『くらやみきんしの国』 エミリー・ハワース=ブース

 

くらやみきんしの国

くらやみきんしの国

 

 

くらやみがこわい王子様は、大きくなって王様になったとき、この国を、くらやみきんしにしました。
おかげで、夜になっても明るい国になりましたが、やがて、みんな、明るさに疲れてきます……


青年の王さまは、こどもみたいにかわいらしくて、こわいものをなくしたいと願うことも、ちょっとかわいい。願うだけなら。
だけど。
王様が、この国を、くらやみきんしの国にしよう、と言ったとき、だいじんたちは、渋い顔をする。
「そのように きんしと いいわたしては、こくみんが すんなり うけいれません」
「王さまに はむかってくるでしょう」
では、どうすればよいか、ということも、だいじんたちはよく知っていたのだ。
「じぶんたちで きめたと おもいこませれば……」
「うまくいきますよ」


かわいい顔した王様の絵本は、ただ、かわいい絵本ではなかった。でも、とってもわかりやすい絵本だった。この絵本のなかで起こっていることは、めずらしいことでもなくて、私たちの間でもよく起きていることではないか。
私が心から願っている事、求めていることは、ほんとうに私の中から出た事なのか、ほんとうにそれでいいのか、もう一度、頭を冷やして、考えてみよう。
それから、あぶないもの、こわいものなら、本当にいらないものなのか。一気になくなってしまっていいものなのだろうか。それも、よくよく考えてみた方がよさそう。


さて、この絵本のなかでは、
「けれども こくみんは だいじんたちが おもうほど おろかでは ありませんでした。」
そうして、どうなったかというと……
小噺のオチみたいなしゃれた話でもあり、楽しい気づきでもあり、思わずにっこりしてしまう。