『それでも、世界はよくなっている』 ラシュミ・サーデシュパンデ

 

顔を背けたいくらいに惨いニュースが溢れている。腹立たしかったり、情けなかったり、不安だったり……。それでも、世界はよくなっている、というのだろうか。


政治はどうだろうか。環境は守れているのだろうか。世界に医療と衛生は行き渡っているか。みんなが平等だと感じているだろうか。そして……。
首を横に振りたくなるようなあれこれのニュースを思い出す。
「でも待って」と著者はいう。
よいニュースだってたくさんある。
真っ暗闇、と思っても、わずかな光はあるのだという。
「絶望的だとニュースが伝えていても、希望に耳をすませば「きっと、だいじょうぶ」とささやいている」
この本は、光のありかを、希望のささやきの聞き方のヒントを教えてくれる。


これは、無責任でお気楽な楽観論ではない。
たとえば、環境問題についての章では、天体物理学者ニール・ドグラース・タイソンの言葉を引く。
地球温暖化を信じますか、とよくたずねられます。
それにはこの質問でお答えしましょう。
あなたは引力を信じますか?」

また、
「世界人口の約2分の1は、いまだに基本的な医療を受けられない。 
 世界人口の10人に一人は、基本的な飲み水さえ手に入らない」


また、
「私たちはみな同じ人間だから同じようにあつかわれるだろうときみは思っているだろうね。
 しかし、そうはなっていない。」


などなど。
これは、ほんとうに希望の本だろうか?
希望にもいろいろあるのだ。
著者がいう希望とは「『これはたたかうに値する』と強く思わせてくれる希望のこと」だ。


取り上げられたすべての項目に目をやれば、問題は山積み。
だけど、もっとよく見れば、「状況は変化している。少しずつ、小さな前進が積みかさなっている」と。
暗闇のなかで、先人たちが「希望」を胸に、ここまで道を切り開いてきたのだ。だから、ここで足踏みするわけにはいかないのだ、と。


この本には、大きな課題ごとに六つの章がある。各章のおわりには、『目標を達成するために――私たちにできること』ヒントが書かれている。
どのアドバイスも、まず、一番最初は「読む」から始まる。それから「話す」、それから……。
「教育とは、機会への扉を開いてくれる鍵のようなもの」


著者はいう。
「自分は小さすぎて何も変えられないと思う人は、夜寝ているときに蚊に刺されたことがない人だ」
きっと大丈夫。
「希望は簡単に捨てられないもの」ですって。