4月の読書

4月の読書メーター
読んだ本の数:18
読んだページ数:4260

くらやみきんしの国くらやみきんしの国感想
この絵本のなかで起こっていることは、めずらしいことでもなくて、私たちの間でもよく起きていることではないか。「けれども こくみんは だいじんたちが おもうほど おろかでは ありませんでした。」そうして、どうなったかというと……小噺のオチみたいなしゃれた話でもあり、楽しい気づきでもあり、思わずにっこりしてしまう。
読了日:04月29日 著者:エミリー ハワース=ブース
ノーホエア・マンノーホエア・マン感想
彼は、紛争のため故郷ユーゴに帰れなくなった。「その後、その地で永遠に不幸に暮らすことになる」最初の方で出てきた予言のような言葉だけど、誰が見ても「ノーホエア・マン」=「ひとりぼっちのあいつ」だった時、なんとかやっていたじゃないか。「不幸」は、どこで染み込んできたのだろう。やりきれない思いがこみあげてくる。
読了日:04月28日 著者:アレクサンダル ヘモン
岩波文庫的 月の満ち欠け岩波文庫的 月の満ち欠け感想
ひたむきな愛情は、ただ一つの方向に向かって突き進む。だけど、その一途さに、私は戸惑う。わが子はほんとうにいたのだろうか。いたならどこにいってしまったのだろうか。共に過ごしたあの日々は何だったのか。考えれば考えるほど、残るのは虚しさで、その虚しさを「うけいれる」勇気が自分にあるかどうか、ということだろうか。
読了日:04月26日 著者:佐藤 正午
つるかめ つるかめつるかめ つるかめ感想
おまじないが効いたのか、抱きしめられたのが効いたのか、撫ぜてもらったのが効いたのか……「おまじない」にまつわる安心の気配が泣いている子を元気にしてくれるのだろう。だから、私がしっている子どもたちに一生懸命おまじないをかけてあげる。大丈夫、大丈夫、と。大きくなっても効いていますように。ちょっとだけでいいから。
読了日:04月24日 著者:中脇 初枝
死が最後にやってくる (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)死が最後にやってくる (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
物語の思いがけない時代と舞台に驚いたけれど、読んでみれば、人々の思いや行動に、現代も過去もないのだった。起こる事件も。愛と憎しみ。相反するものなのだろうか、双子のようによく似たものなのだろうか。ほとんどパニックになりそうな事態のなかで、育つ明るいものもある、見えてくる真心もある。
読了日:04月23日 著者:アガサ・クリスティー
迷子の魂迷子の魂感想
私もどこかにコテージをもつことができたらいいな。実際に手にいれられなくても空中楼閣(空中小屋)みたいなのを、私だけが知っている場所に。そこで、小さな植物が、芽をだして、すこしずつ育っていくのを、日々眺めつづける。いつか、ドアを叩く音が聞こえるのを待つ。
読了日:04月22日 著者:オルガ トカルチュク
赤いモレスキンの女 (新潮クレスト・ブックス)赤いモレスキンの女 (新潮クレスト・ブックス)感想
拾ったバッグの持ち主が何ものかも知らないままに、ローランは持ち主に恋をした。顔も身分も、年齢も、名前さえもはっきりしない、その女性のことをバッグは、語っていたから。語られる言葉がローランには理解できたから。ほっとため息ついて、ああ、もっと読みたいなあ、と思わせてくれる、上等のおとぎ話だ。
読了日:04月20日 著者:アントワーヌ ローラン
電柱鳥類学: スズメはどこに止まってる? (岩波科学ライブラリー)電柱鳥類学: スズメはどこに止まってる? (岩波科学ライブラリー)感想
町中に電線が張り巡らされるようになって、まだ150年くらい。鳥たちと電柱(電線)とのつきあいもせいぜい150年くらい。これらの電線は地中化によって消えていく。そうだとしたら、電線にとまる鳥は地球の長い歴史の中でほんの一瞬の間にしか見られないものだという。地上から電柱(電線)が本当になくなってしまったら寂しくなるな。
読了日:04月18日 著者:三上 修
人形つかいマリオのお話 (児童書)人形つかいマリオのお話 (児童書)感想
アストリッド・リンドグレーンと並んで、世界でいちばんおもしろい話を作るのは、だれでしょう」お客さんたちは笑って拍手する。「マリオ!」と。わたしも拍手する。「いちばんおもしろい話」には、作者から実在するたくさんの子どもたちへの思い、祈りと希望とがこめられていると思うのだ。
読了日:04月16日 著者:ラフィク・シャミ
