『よりぬきマザーグース』鷲津名都江(編)/谷川俊太郎(訳)

 

マザーグースはイギリスの伝承童謡で、その数は700とも1000とも言われているそうだ。
マザーグースというのは主にアメリカや日本で使われている呼称で、イギリスでは主に「ナーサリー・ライム」と呼ばれる。
日本の「わらべうた」のイメージからはちょっとずれていて、子守歌や遊び歌は、マザーグースのなかのほんの一部。物語詩、格言、早口言葉、なぞなぞやナンセンス詩など、ずいぶん多岐だ。
この本には厳選して、良く知られている50篇を谷川俊太郎訳で、英語の原詩とともに載せている。


とうの昔に日本語の歌になってしまっているものもあるし、文学作品や絵本などで知った歌もあり、そうか、これもマザーグースだったんだね、と驚くこともある。
鏡の国のアリス』に出てくるハンプティ・ダンプティも、もとはマザーグースのなぞなぞ歌だった。


巻末に、すべての詩の丁寧な解説があるのもありがたい。
たとえば、『靴のおうちのおばあさん』の靴は、幸せな結婚を意味するそうだ。
『ロンドン橋がおっこちる』の歌の最後のほうにでてくる「みはり」というのは、橋の安全を願って土台に人柱を立てた昔の風習を指すそうだ。
手遊び歌などは、遊び方のていねいな説明があるので、子どもの手をとって一緒に遊んでみたい。


楽しいのは、ナンセンス詩。
言葉は意味を伝えるもの、という当たり前から、言葉を解放したような感じがいいな。
『えっさかほいさ』と牛はお月さまを飛び越えるし、『ばあさんがひとり』死んでなければ元気でいるのね。


くせ毛に手を焼いている私は、『ちいさなむすめがいたってさ』にくすくす笑っている。
「ちいさなむすめがいたってさ
 おでこのまんなかかわいいまきげ
 いいこのときはとてもいいこ
 だけどわるいこのときはぞっとする」