三年生になって、「わたし」は、けいこちゃんと仲良くなった。
学校が終わってから、よくいっしょにあそんだ。
ここは炭鉱の町で、この学校の、かなりの子どもたちが、炭鉱で働く親を持っているのだ。
炭鉱の仕事もいろいろだし、家庭の事情もいろいろだ。
「わたし」の家では石炭がなくなると、おとうさんがトラックにつんで帰ってくる。家族総出で小屋に運び、「わたし」は姉と競争で石炭の粉を練って丸めて、豆炭を作った。
石炭を買えない家の人たちは、ボタ山にまじった石炭屑を拾いにいく。警備員に追い払われながら。
「わたし」と同じ学校のこどもが混じっていることもある。
そういうとき、「わたし」は目を合わせないようにして急いで帰る。
そこに、けいこちゃんもいたような気がする。
あるとき、炭鉱に、事故を告げるサイレンが鳴り響き……
石炭を掘り出すときに出た石や土が捨てられて出来た大きなボタ山。
炭鉱を掘ったために地面が沈んで出来たカンラク池。
石炭を洗う黒い水が流れる、どろの川。
炭鉱の子どもたちが遊ぶのは、そういう場所。
ほんとうは危ないから行ってはいけないはずの場所を、けいこちゃんは、ひょいひょいと進んでいく。あとからついていくわたしをときどきふりかえり、はげましたり、手を差し出してくれたりした。
(大人の目から見たら)危険で、ちょっとハードルの高い遊びも、そうやって覚えて、夢中で遊んだ。
すっかり大人の目線で、はらはらして見ているこちらを振り切るように、のびやかに手足をぐんとのばして少女たちは夢中で遊ぶ。
ここには、親の仕事も、家庭の事情も何もない。
遊びに遊ぶ少女たち、このまま、大きな鳥になって、いっしょに飛んでいきそうだ。
表と裏の見返しには、草の上に投げ出された、たくさんのこどもたちの足が並んでいる。下から上に、にょきにょきと。
靴下に靴。素足にズック。裸足。みんな仲良く並んでいる。
むこうに見える煙突は炭鉱の煙突かな。重なった山はボタ山だね。
こどもたちの上には広い空。