『つきよのアイスホッケー』 ポール・ハーブリッジ(文)/マット・ジェームス(絵)

 

12月、初雪が降る前というのに気温がマイナス20度になる町で、子どもたちは満月の晩を待っている。
森の中のビーバー池に、アイスホッケーをやりにいくのだから。


どっさり雪が降る。月が満ちてくる。
そして、とうとう、その日が来る。


その日までの待ち遠しさも、その日の夕方、闇の森を歩くことも、そして、鏡のような池で汗びっしょりになるほどの夢中のアイスホッケーや、岸辺の篝火、雪を沸かしてみんなで飲む紅茶も、どれもどれも、なんだか夢みたいに明るい。


だけど、何よりも心に残るのは、子どもらを包む闇のあたたかさ。
温かいわけないでしょう。マイナス20度を軽く越える夜であるのに。
だけど、闇は、くるまったマントのように温かく感じる。木々の向こうにいるかもしれない動物の気配も、子どもらを照らす親し気な満月も。
きんとした冷たささえも含めて、やはり、温かい、と感じるのは、子どもたちの満ち足りた気もちによるのだろうか。


ぎざぎざと尖ったようなタッチの線、白と深い藍が主体の背景に、子どもらの服装に赤や黄色が控え目に混ざるのが、命通ったものが今通りますよ、という感じで明るく感じる。
子どもたちの顔は、目鼻があるかなきかという程度にしか描かれていないが、その表情が見えるような気がする。声が聞こえるような気がする。
彼らの興奮や満足が、手に取るように伝わってくる。ベッドに入った後にも。


いま、子どもらが消えた森を名残惜しく振り返っている。