3月の読書

3月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:4565

かげろうのむこうで: 翔の四季 夏かげろうのむこうで: 翔の四季 夏感想
見えないけれど、ある、とわかっているせいで(でもやっぱり見えないせいで)歯がゆい思いをすることもあるけど、より深く納得できることもあるんだと思う。より深く心に落ちていくこともあるんだと思う。物語の中で出会った人々や、出来事が、もう懐かしくなっている。みんな、最後にかげろうみたいに揺れて、空気に混じりあう感じ。
読了日:03月31日 著者:斉藤 洋
ミシシッピの生活 〈下〉マーク・トウェインコレクション (2 B)ミシシッピの生活 〈下〉マーク・トウェインコレクション (2 B)感想
(上巻より)川や沿岸の町などの地理や歴史、こぼれ話や土地土地の伝説など。他の作品の一部として発表するつもりだった自作の短編物語などを気前よく披露してくれる。どの章もおもしろくて、時々、かなりきつい皮肉がついてくる。マーク・トウェインミシシッピ川は、さまざま表情を持つな巨大で親し気な生き物のよう。
読了日:03月29日 著者:マーク・トウェイン,Mark Twain,吉田 映子
ミシシッピの生活 〈上〉マーク・トウェインコレクション (2 A)ミシシッピの生活 〈上〉マーク・トウェインコレクション (2 A)感想
ミシシッピ流域の町に住む子どもだちには、川を上り下りする船の乗組員になることは憧れだった。水先案内人見習いをしていた頃の話が楽しい。小生意気な若者を一人前に育て上げようとする師匠ビクスビーさんさんへの敬意と思慕が伝わってくる。徐々に仕事を覚えて一人前に近づくに従い、川の神秘が失われていく寂しさなども。(下巻へ)
読了日:03月28日 著者:マーク・トウェイン,Mark Twain,吉田 映子
てと てと てと て (福音館の単行本)てと てと てと て (福音館の単行本)感想
この絵本のなかには全部ちがうことをしている、沢山の手が描かれていて、ほとんどは、毎日何度でもお目にかかる手の仕事(?)なのだ。あらためて並べてみると、なんと多彩な、と感心してしまう。手がしている一番大きなことは、仕事というより語ることではないか。絵本の最後の言葉に私もしげしげと自分の手を眺める。
読了日:03月27日 著者:浜田 桂子
少年動物誌 (福音館文庫 ノンフィクション)少年動物誌 (福音館文庫 ノンフィクション)感想
生きもの三昧の少年時代、というと、わたしは、明るさや喜び、憧れなど、何か甘美なものを思い浮かべるが、ここに書かれている少年時代は、生臭く、禍々しいといえるほどの暗さと背中合わせだ。病弱で学校を休みがちだった少年にとっての自然は、人との交わり以上に(苦さも含めて)濃厚なリアルだった。
読了日:03月26日 著者:河合 雅雄
小鳥たち マトゥーテ短篇選 (はじめて出逢う世界のおはなし)小鳥たち マトゥーテ短篇選 (はじめて出逢う世界のおはなし)感想
上から下へのあからさまな侮蔑と、下から上への卑屈さや屈辱感などが、淀んでいるよう。そうした淀みから、小さなひとりひとりを掬い上げるように語られた物語と思う。この一冊を読み終えて、心に残る情景は、棒切れの人形、島に翻る旗、手のひらの上のただ一枚きりの金貨の輝き、月にかけられたはしご……などだ。
読了日:03月24日 著者:アナ・マリア・マトゥーテ
忘られぬ死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)忘られぬ死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
最初から亡くなっていた人がずっと、他の誰よりも生きていて、濃い登場人物だった。だけど、なぜ。そこで。あなたが。死ななければならなかったのか。自殺か他殺か。他殺だとしたら、どうやって不可能を可能にするのか。その方法も、そのあとのことも、びっくり。おもしろかった。
読了日:03月22日 著者:アガサ・クリスティー
優しい語り手: ノーベル文学賞記念講演優しい語り手: ノーベル文学賞記念講演感想
生きた言葉も死んだ言葉もごちゃまぜの世界で、文学も行きづまっている。トカルチュクは新しい語り手を模索する。生まれつつある。それは新しい神話のようだ。文学について語ったものであるけれど、文学だけの話ではないと思うのだ。だって、この世界は言葉でできているのだから。
読了日:03月21日 著者:オルガ・トカルチュク
コッコさんのおみせ (幼児絵本シリーズ)コッコさんのおみせ (幼児絵本シリーズ)感想
おかしやさん、くだものやさん。カレー屋さん。コッコさんの売り台に並ぶ「商品」が賑やかで楽しい。何が入っているのか、眺めていると、おもしろい。カレーを出前するコッコさんに、お客さんたち(それぞれに大変忙しい)が、ちゃんと食べてくれるのがほのぼのとうれしい。(孫はコンビニのほん、という)
読了日:03月20日 著者:かたやまけん
オールドレンズの神のもとでオールドレンズの神のもとで感想
どうってことのない当り前の景色のなかにある、その人だけが知っている別の空間。隠れ家の話が好き。それは実際の空間である必要は必ずしもない。そうしたら、物語というものが、そのまま隠れ家と呼べるのではないか。現実からほんの一時、離れて潜みたくなる、懐の深い場所。表題作は……なぜこの作品が表題になったのだろう。
