『結局、ウナギは食べていいのか問題』 海部健三

 

 

土用丑の日、あっちのチラシもこっちのチラシもウナギだけど……
絶滅危惧種だったんじゃないのかな、そこまで深刻じゃなかったのかな、養殖の技術などが進んだのかな。
なんとなくモヤモヤしていると……


ウナギは絶滅危惧種である。IUCN(国際自然保護連合)の二番目に絶滅の危険度が高いリストに載っているそうだ。
ではなぜウナギは減ったのか。いくつかの理由(どれも人間が関わっている)があげられる。それぞれに対して改善が必要なのだけれど、中でもいちばん大きな原因は、過剰な漁獲のようだ。


「ウナギは個体数が多いから絶滅しない」という意見もあるそうだが、
「むしろ個体数の多い生き物の場合は、「個体数が多い」状況が維持されなければ生存できない、という可能性すら考えられます」
実際、ウナギの完全養殖が非常に難しいのも、それだからなのだろう。
ニホンウナギは、マリアナ諸島の産卵場で生まれ、幼生のレプトセファルスとなって東アジアに分散する。その一部がシラスウナギ(稚魚)として、日本に接岸し、川で成長する。それから、銀ウナギとなって産卵場をめざすのだ。
今の養殖ウナギというのは、もともと天然のシラスウナギを捕獲して養殖場でおおきく育てたものなのだそうだ。(出自は天然だったのか)


ウナギの数は減ってしまったけれど、わたしたちがウナギを将来もずっと食べ続けることは可能だ、と著者は言う。ウナギが子を産んで増えるスピードを越えないように、食べる量を抑えれば、いつまでも食べ続けることはできるのだ。


ところが……
「国内で養殖されているニホンウナギのうち、およそ半分から7割程度のウナギが、違法に流通(密漁密売)したシラスウナギから育てられています」
どういうこと? 政治はなぜ対応しないの?


これは、ウナギだけの問題ではないのでは。
絶滅危惧種に関わる問題って難しい。純粋に、絶滅から守るか、どうやって守るか、という課題だけでも難題なのに、別の立場(というより次元?)の団体や業界の思惑などが絡むと、ますますややこしくなってしまう。
表紙には「そのモヤモヤにお答えします」と書かれているが、小さなモヤモヤの解決は、もっと大きなモヤモヤの入口かもしれない。