『ローズの小さな図書館』 キンバリー・ウィリス・ホルト

 

一家四世代、ローズ→マール・ヘンリー→アナベス→カイルを主人公にして続いていく五つの物語(章)。
それぞれが十代だったころを、図書館と本との関わりを中心に描いていく。時代も違う、環境もちがう、性格も違うし、本が好きな子もいれば(読書の傾向はそれぞれ違っていて)、本など興味がない子もいる。
そうした子どもたちの生活のなかに必ず本が何かしらの形で関わってくるし、本との出会いの場としての図書館が大きな存在感を示す。


始まりは1939年。
ローズは14歳だった。農場が旱魃に見舞われ、父さんは家を出て行った。
母さんは、三人の子どもを連れて故郷の海辺の町に帰り、牡蠣の加工場で働き始める。
高校生だったローズは学校をやめなければならなかった。歳をごまかして移動図書館バスのドライバーに応募するようにと母親に勧められたのが、物語の始まりだった。


最初のページに家系図がある。読みながら何度も見返し、驚いたり楽しんだり。(あの時あそこで出会ったあの子とあの子が夫婦になったのか、とか、あの時お母さんのおなかの中にいたのはこの子だったのか、とか)
「みんなは、これからもずっと、わたしの人生の一部なんだわ。そして、わたしもまた、みんなの人生の一部なのだ」


五つの章は、各世代の子どもたちのほんの一時期を描いたもので、次の章では、その子は大人(次世代の親)になっていて、その姿の変貌に驚く。
同時に、どの章のどの姿も(主人公であれ、チョイ役であれ)その人のほんの一時期の姿に過ぎないのだな、と改めて確認する。
この先だってどう変わっていくかわからない。そして、それは楽しみなことだ。


こどもの時の夢は少しずつ形を変えていく。
積もっていく失意は、いつまでも積もり続けるわけでもない。
人は第一印象どおりではない。
そんなことを、何度となく物語のなかで見せられて、はっとする。物語は、多くは語らないけれど、その、はっとした感じがあれば十分。一つの場面が、前後斜めに膨らんでいくのを想像している。


物語に出てきた書名の一覧が最後のページに載っている。
一冊一冊を振り返りながら、こちらが望もうと望むまいと、本たちは私たちの暮しに入ってきて思いがけないことをしてくれるものだと、しみじみと感じる。(本好きな子よりも、本に全く興味のない子の話が心に残る)
本との出会いの場、図書館が、いついつまでも元気でありますように。