『秘密機関』 アガサ・クリスティー

 

 

第一次世界大戦が終わって久しぶりに再会した、幼なじみのトミーとタペンス。戦時中は国に精一杯貢献したというのに、終戦とともに、職なし金なし。
そこで、彼らは、若さと冒険心を武器に、探偵業を始めることにした。
「若い冒険家二名の雇い主を求む。なんでもやります。どこにでも行きます。高報酬の仕事にかぎる。違法な申し出も可」
と、新聞広告を出そうとした矢先、タペンスに、なんとも怪しい仕事が舞い込み、びっくりするほどの高報酬が約束された。
ところが、名前を尋ねられたタペンス、たまたま先ほど聞きかじったばかりの名前を口にしたとたん、雇い主(になるはずの人)の顔色が変わる。そして、翌日には跡形もなく姿を消してしまうのである。
実は二人、この時すでに国を揺るがす陰謀に巻き込まれていたのだ。


トミー&タペンス・シリーズの最初の一冊だ。
そんなに凝ったミステリじゃないと思う。それより、どちらかといえば、(楽しい)冒険物語のイメージだ。
探偵役が二人、というのもおもしろい。
トミーは、目だって頭が切れるほうではないが、物事をじっくり考えていくタチで、彼を騙すのは簡単ではない。
タペンスは、直観力にまさっているが、常識的な判断は苦手なほうだという。
凸凹な一人と一人は、組み合わせると素敵なコンビになる。


若い冒険家であるから、とにかく活発に動き回る。そこに鼻を突っ込んだら危ないだろう、というところにそろそろと入っていくので、ハラハラさせてくれる。
彼らは、やがて、自分たちが相手にしている敵が何ものかを知ることになるのだが、その本当の姿は誰も知らない。
登場人物はさほど多くない。容疑者(?)は絞られているが、決めてがなくて、ああ、その人をそんなに信じちゃっていいのかな。


これはシリーズ一作目で、次のタイトルは「おしどり探偵」となっているから……
タペンスにトミーが、結婚は何にたとえられるか、話し始める最後の場面はプロポーズだよね?
タペンスは答えて言う。「結婚はスポーツよ」
今後の二人の活躍が楽しみだ。