『雨の日は、いっしょに』 大久保雨咲(文) 殿内真帆(絵)

 

先日、初めての傘を買ってもらった孫が、婆さんのところに見せにきてくれた。
赤い苺のもよう。
かんかんと照るお日さまの下で、小さな傘を、小さな孫がさして歩く。まるで大きな茸が歩いているみたいで、おかしいやらかわいいやらで、笑ってしまった。


これは傘のお話。主人公は傘なのだ。
雨の日、ハルくんの黄色い傘は、学校の傘立てのなかでハルくんが迎えに来るのを待っている。
まわりには、折りたたみ傘やビニール傘や、いろいろな色や模様の傘がいて、黄色い傘はどの傘にもちょっと憧れている。


あんな傘になりたいな、あの人の傘になっていつもと違う道を行けたらどんな気持ちだろう。黄色い傘は、次々に考える。
傘の小さな「行きて帰りし」冒険のお話で、違う自分になってみたいから始まる、自分探しの物語でもある。
黄色い傘は、親の手を振り切ってどんどん遠くへ駆けていく子どもみたいだ。
いったい何をみつけるのかな。


雨の日、色とりどりの傘が、街の中を歩いていく。
すれ違う傘同志で、もしかしたらちょっと挨拶をかわしているかもしれない。
傘立てのなかでは、それぞれの持ち主を待ちながらおしゃべりの花が咲いているかもしれない。
そう思うとちょっと楽しい。


模様さまざまなコラージュの挿絵も楽しい幼年童話。