『葉っぱの地図』 ヤロー・タウンゼント

 

主人公オーラは12歳。野いばら村のはずれの小さな小屋に、母なきあと、たった一人で住んでいる。彼女は植物の言葉を聞く力を持っている。
この地域(世界?)の社会の様子や人間たちの関係など、何の説明もされないまま物語のなかに入っていくので、周りを見回すようにして、だんだん様子を知っていく。
監督官と呼ばれるのが、村長的な役割を果たしているらしいこと。
この村(まわりの一帯の地域)には医師がいない。植物に詳しい、オーラの母が薬を作り、治療師の役割を果たしていたが、病気で亡くなってしまったこと。
「ブルーコート」と呼ばれる人びとは、出稼ぎの労働者らしい。なかでも、オーラが忌み嫌うのは、お金にさえなれば危険な汚れ仕事をやる一派だ。


村のまわりで、死に至る熱病が現れ始める。ある村は、この熱病のせいでほぼ全滅したらしいと聞く。
同じ頃に、植物の葉の裏に黒い点々が現れ、枯れ始める。熱病と植物の病気は関係があるのかもしれない。
オーラは母が遺した手帖を頼りに、病気を治すための薬を探しに旅に出るが、思いがけない同行者に遭遇して、不本意にも三人旅になる。
道々の植物たちは、オーラに呼びかけ、励ます。植物の言葉を聞くことのできる子どもは、ひとりぼっちではなかったのだ。


それにしても、主人公の頑固さよ。
旅の道連れ三人組は、子どもながらに、それぞれ才能や技能をもっていて、最初から協力しあえば、この旅はずっと楽になっていたはず。そうではないから、冒険になるし、子どもらの成長の過程に、読者は同行できたのだけれど。
独りよがりな頑迷さゆえの遠回りは、若者に限らないなあ、と我が身を省みながら思う。若者なら成長できるけど。


オーラたちは、薬を手に入れることが、あるいは作り出すことが出来るのか。
そもそもこの病気の正体は何なのだろう。執拗にオーラたちを追いかけ、彼らの道行きを塞ごうとする連中の狙いは何なのだろう。
物語は、ファンタジー、児童書の姿をしているが、この世で起きていることの雛型みたいだ。


タイトルの「葉っぱの地図」という言葉を見たときには、可愛いタイトル、と思ったものだけれど、熱病の特徴からつけられた病名であることを知り、ぞっとする。
だけど、この名前が、本を読み終える頃には、別の意味もあるのだ、と思い始める。植物の道しるべ。記されているのは、未来への希望。