ポアロ登場 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ポアロ登場 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
ぴりっとひきしまった短編はもちろん、さらに膨らました長編で読んでみたいと思うような、込み入った話もあり、飽きることはない。冒険活劇的な物語が多く、ポアロは、忙しく飛び回っている印象だ。ここしばらく安楽椅子探偵ふうのミス・マープルシリーズを読んでいたので、物語の活気が新鮮だった。
読了日:04月15日 著者:アガサ・クリスティー
冬かぞえ冬かぞえ感想
九つの短編には、物語らしい物語があるわけではない。差しだされたのは荒野だ。寒々とした荒野の支配者は動物たち。それをそっくりそのまま受け入れているのがインディアンで数々の伝説が生まれている。荒野に住み荒野の一部になってしまう人は独特の魅力をまとっていて、ある人たちを惹きつけずにはおかないのだろう。
読了日:04月13日 著者:バリー・ロペス
Soul LanternsSoul Lanterns感想
『光のうつしえ』の英語版。海を越えた遠い国で、日本語ではない言葉で、この物語を読んでいる人がいる。ただ物語の中の一人一人のの物語に、共感したいと望み、寄り添いたいと望みながら、この本を読んでいる。使っている言葉も暮らし方も違う人と、一冊の本から受ける感動を分かち合っている気持ちだ。
読了日:04月09日 著者:Shaw Kuzki
光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島感想
(再)中学生たちは、文化祭の展示のため、身近な大人たちの体験を聞いていく。集まった「小さな物語」を伝える、ただそれだけではない。この物語が辛い体験に満ちていながら、こんなにも静かで美しいのは、物語がまるごと悼みだからだ。この物語に出会ってからもう七年。その間に私はどんな「小さな物語」を暮らしてきただろう。
読了日:04月09日 著者:朽木 祥
二重のまち/交代地のうた二重のまち/交代地のうた感想
このまちで生まれ育ち生活していた人たちの思い(生きているひと、亡くなったひと)の結晶のようだ。「復興」という言葉が、物語をしっかり抱き込んでいてくれたら。わかったようなことは何も言えないけれど、せめて聞かせてもらいたい。下のまちが抱いているたくさんの物語を。生まれ始めている上のまちの物語を。二重のまちの物語を。
読了日:04月07日 著者:瀬尾夏美
詩人になりたいわたしX詩人になりたいわたしX感想
シオマラの詩はのびやかで、ときどき火のようだ。私はマミが気になって仕方がない。 ここまで強烈ではないにしても私の中にも小さなマミがいると思うから。大きくなった子が親に思いがけない形で「抱きしめてくれると信じて」何かを始めることに驚く。抱きしめる側と抱きしめられる側がいつのまにか反転していることの気づきでもある。
読了日:04月06日 著者:エリザベス・アセヴェド
そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
この暗く押しつぶされるような雰囲気。だれも信用できない孤独感のなかで、それぞれがそれぞれらしいやり方で自分自身の過去と向かいあう。小出しの心模様が、現実に進行している殺人事件と混ざり合って雰囲気を盛り上げる。むごい物語を読んだはずなのに、あと味がすっきりしているのもクリスティーらしい。
読了日:04月04日 著者:アガサ・クリスティー
丸い地球のどこかの曲がり角で丸い地球のどこかの曲がり角で感想
荒々しい生命に満ちて、躍動しているフロリダ。ここで暮らす人々はグロテスクな舞台に喰われて萎びた抜け殻になっていく。だけど、脱け殻には時々、荒々しいパワーを感じ、これはなんだろうと思う。その源にあるものの一つは、彼らが語り聞く物語。愉快とは思えない場面で、思いがけず現れる瞬間の描写は物語を湛えて輝くようなのだ。
読了日:04月03日 著者:ローレン・グロフ
イザベラ・バードの旅 『日本奥地紀行』を読む (講談社学術文庫)イザベラ・バードの旅 『日本奥地紀行』を読む (講談社学術文庫)感想
民俗学者宮本常一氏による、『日本奥地紀行』を七回に分けて読みこんでいく講読会の記録。19世紀末、一人のイギリス人旅行家が当時の日本と日本人をどう見ていたかを読みながら自分が生まれ育った国を新鮮な気持ちで見直す。よく知っているつもりだったことが、そうじゃなかったり、いろいろな物の見方があることを教えてもらった。
読了日:04月01日 著者:宮本 常一

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