2月の読書

2月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2160

氷上旅日記[新装版]:ミュンヘン‐パリを歩いて氷上旅日記[新装版]:ミュンヘン‐パリを歩いて感想
タイトルは「旅日記」だけれど、これは、紀行文ではないし、何かの記録でさえない。自分自身や架空の人間との長い対話。旅人の深い孤独は、読み手にとって、徐々に心地よいくらいになってくる。次第に感覚を研ぎ澄ませ、深く深く、より深いところまで降りていく、それだけ。修行僧の姿のようにも見えてくる。
読了日:02月26日 著者:ヴェルナー・ヘルツォーク
暗やみに能面ひっそり暗やみに能面ひっそり感想
能面は、のっぺりしているように見えるけど、光の当たり方や、角度で、表情が変わってくること、そこに感情が浮かび上がってくる描写は、目が覚めるようだった。それこそ、のっぺらぼうの能面が、生身の人の顔より生き生きと感じられる。宗太は10歳。今後、孫と祖父には、きっと新しい関係が始まる。楽しく想像しているる。
読了日:02月24日 著者:佐藤 まどか
アミナ (エクス・リブリス)アミナ (エクス・リブリス)感想
どういう意味?と問いたくなる(答えを知りたいわけではない、怖くて)、後味が良いとは言えない物語集だから、独特の余韻がある。自ら進んで「よそ者」となる者も、誰かを「よそ者」と思う者も、本当は同じ根っこをもっているのだろう。マレーシア特有、と思って読んでいたあれもこれも、決して特別なことではない、と思えてくる。
読了日:02月22日 著者:賀淑芳
聞け!風が聞け!風が感想
飛行の記録というよりほぼ「待ち」の記録。待って待ってやっと飛び立った時の解放感。美しい文章だった。海を空をそして陸地を描写する言葉が、飛ぶことで伝わってくる振動や傾きのようなものが、気持ちを高揚させる。完全な空の孤独の遥か遠く、人々の暮しの気配が感じられた時、本読む私にもなんと懐かしく思えたことか。
読了日:02月18日 著者:アン・モロー・リンドバーグ
こしたんたんこしたんたん感想
食うか食われるか、シビアな命のやりとりを背景にして、この笑いは、ともに命を食らって生きる者としての共感かな、哀れみのようなものかな。動物の大きな表情の変化は、なんともダイナミックで、おかしい、おかしい。絶妙な間、韻を踏んだ(?)言葉遊びが楽しい。「こしたんたん、こしたんたん、こしたんたん……」
読了日:02月15日 著者:りとう ようい
フォグ 霧の色をしたオオカミフォグ 霧の色をしたオオカミ感想
サーカスのオオカミに惹かれるストリートチルドレンの少年。人に養ってもらうことも盗みを働くことも拒否して、子どもながらに一人で生きていこうとする少年は、孤高のオオカミそのものだ。傍らの少年に、(敬意をもって)一定の距離をとることを要求するオオカミは流浪の身の王のようだった。
読了日:02月13日 著者:マルタ・パラッツェージ
冬牧場冬牧場感想
山のような問題を前にして、外の世界の人間の賞賛の言葉は無責任なロマンチシズムになってしまうかもしれないのだけれど、生と死の間がここまで狭く感じる極寒の荒野でのささやかな暮らしに温められた。カザフ語を解さない著者と、中国語を解さない家族とが、家業や家事を分かち合い、食事を囲んで笑いあうことは、美しい不思議だった。
読了日:02月08日 著者:李娟(リー・ジュエン)
夢の10セント銀貨 (ハヤカワ文庫 FT 2)夢の10セント銀貨 (ハヤカワ文庫 FT 2)感想
ポケットに10セント銀貨を入れて多元世界の旅を続ければ、彼が「敗残者」と思っていた元の世界での生活は、それほど悪くなかったのでは?と思わなくもない。大切なものを取り戻そうとするベンの理屈や行動は、調子がいいにもほどがあるだろうと、正直、腹が立つ。だけど、彼の真意に気がつくと、ちょっとほろっとしてしまう。
読了日:02月04日 著者:ジャック フィニイ
図書館がくれた宝物図書館がくれた宝物感想
三人の孤児は、疎開先で、それぞれなりに悩み、学び、成長していく。それは喜ばしい反面、痛々しくもある。子どもが安心して子どもでいられる当たり前は、案外叶わなくて、簡単に取り上げられてしまう。物語のなかでも外でも。ハッピーエンドのうれしさって、普通の毎日が、きっと明日も明後日も続くって信じられることなのだね。
読了日:02月01日 著者:ケイト・アルバス

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