11月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:6837ページ
イニュニック 生命―アラスカの原野を旅する (新潮文庫)
大地が持つ大きな時間に比べればほんの一瞬の人生。だからその一瞬を慈しむ。透明な文章、ゆっくりと満たされていく豊かな時間。夕暮れ、遠いアラスカの原野の焚き火、空に舞う火の粉を見ているような思いで、星野さんの言葉に耳を傾けるつもりで、ゆっくりゆっくり読みました。
読了日:11月30日 著者:星野 道夫
三つ穴山へ、秘密の探検
おじいちゃんは真剣に話す言葉を真剣に聞いてくれる。そして助けが必要ならその方法を考えてくれる。相手(子ども)の目線、価値観に合わせて。それが端から見たら最低最悪のアイディアだとしても、自分の傍らに真剣によりそってくれる人がいることの幸福。北欧の豊かな森の中、動物と子どもたちの交流もほのぼのと嬉しい。
読了日:11月29日 著者:ペール・オーロフ エンクイスト
ベルリン1945
三作とも、ラストシーンは、決して楽観できない状況の中で、前を向こうとする人々の姿を映して終わる。人は強いものだ、と繰り返し訴え続けているようです。人は、ひどいこともできるし、絶望もする。でも美しいものを作り出すこともできる人間なのだと。
読了日:11月28日 著者:クラウス・コルドン
ベルリン1933
三部作の二作目。重たい物語のなかで若い恋人たちの互いを思う気持ちがほっと明るい。同時に、彼らの純粋さが危なっかしくて切ないです。親は子どもに、何が正しいか自分の頭でしっかり考えることができるように、と願う。勇気を持ってほしいと願う。そしてそのように育った子どもは親の誇り。でも、その先に孤独と苦しみと死しか待っていないとしたら・・・豚のような安逸より苦しみの中で誇り高く顔をあげよ、と言えるだろうか・・・辛いです。
読了日:11月26日 著者:クラウス コルドン
ベルリン1919
ベルリン三部作の第一部。失敗に終わったドイツ11月革命。貧困と革命に翻弄される子どもたち。払われた犠牲、費えた夢、ますます困難な時代への突入。・・・それでも、百年先の光に向かって顔をあげる人々の姿にサトクリフの「ともしびをかかげて」のラストシーンが重なりました。
読了日:11月24日 著者:クラウス コルドン
アンジェラの祈り (新潮クレスト・ブックス)
皮肉なことに望んでいたものが少しずつ手に入り、生活の余裕ができると、不幸(とまではいかないかもしれない、なんとなくしっくり来ない何か)を感じる余裕まで生まれてしまったような。魅力的なのは作者の偏見のないあたたかさ、ことに弱者への静かな共感のあたたかさ。
読了日:11月22日 著者:フランク・マコート
月刊 たくさんのふしぎ 2009年 12月号 [雑誌]
表紙を見ながら、この冬、これと同じ配色のセーターを編もう・・・と思った
読了日:11月19日 著者:
逃れの森の魔女
魔女と人間の境界って何? 魔女以上に悪魔に近い人間たちはたくさんいたのに。むしろこの物語の中で一番純粋なのは魔女のように思えるのに。「ヘンゼルとグレーテル」の物語なら最初から筋書きは決まっているけど、きっと魔女に救済があるはず。どうやって救われるのかが読書中ずっと気になっていました。これは勝利の物語、と信じていたから。
読了日:11月19日 著者:ドナ・ジョー ナポリ,久慈 美貴,金原 瑞人
七秒しか記憶がもたない男 脳損傷から奇跡の回復を遂げるまで
「記憶障害は、それだけに目を奪われると、信じがたいほど恐ろしいものに見える。けれども、わたしが見ていたのはクライブで、彼は、人が自分について知っていたことをほとんどすべて失っても、相変わらず自分でありつづけるということの、生き証人だった。」夫婦の絆に言葉もなく。
読了日:11月17日 著者:デボラ ウェアリング
ひとり暮らしののぞみさん
3−2=1ではなくて最初から1だった。自分はいつも変わらない一。だから安心して、あの一やこの一と一緒にいられる。そうして、あの一やこの一が去ってもやっぱり一でいられる。一である自分をゆっくりと味わいながらあの一やこの一に思いを馳せる余裕、静かな強さ。最後に聞こえる季節はずれのふうりんの音が心地よいです。
読了日:11月17日 著者:蜂飼 耳,大野 八生
からすが池の魔女