読了日:03月19日 著者:堀江 敏幸
目の見えない白鳥さんとアートを見にいく目の見えない白鳥さんとアートを見にいく感想
助ける・助けられるが、反転する新しい体験だった。見える人と見えない人との美術館めぐりは、私が思っていた「美術鑑賞」の印象を大きく覆してくれた。アートを見る、というけれど、「見る」ってどういうことなんだろうと考えてしまう。障害、差別の、表現するという事、鑑賞、いろいろな課題がたくさんの(でも楽しい)本だ。
読了日:03月15日 著者:川内 有緒
あしたもオカピあしたもオカピ感想
今のままの自分でいることと、今のままの自分が「好きだ」と思うことは、やっぱり違うのだ。それは、願って叶えられるものでもなくて、まだ見たことのないものを、さがしているということさえも気づかずにさがす、ちょっと暢気な宝探しみたいだ。「生まれてから一番楽しかったんだ」と思える日が、これから先もまだまだきっとあるよね。
読了日:03月13日 著者:斉藤 倫
巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3)) (創元推理文庫 SF 663-3)巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3)) (創元推理文庫 SF 663-3)感想
前二作に比べて、最初から最後まで、激しい動の物語で、振り回されるようにして読んでいた。いま、新しい事実が提示されて、曖昧だった部分は、パズルのピースが嵌まるように、丁寧に収まっていく。一作目のプロローグのあの言葉、この言葉の意味、あそこにいた二人の人物に、やっとちゃんと逢えた。長い旅をして、ここに帰ってきた。
読了日:03月12日 著者:ジェイムズ P.ホーガン
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
喩えるなら、手にとったのが苦手なホラーだったと気がついたときには、怖いけど、先が気になってやめられなくなってしまい、読み終えてもずっと物語に囚われたような気分になってしまう、そんな感じ。そんな感じで読み終えた。本を閉じて、ほっと息をつけばいいんだけど、それができない。私も穴から顔出す「トカゲ」見てしまった。
読了日:03月10日 著者:アガサ・クリスティー
いっしょにつくろう (福音館の科学シリーズ)いっしょにつくろう (福音館の科学シリーズ)感想
『エルマーとりゅう』のりゅうのぬいぐるみ、『ぐりとぐら』の手袋人形、『ラチとらいおん』のマスコット、『あおい目のこねこ』のまくら、段ボールで作る「しょうぼうじどうしゃ じぷた』、大きな『おだんごぱん』のぬいぐるみ(!)……全部で14種類。久しぶりに何か作りたくなってきた。
読了日:03月08日 著者:高田 千鶴子,小林 義純,酒本 美登里,ハイ 昭,村田 まり子
親子の時間親子の時間感想
当たり前の日常がけれど、当たり前じゃない。庄野潤三私小説のなかの日常は。思い出すのは『マローンおばさん』(ファージョン)の「あんたの居場所はここにあるよ」。この本『親子の時間』のなかからもこの言葉が聞こえてくるような気がする。ささやかに見えて深くて広い、奇跡のような「当たり前」へ。「おはいり」と呼びかけている。
読了日:03月07日 著者:庄野潤三
ぶどう畑のぶどう作り (岩波文庫)ぶどう畑のぶどう作り (岩波文庫)感想
人々のささやかな暮らしや、小さな生き物たちの姿を、写真に撮るようにうつしていく。私が好きなのは、人以外のスケッチ。虫や鳥、家畜たちのこと。一番好きなのはこれ。「壁――なんだろう、背中がぞくぞくするのは?」「蜥蜴――おれだい。」ルナールの『博物誌』の続きを読んでいるようで、こういうのをもっと読みたいな。
読了日:03月03日 著者:ジュール・ルナール,岸田 國士,Jules Renard
ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫) (創元推理文庫 663-2)ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫) (創元推理文庫 663-2)感想
2020年代、月はおろか木星の衛星の探査基地まで建設しているという設定の『星を継ぐもの』の続編。現実には、いまだに、わたしたちが挑みかかる相手は人だ。地べたの上で、殺しあっている、国をあげて組織だって。皮肉なのか、祈りなのか、希望に満ちた言葉を読むと居心地悪くなる。わたしたちは、何にも変わっていないのだ、と。
読了日:03月02日 著者:ジェイムズ P.ホーガン
古くてあたらしい仕事古くてあたらしい仕事感想
「具体的な読者の顔を想像し、よく知る書店員さんひとりひとりを思いながらつくる本」そして何より、若かった著者とすごく楽しかったくだらない時を一緒に過ごした人たちへの手紙なのだ。著者が、夏葉社という会社を興したときにつくりたいと思った本のイメージは、買い手としての私が手許に置きたいと思う本のイメージに重なる。
読了日:03月01日 著者:島田 潤一郎

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