7月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:3791
アルテミス・ファウル 北極の事件簿 (角川文庫)の感想
込み入った事情、展開の早さに目が回る。前巻に比べ、頭でっかちのアルテミス坊ちゃまの冷徹な悪者ぶり(マイルドな部分は前巻でもちらほらとみせてくれてはいたが)がだいぶ影をひそめ、少々丸くなりすぎてしまったため、魅力が半減。妖精ホリ―や従者バトラーの活躍が際立つ。だけど……魔法は、ときどきずるい! と思ってしまう。
読了日:07月31日 著者:オーエン・コルファー
アルテミス・ファウル 妖精の身代金 (角川文庫)の感想
12歳の天才誘拐犯とハイテク妖精たちの実際丁々発止のやりとりが、策謀巡らす頭脳戦が、なんともおもしろい。互いに決して理解できるはずのない同士が、油断ならぬと警戒しつつ、ふとみせる情なんかに、ちょっとほろっとさせられて、そのそばから甘かったわ、と気づかされ……なんとも忙しい物語だった。
読了日:07月30日 著者:オーエン・コルファー
鳥たちの河口 (1973年)の感想
五つの短編の主人公たちは行きづまり、囚われたひとばかり。『鳥たちの河口』が一番心に残る。むしろ鬱鬱とした風景だが、ここにいる「男」(あるいは「男」のなかの風景)を追っていると、不思議に心が静まり、なにか澄んだものが満ちてくるような気がしてくる。最後の場面が少しでも明るい兆しであってくれればいいと願っている。
読了日:07月28日 著者:野呂 邦暢
10:04 (エクス・リブリス)の感想
キイワードは「すべては今と変わらないただほんの少し違うだけで」 起こった(または、これから起こるはずの)事件や風景、名前などなどが、少しずつ形を変えて物語(?)のなかに繰り返し現れる。一人でてくてく歩いていたはずだったのに、隣に私自身がいる(それも無数に!)のに気がついて急いで手をふりあうような、そんな気分。
読了日:07月24日 著者:ベン・ラーナー
ブボがいた夏―アメリカワシミミズクと私 (ナチュラル・ヒストリー選書)の感想
あちらとこちらが、深い自然という隔てを越えて、あるいは、人間と動物が一緒に暮らすための(人間側に都合の良い)方便を越えて、こういう付き合い方があることを教えられ、覗き見ることができることは、気持ちを自由にしてくれる。ブボや、二羽のナミガラスの姿が、そして、メインの広大な森の描写が、鮮やかな絵となって心に残る。
読了日:07月20日 著者:ベルンド ハインリッチ
敗者たちの季節 (角川文庫)の感想
甲子園地区大会決勝で対戦した二校の球児たちを中心に、その回りにいる「敗者」たち(試合の勝ち負けだけではなく)を主人公にした連作短編集。物語のなかの敗者たちは、足掻いて足掻いて、自分のやり方をみつけだそうとする。だって、彼らは野球が好きだ。「好き」という素朴な言葉が、眩しい。
読了日:07月18日 著者:あさの あつこ
人生の特別な一瞬の感想
長田弘さんの「一瞬」の豊かさを、静かに浴びるような読書。わたしも自分の一瞬を書き出してみようかな、と思う。そう思うだけで、満ち足りた気持ちになってくる。 そして、こんなこと書いている今のことを、いつか特別な一瞬だった、と振り返る時がくるかな、と思う。
読了日:07月15日 著者:長田 弘
イタリアン・シューズの感想
誰だってちゃんとした靴が必要なのだそうだ。しょうもない主人公だけれど、ある出来事のあと、一緒に暮らすことになった犬に名前をつける場面が印象に残っている。その犬に「ふさわしい名前を」を。彼がこれまで一緒に暮らした犬と猫には名前がなかった。名前をつけるってすごく象徴的ではないか。
読了日:07月12日 著者:ヘニング・マンケル
くろいのの感想
すぐ近くにいても見えていないひとたちのなかで、この女の子は、くろいのがみえる。この子は、思いこみや偏見に、目を曇らされることもなくて、見えるものを見えたとおりに見ることができる子なんだろう。だから、くろいのが、恐いなんて思わないのだ。そういう子だから、見える世界も、感じる世界も、ぐんと広いのかもしれない。
読了日:07月11日 著者:田中清代
トマトさん (こどものとも絵本)の感想
トマトさんの顔は、でかくて真っ赤。あの子の顔になり、この子の顔になる。かわいくなんて描かれていない、むしろ憎々しいようなその表情が本当にかわいくて、絵本からは、おいしそうなトマトの匂いよりも、こどものいい匂いがする。幸せそうな寝顔みながら、「気持ちがいいね。いっぱいあそんだね、楽しかったね」と声かけたくなる。
読了日:07月11日 著者:田中 清代
星をつなぐ手 桜風堂ものがたりの感想
小さい本屋が元気になれば町も元気に! 桜風堂ものがたりは、これでおしまいだそうだ。でも、わたしはやっぱり続きを読みたい。あの人やこの人のこれからのことを知りたい。桜風堂と、この町が、これからどうなっていくのか、知りたい。いや……続きの物語は、それぞれの読者の胸の内で、すでに語られ始めているのかもしれない。
読了日:07月09日 著者:村山 早紀
路地裏の子供たちの感想
吐き気がしそうな汚さやいかがわしさ、暴力にまみれている少年たちの日々は時々、振り払ったら取り返しがつかないように思えるほどの仄暗い輝きがある。日々がそのまま誰にも言えない冒険(振り向いたら二度と元の場所に戻れないような)だから。うっかり手放してしために永遠に失われた掛け替えのないものに出会い直すような作品集。
読了日:07月07日 著者:スチュアート・ダイベック
空の青さをみつめていると 谷川俊太郎詩集1 (角川文庫 (2559))の感想
自分から望んで、より深淵な孤独へと潜っていくようにも、持て余しているようにも感じる。愛の歌は、自分自身も相手も傷つけていく愛。はかなく壊れ易いもの。美しさや喜びは歌ってはいない。世情や社会の出来事をうたう詩は、時代変わって起こっていることも違うのに、変わらないものはこんなに変わらないのか変われないのか。
読了日:07月05日 著者:谷川 俊太郎
無花果の実のなるころに (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)の感想
ミステリの連作短編集である。 起こった出来事を思えば(そして、被害者のことを思えば)どの事件も、嫌な事件だ。でも、終わってみれば加害者は憎めないやつになっている。それは、お蔦さん(主人公の祖母)の人を見る目の確かさだ。最後の事件はお蔦さんの留守に起こる。この短編集、望という少年の成長物語でもあったと、知った。
読了日:07月04日 著者:西條 奈加
《原爆の図》のある美術館――丸木位里、丸木俊の世界を伝える (岩波ブックレット)の感想
丸木美術館で購入。小さな美術館だからこそのゆずれないポリシーや信念などがいろいろな形になって美術館の内外にひっそりとおかれていることを知り「あれはそういうこと(もの)だったのか!」と膝をうったり、「戻ってそれを確かめたい」と思ったりした。この本は丸木美術館を訪れる前に読みたい絶好のガイドブックではないだろうか。
読了日:07月02日 著者:岡村 幸宣
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