7月の読書

7月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:3490

雨の動物園―私の博物誌 (岩波少年文庫)雨の動物園―私の博物誌 (岩波少年文庫)感想
「子どもから少年へ、少年からおとなへ」まるでそれぞれの時期を、脱皮するように脱ぎ捨てて大きくなる作者に、彼と関わった生き物たちは、次の時代への橋渡しをしているようだった。東京も、高度成長という道を歩み始めたころである。森が消えて、カッコウもリスも、アオバズクも、どこにいったのだろう。
読了日:07月31日 著者:舟崎 克彦
ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫)ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫)感想
『はしがき』の子どもは、16短編の大人たちの中にちゃんといる。大人になって星を探しに乗り出す時同時に身を引き裂かれるような激しい痛みも味わう。彼らは孤独な世界を目指しながら残していくものたちのことを思わずにはいられない。一人ぼっちではなかったから。憧れ迷い苦しみながら、彼らが振り返って見せる優しさが忘れられない。
読了日:07月28日 著者:レイ・ブラッドベリ
コロナの時代の僕らコロナの時代の僕ら感想
自分のみのまわりから外へ。独りから小さな共同体へ、地球上のあらゆる生物まで。ウイルスは平等で差別をしないから。ものを書く人の眼差しなのだと思う。 著者が「文章を書くことにした」のは、「予兆を見守り、今回のすべてを考えるための理想的な方法を見つけるため」だった。読むこと、書くことの意味を思うと、力が湧いてくる。
読了日:07月26日 著者:パオロ ジョルダーノ
吹部! 第二楽章 (角川文庫)吹部! 第二楽章 (角川文庫)感想
個性的すぎる顧問が二倍になった?分断する部、まるで個人練習のようなそれぞれの悩み。それぞれの思いを音に乗せて彼らの演奏が始まる。昨年、二年生の沙耶たちを支えてくれた先輩たちが卒業していったように、沙耶たちの舞台もとうとう最後だ。このメンバーで演奏する、これが最後の舞台。いっしょに楽しんでいる。
読了日:07月24日 著者:赤澤 竜也
吹部! (角川文庫)吹部! (角川文庫)感想
気もちを、顔色や言葉ではなくて、楽器で見せる人たちは、きっと私の知らない別の言葉で語りあっている。ともに楽器で音を出し合い、音を合わせあう彼らだから、わかることがあるのだろう。音楽が聞こえてくる。文字が音になり、音楽になる。読んでいるこの身が揺れ始める。もっと読んでいたい、もっと聞いていたい、と思う。
読了日:07月23日 著者:赤澤 竜也
彼の手は語りつぐ彼の手は語りつぐ感想
南北戦争の最中。白い肌の少年シェルダンの命を救ったのはマホガニー色の肌の少年ピンクスだった。表紙の絡み合った三つの手が心に残る。北軍の中の差別、それでも「自分たちの戦争」というピンクスの言葉が印象的。シェルダンの傷を癒す数日間が、素晴らしい休暇のよう、楽園のようだった。
読了日:07月21日 著者:パトリシア ポラッコ
あかん男 (角川文庫)あかん男 (角川文庫)感想
知っている時代なのに、すごく遠く感じる。年齢関係なく、この人可愛いな、と思う可愛さは颯爽としている。標準語に翻訳できない言葉にこめられた心情(その言葉を使う人たち共通の)を推し量りながら読むのも楽しかった。共通語にない「~しよる」の「よる」の独特のニュアンスに当てはまる助詞が共通語にないことなど。
読了日:07月20日 著者:田辺 聖子
戦場のコックたち戦場のコックたち感想
醜い、酷い、悲惨な戦場。それでも、この物語を読むのは本当に楽しかった。兵士たちの会話は、そこが戦場だということをときどき忘れさせた。簡単に言うな、と言われるかもしれない。喪ったものはあまりに大きく何もかもが元通りというわけではなかったから。それでも。『夜と霧』の精神の自由、豊かな内面、という言葉を思い出す。
読了日:07月18日 著者:深緑 野分
小公子(新潮文庫)小公子(新潮文庫)感想
子どものとき、私はセドリックの幸福をひたすらに願いながら読んでいたが、今のわたしは、ドリンコ―ト伯爵に近いのだ、と感じてくらくらした。彼が孫にメロメロになってしまう様子もとてもよくわかる。ページを追うごとに若返っていく老人の変化に目を見張る。おとぎ話かもしれないが(おとぎ話だから)楽しい。
読了日:07月15日 著者:フランシス・ホジソン・バーネット
殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)感想
今、私はどこに連れてこられたのだろう。ここでみているものはなんなのだろう。 記憶ってとても個人的なものだ。そして変容する。完璧な形で保存なんてできない。どうしようもないあやふやなものであるのに、それが消えてしまったら、こんなところに沈んでいくのか、と、とらえどころのない灰色のなかで感じている。
読了日:07月13日 著者:キム ヨンハ
新訳 ドリトル先生のサーカス (角川文庫)新訳 ドリトル先生のサーカス (角川文庫)感想
ドリトル先生と動物たちの活躍を見ていると、夢のサーカス像が膨らんでくる。動物も人も、誰かの強制ではなく、すすんで得意なことを披露し、それぞれがスターになるサーカス。それから、人の言葉も動物の言葉も等しくわかるドリトル先生でなければできないことや、先生だからこそやってほしいことなども。サーカスは楽しい。
読了日:07月10日 著者:ヒュー・ロフティング
新訳 ドリトル先生の郵便局 (角川文庫)新訳 ドリトル先生の郵便局 (角川文庫)感想
新訳。旧訳で宇宙人だった人たちが人に戻る。慣れた固有名詞が変わったのは最初なじめなかったが。ドリトル先生の郵便局はステキ。海に浮かぶ郵便局。お茶の時間。鳥たちのリレーの国際郵便。結構波乱万丈の物語でもあるけど、ハラハラドキドキというより、むしろ、のどかだと感じるのは、文章がどこまでもなごやかなせいかもしれない。
読了日:07月08日 著者:ヒュー・ロフティング
もうひとつの曲がり角もうひとつの曲がり角感想
不思議は起こり、その不思議は物語の(主人公の)大切なポイントなのだけれど、そこは、読者の私自身にとっても、そこの横丁の先にある、すぐそこのようにに思える。現在の不満を具体的に話す子どもに対して、未来のことを抽象的に話して説得する大人の言葉に、耳が痛いと思った。子どもの時に感じていた気もちが、曲がり角の先にある。
読了日:07月04日 著者:岩瀬 成子,酒井 駒子
友だち (新潮クレスト・ブックス)友だち (新潮クレスト・ブックス)感想
物語というよりエッセイみたいと思いながら読んでいた。そうしたら終り近くに挟み込まれたあれだ。ストレートに高まっていくはずの思いを乱され、ブレーキをかけられ、これまで感じていたのとは少し違う景色がにじみ出てくる。「友だち」とはなんだろう。「あなた」「おまえ」(もう一人の)「わたし」それとも「書くこと」だろうか
読了日:07月02日 著者:シーグリッド ヌーネス

読書メーター