『蜘蛛の巣』 アガサ・クリスティー

 

クリスティーの戯曲、四作目。
外務省の役人ヘイルシャム=ブラウン家の客間を舞台にした三幕もの。三月のある夕方、わずか三十分くらいの間にこの客間で起こった出来事なのだけれど……とても楽しかった。殺人事件があったというのにね。


そう、殺人事件が起こったのだ。この家の主婦クラリサが死体を発見して、警察に電話しようとしたが、ある事情からできなかった。
クラリサは、信頼する三人の男性に、死体を森に隠す相談をもちかける。が、そうこうするうちに、匿名の通報を受けて、玄関先に警察(警部と巡査)が到着するのである。四人は、とりあえず死体を「見えないところ」に隠すのだが……。


警察により、一人ずつ別々に聞き取りが始まる。四人の付け焼刃は、つっこまれれば、ぼろぼろと崩れていく。
読者(観客)としては、(それが犯罪であるとしても)四人を応援したくなってしまう。根は心持ちのよい人たちなのだ。
警察を出し抜き、誰にも疑惑が向かないように奮闘する四人の凸凹チームワークの行方も興味津々だ。
とはいえ、人が殺されたのである。喜劇で終わるはずもなく、では、この事件で、わかっていないことって何だろう。


二つの単語を組み合わせた言葉、たとえば、カレー・ライスと、前後を逆さにしたライス・カレーなら、どっちだって意味は同じだけれど、国家警察と警察国家、女の政治家と政治家の女などは、はっきり違う、という話、おもしろかった。
そして、印象的な「ザマアミロ!」には、にやにや笑いがとまらない。