『三幕の殺人』 アガサ・クリスティー

 

一幕目は「疑惑」
ディナー・パーティーの席で、招かれた牧師が突然に亡くなったことについて、これは殺人だったのではないか、と二、三の人が疑惑を持ったが、それらしい兆候は何もなかった。
二幕目「確信」
最初の事件から数か月後、あるディナーパーティ。先のパーティとよく似た状況で、医師が毒殺されたとき、先の牧師の死も含めての連続殺人である、と、疑惑が確信に変わる。


最初のパーティの主催者でもあった、元俳優のチャールズとその恋人(未満?)のエッグ。それからチャールズの友人のサタースウェイトの三人が、事件の解決に乗り出す。
ディナー客たちのなかで、ふたつのパーティの両方に参加していたのは七人である。
二つ目のパーティから姿を消した執事。メイドが聞いた電話の取次ぎの言葉。呼ばれていないのにやってきた客。そして、動機も方法も皆目わからない最初の殺人。
腑におちないことばかり。


腑に落ちない、といえば、最初からちらちらと姿は見えているものの、さっぱり物語の中に入ってこないポアロの存在も気になっていた。
このままではポアロなしで解決してしまうのでは?と思い始めた三幕目「真相」で、やっと三人の素人探偵たちの集まりに加わる。
三人が足で集めた沢山の情報のピースを前にして、はて、どのように並べれば、まともな絵になるかしら(まだまだ足りないピースがあるのか?)と首をひねるばかりのところに、それらピースを並べかえ、見事な絵にしてみせたのがポアロ。最後に現れて、おいしいところを持っていく役どころだったかな、と思うけれど、確かにポアロがいなければ、たぶん解決できなかった。
できあがったのは、隅々まで、びっくりの絵である。


「近ごろの世の中は、むしろ狂った童謡みたいなものだからね。」
大筋とは関係ないのだけれど、ある人のこのセリフが心に残った。
クリスティーの物語に、よく童謡(マザーグース)がとりあげられるのは、そういうことなのかな、と思って。