『ベイビーレボリューション』 浅井健一(文)/奈良美智(絵)

 

三万人のベイビー、三十万人のベイビー、三百万、三千万、三億、三十億……のベイビーが、はだかんぼうで、ぞろぞろぞろぞろ、はいはいしていく。チュッパすっているベイビーがいるのがかわいいな。


「しゅうきょう じょうやく ほうりつ
 なんのことだか わからない
 まもなく せんそうちたいだ
 おかまいなしに すすんでく」


赤ちゃんたちが打ち揃って、ひたすらにハイハイしていく様子を、思い描いただけで、手がとまる。まずはあっけにとられて。何がおきているのかわからなくて。
わたしたちが、止めることができたはずのあれもこれもに、ただ手をこまねいてみているしかなかったから、とうとう、世界中の赤ちゃんが革命を起こしたのか。チュッパ吸いながら障子に穴なんかあけている場合じゃないって。


青い空が広がる画面の上をハイハイしていく、数えきれないくらいの小さなはだかんぼうの赤ちゃんたちの姿は壮観だ。肌の色もさまざまな赤ちゃんたち。
戦争地帯をハイハイしていく何億の赤ちゃんたちの行進は良心の行進だ。戦争を続けるためにもっとも邪魔になる良心が、何億の良心たちが、赤ちゃんの姿になって、戦場を覆いつくす。
見ていると、ちょっと泣きたいような気持ちになる。