17世紀のニュー・イングランド。ピューリタンの清貧で偏狭に閉じられた社会の事情を絡めながら南国育ちの奔放な少女が一人前の女性となっていく姿を描きます。ドラマチックに展開する物語、魅力的な人々。何よりも印象的なのはイルカ号の白い帆。それは海であり、太陽でした。
読了日:11月16日 著者:E.G.スピア
リバウンド
自分の薄っぺらさと面と向かい合わされたような気がして、何度も打ちのめされました。障碍のあるなしにかかわらず、対等な関係で、あとから入るもののためにドアを開けて押さえておいてあげる、押さえておいてもらう。そんな関係を築けたことが二人の少年のそれぞれのリバウンドになっているように思います。自分の可能性をかけて未来に向かって、何回挫けても、何回だってリバウンドする勇気がもてますように。
読了日:11月14日 著者:エリック・ウォルターズ
アンジェラの灰 新潮クレスト・ブックス
どん底にいながら、なんともしぶとく、愛情深く、おおらかで、エネルギッシュ。ただ生き延びるだけ、惨めでいいことなんか一つもないはずなのに、からりと明るい。少し切なくて少し苦い。
読了日:11月13日 著者:フランク マコート
森の絵本
森の声を聞きながら、たいせつなものをさがして森の奥へ入っていく。たいせつなものはひとつではない。どんどんふえていくのがうれしい。繰り返し訪れるたびに森は、深く豊かになっていくかもしれない。
読了日:11月10日 著者:長田 弘
アーサー王と円卓の騎士 (福音館古典童話シリーズ (8))
たくさんの物語が、アーサー王伝説をもとに書かれたわけがわかるような気がします。わたしもまた、読みながら、様々な物語に、いつのまにか自分勝手な肉付けをして楽しんでいました。
読了日:11月09日 著者:シドニー・ラニア,石井 正之助,N・C・ワイエス
ジェミーと走る夏 (ポプラ・ウイング・ブックス)
なんとも言えず爽やかな、二人の少女の勝利と自立の物語。「おまえたちふたりが仲良くしているところを見ているとね、あたしは思うんだよ。いつか、なにもかもが変わる日がくるかもしれないって。なにもかもが、よくなる日がね」 グレースばあちゃんの言葉そのまま、物語が作者の祈りのように感じました。いつの日か、これが本当のことになると信じたい。
読了日:11月09日 著者:エイドリアン フォゲリン
たまごを持つように
凛として清らか。それなのに、優しく、やわらかい。がむしゃらに勝利に向かって突き進むのではなく、一歩引き、無心になる。勝ち負けを超えた「正射」という判定があることを知り、美しい印象として残りました。弓を引く中学生の姿が清清しく、その成長がまぶしいです。
読了日:11月08日 著者:まはら 三桃
わたしの家はどこですか―アルツハイマーの終わらない旅
自身がアルツハイマーであることを自覚していること、本人も周りの人々も、とても開けっぴろげであることにまず驚いた。当たり前だけど、アルツハイマーであっても「感情」は健全な人と変わらない。変わらないからこそ、自分の脳が崩れていく気配に敏感であり、不安であり、どうしようもなく苦しい。だけど、著者は、この禍々しい敵に、勝ち目のない戦いを挑み続ける。人としての尊厳を思います。
読了日:11月05日 著者:ラリー ローズ
シロクマ号となぞの鳥 (アーサー・ランサム全集 (12))
(再読)最後の巻が卵を守る話なのがよかった。卵は、彼らの輝かしい子ども時代の象徴のような気がするのです。ちょっと感傷です。ランサム全集をつねに傍らにおいて過ごした5ヶ月間、すごく楽しかった。
読了日:11月04日 著者:アーサー・ランサム
そして名前だけが残った―チェロキー・インディアン 涙の旅路
代々住まった土地を追われ、西部へ強制移送されたチェロキーの人々。「涙の旅路」というけれど、その残虐さは「ホロコースト」としか言いようがない。チェロキーの文化について知りたいと思ったのですが、そういう本ではありませんでした。
読了日:11月02日 著者:アレックス・W. ビーラー
人はなぜ「美しい」がわかるのか (ちくま新書)
「美しい」ということは「他者のありようを理解する」こと。見た瞬間存在さえ否定してしまったら、決してそのものの美しさはわからないんだなあ、と、ゴキブリやらなにやらの話から感じたのでした。「枕草子」と「徒然草」の美意識の比較は興味深い。
読了日:11月01日 著者:橋本 治
読書メーター
「ベルリン」三部作、「アンジェラの灰」「アンジェラの祈り」、「ジェミーと走る夏」など、読み応えのある作品に出会えて幸せでした。今月も充実した読書だったなあ。