3月の読書

3月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:3500

こびん (らいおんbooks)こびん (らいおんbooks)感想
時間をかけて手紙が手許に届く。大切に運ばれてきた手紙の、紙に書かれた文字の間から、「たいせつなもの」があふれてくる。こんな手紙を受け取ったら、どんなにうれしいだろう。いつか私もこんな手紙で誰かを喜ばせることができたら、どんなにうれしいだろう。てがみを大事に運んでくれる人に、心を込めて、ありがとう。
読了日:03月30日 著者:松田奈那子
アイダホ (エクス・リブリス)アイダホ (エクス・リブリス)感想
長い長い時間をかけて、いったいどこに辿り着こうとしているのだろう。許しでもなく償いでもなく共感でもなく。「わたしがここにいるのはあなたがここにいないから」という言葉、それは、一面こういうことでもあるのだ。「わたしがここにいるのはあなたがここにいるから」穏やかに(ほとんど明るい気持ちで)物語を振り返りながら。
読了日:03月29日 著者:エミリー・ラスコヴィッチ
新月の子どもたち新月の子どもたち感想
夢のなかでも現実の世界でも、たくさんの比喩が現れる。やさしく書かれているけれど、そのふところはかなり深い。「じぶんの夢を、まもれるのは、じぶんしかいない」という言葉が力強く心に響く。物語のなかを一緒に歩いてきたあの子たちから、これからその道を進もうとしている子どもたちに向けられた贐のようだ。
読了日:03月26日 著者:斉藤倫
キオスクキオスク感想
そもそも、キオスクから出られなくなってしまったところから、困ったというよりも、それはそれで一つの快適と言えないこともない、と思うほどに、オルガの生き方はポジティブだ。大きなオルガのささやかな暮らし方がかわいらしいな。くすくすと笑いながらページをめくっているうちに、おおらかな幸せが寄せてくる。
読了日:03月23日 著者:アネテ・メレツェ
極北極北感想
主人公のモノローグのなかにあらわれる、ノアの箱舟から飛びたち小枝を咥えてもどってきた鳥が心に残っている。世界は変わった。さらに変わりつつある。それでもここで人は生まれる。人は生きていく。不思議な明るさが満ちてくるのを感じているが、それは、ずっしりと重たい覚悟からくる明るさなのだ。
読了日:03月19日 著者:マーセル・セロー
雨に打たれて雨に打たれて感想
行きずりの「わたし」の目を通した物語である。あちらでもこちらでもドラマが起こりつつあるけれど、そのドラマの上をさらっと渡り、頬をちょっと撫ぜて吹きすぎていく風のようだ。さばさばして潔いと思うし、また物語のある場面や横顔が、そこだけ静止した画像のように心に残る。
読了日:03月16日 著者:アンネマリー・シュヴァルツェンバッハ
中庭のオレンジ (単行本)中庭のオレンジ (単行本)感想
中庭のオレンジの木は、三つの物語に登場し、21の物語の上に枝を広げているみたいに思える。21の物語のひとつずつが、爽やかな香りを放つ美しいオレンジみたいに思える。ショートショートといいたいくらいの短さなので、隙間時間にちょこちょこと読むのがいいかも。オレンジのひと房、ひと房を味わって楽しむように。
読了日:03月14日 著者:吉田 篤弘
フロイトの弟子と旅する長椅子 (BOOK PLANET)フロイトの弟子と旅する長椅子 (BOOK PLANET)感想
愛する人を救出したいという思いは純情で一途と思うが、こんな不快な賄賂を差し出すために奔走する彼は、小狡い小心者のエゴイストでもある。怪物の極端に醜悪な描写は、莫自身の一部であるかもしれない。繰り返し出てくる処女、処女、処女という言葉が、不気味な迷路の、人を惑わすインチキな道しるべにも思えてくる。
読了日:03月12日 著者:ダイ・シージエ
ウマと話すための7つのひみつウマと話すための7つのひみつ感想
人の決まり事の中で暮らしていると、ときどき忘れてしまうのだけれど、時間はゆっくりたっぷりある。それが、相手を大切にすることや居心地の良さに繋がっていく。期待はするけれど、しすぎないようにしたい。そして、もしもあちらがこちらにちょっとでも心寄せてくれたら、それはどんなにうれしいだろう。
読了日:03月10日 著者:河田桟
招かれざる客 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)招かれざる客 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
書斎を出入りする家族や従僕。警察。それぞれの思惑が散らばったり寄り集まったり、ぐるぐる回ったり。舞台の上で、唯一、異質な他人スタークウェッダー。舞台が進むにつれてこの男は存在感を増すし、得体の知れなさが際立ってくる。退場するときには、物語を見事に浚っていった。登場も退場も、あまりに印象的で鮮やかだ。
読了日:03月08日 著者:アガサ・クリスティ
夜明けまえ、山の影で エベレストに挑んだシスターフッドの物語夜明けまえ、山の影で エベレストに挑んだシスターフッドの物語感想
なぜ被害者が罪の意識に苦しまなければならないのか。告発の声をあげようとするだけで脅されなければならないのか。家族がなぜ恥を感じてしまうのか。山の影の大きな暗がりは、身を隠す場所というより、自分を解放するようにと手招きをしている場所だった事、影はこちらを覆い隠すものではなく、仲間であり、わが家である事に気づく。
読了日:03月06日 著者:シルヴィア・ヴァスケス=ラヴァド
私の欲しいものリスト私の欲しいものリスト感想
ジョスリーヌの何度も書き直されるリストと、六分おきにリセットされる彼女の父親の記憶とが被る。でも両者が決定的にちがうのは、前者には莫大な元手があることで、後者には何もない(空白)ということ。そして、不思議、平和で幸福だと感じるのは、空白しかないところから紡がれる六分のリストのほうだ。
読了日:03月04日 著者:グレゴワール ドラクール
カヨと私カヨと私感想
人と山羊と一緒に暗し両者の境界は、ゆるくなったとしても、なくすことはできない。でも、時間をかけて築いてきたものもある。それを思うとき、人はやっぱり動物と暮らせたことをありがたく思う。動物も、少しは人と暮らせたことをうれしく思ってくれるといいな、と我が家の動物を撫ぜながら、私は思っている。
読了日:03月03日 著者:内澤旬子
地球はプレイン・ヨーグルト (ハヤカワ文庫 JA 114)地球はプレイン・ヨーグルト (ハヤカワ文庫 JA 114)感想
宇宙旅行あり、時間旅行、超能力、クローン人間、宇宙人もやってくる。物語はドタバタのお笑い、ロマンス、民話ふう、スリラーっぽいのもあり、バラエティ豊か。一作読むごとに次を期待しながら、あっというまに七作読んでしまった。好きなのは『さびしい奇術師』哀感と優しさがこもっている。笑ってしまいたい。そして拍手したい。
読了日:03月02日 著者:梶尾 真治

読書メーター