7月の読書

7月の読書メーター
読んだ本の数:13

絵本力:SNS時代の子育てと保育絵本力:SNS時代の子育てと保育感想
理論編と実践編。ことに幼稚園などで読まれる絵本が、子どもたちの集団遊びや生活のなかで、大きく膨らんだり変化したりしていく様子に引き込まれた。本を読んであげる、というよりも、読み手も聞き手も一つになって一緒に楽しんでいる感じが素敵だった。羨ましいくらいに幸せな教室、幸せな子どもたち、と思った。
読了日:07月28日 著者:浅木尚実
きみだけの夜のともだち (ポプラせかいの絵本 69)きみだけの夜のともだち (ポプラせかいの絵本 69)感想
華やかな色合いだけれど、賑やかとは思わない。シュールな世界だけれど、わくわくどきどきというのとはちがう。幻想的な世界を揺蕩うような心地よさで、ゆったりと眠りにいざなっていく、美しいおやすみなさいの絵本だと思う。おやすみ、よい夢をね。(夜の友だちは、昼間は別の姿で、ほらね、ちゃんとあそこに、ここに、いる。)
読了日:07月25日 著者:セング・ソウン・ラタナヴァン
故郷の廃家故郷の廃家感想
一家の暮らしが郷土の風景に密接に結びついていく様を読む喜び。それから、嘗ていた人たちに対する懐かしさと敬意と。遠い昔の漠然とした地域の集合体から語り始められ、一筋の川が鮮やかに浮彫になってきたように思われた著者の家の歴史は、細部に渡れば渡るほど、再び、大きな共同体に帰っていくような感じだ。
読了日:07月24日 著者:饗庭 孝男
コーラス・オブ・マッシュルームコーラス・オブ・マッシュルーム感想
相手をねじ伏せようと闘い続けている母と娘。母と子の闘いというよりも、一人の移民のなかにある二つの言語・文化とのせめぎ合いのようにも感じられる。言葉の通じない祖母と孫を繋ぐ昔話は二つの根をより合わせていくよう。家ってなんだろう。家は昔話のようだ。
読了日:07月21日 著者:ヒロミ ゴトー
ドアのノブさん (わくわくライブラリー)ドアのノブさん (わくわくライブラリー)感想
人の生活の道具としてそれぞれ重宝に使われていたときもあったのに、いったん人の目のまえから消えたらもうその存在さえ忘れられてしまいそうなものたち。日の当たらないところに押しやられてそのまま忘れられていくような小さなものたちが、それぞれ日の当たる場所に送り出されたような感じだ。みんな個性的で素敵だね。
読了日:07月19日 著者:大久保 雨咲,ニシワキ タダシ
クスノキの番人クスノキの番人感想
人が抱えている思いは、誰かに受け止めてもらいたいことも、誰にも知られたくないこと、言えないこともある。浮かんでは消えて行く、どうでもいい些細なたくさんのことも。そのうえで、忘れるってことは、「そんなに悪いことでしょうか、不幸なことでしょうか」この問いかけを静かに反芻する。ピアノの音が聞こえる。音楽が聞こえる。
読了日:07月17日 著者:東野 圭吾
ラプラスの魔女 (角川文庫)ラプラスの魔女 (角川文庫)感想
夢中で読み終えたもののすっきりはしない。このどんよりとした気持ちは、人の命を命とも思わないあの人たちへの不快感よりも、最初から最後まで一度も姿を見せない大きな存在のせいだ。「所詮、俺たちは駒だ」というやりきれない言葉をそのままに、意識させられたせいだ。
読了日:07月15日 著者:東野 圭吾
蠅の乳しぼり蠅の乳しぼり感想
作者の帰れない故郷の町ダマスカスとは、帰れない少年時代と同義語でもあるように思う。郷愁の光であると同時に、現在ひたすらに子ども時代を過ごしている者たちへの眼差しの明るさ、温かさであると感じている。そこに外から影を投げかけようとする手に対しては、静かで激しい怒りをあらわす。鋭い皮肉という武器を使って。
読了日:07月13日 著者:ラフィク シャミ
愛国殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)愛国殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
犯人をみつけて終わりとはならないだろう、どんな結末になっても、すっきりしないだろう、というこちらの予想はひっくり返る。なんてことをしてくれたの!と言いながら拍手を送りたい結末が待っていた。しかも、これで終わりと油断していると、最後の最後まで……。驚いている探偵と読者を置いて軽やかに歩き去るあの人に幸いあれ。
読了日:07月11日 著者:アガサ・クリスティー
黄色い老犬 (1959年)黄色い老犬 (1959年)感想
大自然のなかの一軒家に暮らすことの難しさ厳しさとおおらかで豊かな暮しと。大自然の中で、少年は急いで大人にならなければならない。あまりに残酷な方法で、と思うが、むしろ大切なのはその先なのだろう。このうえなく悲痛な場から、喜びの種を見つけ出し、育てようと思えたとき、彼は大人になったのだ。
読了日:07月08日 著者:フレッド・ギプソン
ローズの小さな図書館ローズの小さな図書館感想
こどもの時の夢は少しずつ形を変えていく。積もっていく失意はいつまでも積もり続けるわけでもない。人は第一印象どおりではない。そんなことを何度となく物語のなかで見せられる。一つの場面が前後斜めに膨らんでいくのを想像している。本との出会いの場、図書館が、いついつまでも元気でありますように。
読了日:07月06日 著者:キンバリー・ウィリス・ホルト
それ自身のインクで書かれた街それ自身のインクで書かれた街感想
淫らな声、腐ったゴミの匂い、騒音、暴力と血の味、薄暗くて汚い裏町が、この詩集のきっと主役だけれど、受け取るイメージは、なにか聖なる宝を芯に抱えた透明な夜の空気だ。作者の案内がなければ、この町を心地よいなんて感じることはなかっただろう。清濁まとめてこの町への作者の愛が好きなのだ。
読了日:07月04日 著者:スチュアート・ダイベック
スターバト・マーテルスターバト・マーテル感想
弱者たちは「守られる」べきと思う。でも少女たちを見ていると、彼女たちが守られていることが苦痛になる。守られることから、解放してやりたい、と思えてくる。チェチリアの手紙のなかに「死」が親しい友となって何度も登場するのが印象的だ。守られている少女が、守りを拒絶するために、死と手を結んでいる、と思うのは辛い。
読了日:07月02日 著者:ティツィアーノ スカルパ

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