『かものむすめ ウクライナ民話』 松谷さやか/オリガ・ヤクーヴィチ

 

助けられた動物が人間に恩返しをするお話は、世界各地にたくさんありそう。
『かものむすめ』はウクライナの民話だ。
このお話、日本の『つるにょうぼう』によく似ていると思うのだが、違うところもたくさんある。
たとえば、日本の『つるにょうぼう(つるの恩返し)』では、つるの女房は、小さな部屋にこもって機を織る。
だけど、『かものむすめ』の娘は、(すでに正体を知られてもいて)庭に出て、大空の下で糸を紡ぐのが、大陸のお話らしいな。


おじいさんとおばあさんが、森で、巣に丸くなったかもをみつける。よく見れば足が折れていたので、巣ごと家に連れて帰り、椅子のしたにいれてやる。
それから不思議なことがおこる。
毎日きのこをとりにいくおじいさんとおばあさん、家に帰ると、パンが焼けていて、おいしそうなボルシチが湯気をたてている。
近所の人に聞いたら、留守に、きれいな娘が水を汲みに出てくるのを見たという。その娘は足をひきずっていたそうだ。


絵が美しい。家の内や外、咲いている花や生活の道具など、隅々まで興味深い。
ことに、それぞれが着ている民族衣装。頭に巻いたスカーフの結びかたがおもしろい。
衣装の色や細かい模様にも見入ってしまう。
女たちが着ているブラウスの袖に施した刺繍、伝統的なパターンなのかな。みんな模様が違っている。
家の中の、あちこちにカーテンのように下げられた布類も、それぞれ違う模様の刺繡が施してあって楽しい。