『リィーヤとトラ』 アンナ・フェドゥロヴァ

 

森林かんしいんの娘リィーヤは、森の動物たちといろいろな話をします。リィーヤは動物たちの言葉がよくわかるのです。だから、ひとりで森へ出かけてもちっともこわくありませんでした。
動物たちは、森のくらしのむずかしさを何度も話してくれるのでした。
あるとき、リィーヤは、はじめて、トラと出会います……


森林はロシアのタイガ。
コラージュで描かれた森です。
深い緑の濃淡から茶色までのグラデーションで描かれる森は、ツンツンと先の尖った針葉樹が重なり、奥行きの広さ、深さ、暗さを感じます。
一方で、足元には、明るい色のシダや苔、草の小さな赤い実などが、親しげに広がっている。
リィーヤの上着やブーツの赤い色が緑の中で、きれい。
そして、樹々の間から悠々と現れるトラ。コラージュのトラのフォルムは、なんと美しいのだろう。


トラは、タイガのほこりたかき主。もっとも危険な猛獣。
そのトラとリィーヤが友達になったのは、命を救ったり救われたり、それは、動物の恩返し的な出来事があった。と、言うそばから、恩返しって感じではないなあ、とも感じる。
トラは、どうして小さなリィーヤのことがあんなにも気になったのだろう。


わたしは、絵本を読んでいるうちにだんだん、小さなリィーヤと大きなトラとが、よく似ているように思えてきた。
もしかしたら、トラもそんなふうに思っていたのではないかな。


リィーヤは、ほこりたかき主にとっての、もうひとりの自分。
そして、リィーヤのなかにも、ほこりたかき主がいる。
最後に寄り添い合うトラと小さな女の子は、とても居心地がよさそうだ。