒さ暗さ、深さ。
読了日:02月05日 著者:アナ・マリア マトゥテ
みしのたくかにとみしのたくかにと感想
文字を読めたり、25と38のかけ合わせ方を知るようになる前には、私もかしこかったかな。覚えていない。なんと嘆かわしいことに。できることなら、子どもをやり直したい。というのは余計な話。リンゴの花さく、小川のそばの草の上。たくさんのピクニックのごちそう。大勢の子どもたち。なんと健やかで幸せな一日。とうれしくなる。
読了日:02月03日 著者:松岡 享子
なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
崖の人の最後の言葉、エヴァンズとは何者なのか。崖の人は本当に殺されたのか。ぐるぐると駆け回った末に、良く知っていると思っていたそこに帰ってくるのか、という驚きと、全く思ってもみなかった扉が開く驚きとに、翻弄された。若い二人と一緒に本のなかを駆け回る楽しい読書だった。
読了日:02月01日 著者:アガサ クリスティー

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