『ねじれた家』 アガサ・クリスティー

 

満を持して、チャールズがソフィアにプロポーズしようとしたときに重なるかのように、ソフィアの祖父が毒殺された。容疑者は家族全員。ソフィアはこの状況で、プロポーズを受けるわけにはいかない、という。
チャールズがこの事件を解決しようと思ったのはそういうわけなのだ。彼の父は警視庁の副総監で、父のつてで、事件を担当するタヴァナー警部らの捜査に同行する。


亡くなったソフィアの祖父は大富豪。一族10人とともに、奇妙で複雑なつくりの大邸宅に住んでいた。
家族を愛しているが専制君主のようだった当主を中心にして、彼らはみんな、マザーグースの歌のとおり「ねじれた家のねじれた子供」たちなのだ。
家族の誰が犯人であってもおかしくない状況で、疑心暗鬼というよりも、誰が犯人であろうと、誰もが全力で庇おうとする気配がある。(家族であれば、それが自然か)事件を本当に解決したいと思っているのだろうか。


最初、お預けになった結婚を勝ち取るために、息の合った恋人同士が共同戦線を張りながら犯人を追い詰めていくストーリーを想像していたのだけれど、当てが外れた。
チャールズの恋人のソフィアは、私には妙によそよそしく感じられる。あくまでも捜査される側の一人となり、大抵の場合、何を考えているのか、よくわからない。


チャールズは探偵としては、あまりに頼りない。むしろ、恋人を思って悶々とする胸の内がほほえましいくらいのもので。
信頼できる探偵役がいない、というのは、不安な気持ちになる。どういう方向からどういうやり方で、すっかり謎が解けて事件が解決するのか、最後までさっぱりわからない。最後まで!
「ねじれた」迷路を手さぐりで進み、読み終えたというのに、まだ、迷路のなかにいるような気分だ。