『コッコさんのおみせ』 片山健

 

片山健さんの描く子どもたちは、ほんとうにかわいらしい。
この子たちは、天使のように清らかでもないし、人形のように美しくもない。だけど、熱い体温をもち、膨らんだお腹や、涙と鼻水が混ざったような湿気や、子ども特有のいい匂いが、伝わってくるような気がするのだ。
そして、そのしぐさや、物事へのこだわりかた、しりごみのしかたまで、ときどき予測不能で、そのときどきに、はっとさせられる。
この子たちは生きている。
コッコさんはそんな子どものひとりだ。コッコさんの絵本は、シリーズでいくつも出ているけれど、わたしはこの本『おみせ』が一番好きだ。
幼い頃のわが子の姿を思い出して、ときどき読みたくなる。


コッコさんが、ぱちぱちぱちと手をたたいて始めるのはお店屋さんごっこ
おかしやさん、くだものやさん、カレー屋さん。
売り台(テーブル)の上にコッコさんが並べる商品が賑やかで楽しい。
木のつみきや、ままごと道具。
色とりどりのビーズ。おはじきやビー玉、さいころ、おてだま。
クッキーの空き缶、髪を結ぶボンボン付きのゴム、薬屋さんのカエルの指人形、石ころ、どんぐり。
上手に組み合わせて……ちゃんとケーキ、果物、カレーの大盛りになる。
わたしは目を皿のようにして、何が入っている(乗っている)か眺めいる。
大人の価値観でいえば「値の張るおもちゃ」から「がらくた」まで。だけど、全部まとめて、コッコさんには、どれも等しく宝の山で、どれも遊びの大切な素材だ。


お客さんを呼んでもだれもきてくれないので、コッコさんは積み木の引き車にカレーをのせて、相棒のくまさんといっしょに出前をすることにします。
家族はそれぞれの事情で大変忙しい(おにいちゃんは大きなクッションを抱いてのけぞっているように見えるけれど、巨人になって怪獣と戦っていて忙しいのだ)
けど、みんな、出前をちゃんと食べてくれる(時におかわりまで)のが、ほのぼのとうれしい。