『こどもってね……』 ベアトリーチェ・アレマーニャ

こどもってね……

こどもってね……


見開きの右側はこどもたちの肖像(いろいろな時のいろいろな場面のいろいろな表情の子どもの顔!)
どの子どもたちも、はっとするほどいきいきしている。迫力がある。美しい(美しく描かれないから美しい)


見開き左側の白いページには文字。
書かれているのは、


こどもってね、ちいさなひと。
でも、ちいさいのは すこしのあいだ。
いつのまにか しらないうちに おおきくなる。
から始まる、美しい詩なのだ。


この絵本の中で私が一番好きなところは、小さなこどものまわりにはちいさなものがたくさんだけれど・・・って話。


だけど こどもってね、
とっても おおきな世界で いきているんだ
町をこえて はてしなく ひろがる世界。
かいだんは どこまでも どこまでも つづいていて、
バスにのれば 宇宙にだって いけるよ
そういえば。
おとなはになって、体は、こどものころより大きくなったし、いろいろなことができるようになったけれど、世界は小さくなってきたかもしれない。
(私はもう、箪笥を通って別の世界へ行くことはできないと思う。)


絵本を見ていると、絵の中のこどもたちから、嘗てわたしが出会った(すれ違った)あのときのあの子やこの子のあの表情が思い出される。
それは、……


少し大きい子どもが、自分より小さい子どものことをおおまじめに「これだから、子どもはさー」と言って溜め息ついた、その表情。


ザリガニ獲りに夢中になっているところに、「ぼくたち、道路のランドセルどけてー。轢いちゃうよー」と声かけられて、はっと顔をあげた子どもの、その表情。


いちにち不貞腐れていた子が、お迎えのママの胸にとびこんで「ままー。ぼくね、悪い子だったの、ごめんなさい」と、何かいわれる前に先手を打った、その表情。


真剣になると、開いた口の歯の間からついつい舌が出てしまう子が、習い始めの文字を一画一画懸命になぞるときの、その表情。


セロテープを貼りまくって工作が完成したところだろうか、ふうっと息をつきながら椅子に凭れかかった子どもの、その表情。


散歩中の犬に出会って「かわいいねー」という友達の横で、頭をそびやかして「サクラのほうがかわいい」とつぶやく子どもの、その表情。


この絵本の中にはたくさんの子どもが出てくる。どれも一人の子どもかもしれないし、数えきれない程たくさんの子どもの一瞬かもしれない。
どの表情も、おとなになると、なかなかみられなくなる。おとなは用心して、ひとのみているところで、きっとそういう顔をしないようにしている。
そんな顔をするあなたたちは、そんな顔をするから、こどもなんだよ、とわたしは言ってやりたい。
(でも、こども。ほんとに、おとなになっても「こころのなかは ずっと こどものまま」の人も少なからずいるんだから)


そして、思う。


いまはまだ ねむりにつくまで 
やさしく みまもってほしいんだ
まくらもとに ちいさな あかりをともして
そのちいさなあかり、守ってあげたい。


この絵本、献辞までも味わい深い。
「きいろいわんこを忘れたことのない 大きくなったあの子へ」