『ぼくのなかの木』 コリーナ・ルウケン

 

木には、りんごが(ほかの実も)なる。
木は、ひかげをつくってくれる。
木があるから、鳥やりすや毛虫も生きられる。
読んでいると木が見えてくる。匂いも、さわり心地も、そして、木のまわりのいろいろなもの、風や光やどろも感じる。
木のまわりや、木の上では、子どもたちが遊ぶのだ。
木って、大きくて、無口で、強いね、頼もしいね。賢いね。


昔、子どもと一緒に読んだ絵本『木はいいなあ』(ユードリィ/シーモント)を思い出した。あの絵本も、木ってこんなにいいんだよ、と飾り気のない言葉でまっすぐに伝えてくれた。そうして、私たちは庭に実のなる木を植えたのだった。


だけど、こちらの絵本の木は、「ぼく」のなかにある。
木の姿は実際には見えないけれど、感じることはできるし、感じたい。
「ぼく」は、私であり、あなたであり、誰でも……。


始まりのことばは、
「ぼくのからだのなかには
 木がいっぽん はえてる」


「ぼくの なかの 木は
 がんじょうだ
 しなやかで
 だいちに ふかく ふかく
 根をはっている
 ……」


言葉が祈りみたいに思えてくる。
「ぼく」の木にもいつかりんごがなる。
小鳥もりすも虫たちも喜んで集う木になるように。
風に吹かれ、雨を受け、日陰を作る木になるように。
大きく育ちますように。