『私立探検家学園3 天頂図書館の亡霊』

 

松田コロンたちは、進級して探検家学園二回生になった。(小学六年生に相当)
普段の日の授業風景と学期末の実習とで物語が成り立っているのは、一二巻といっしょ。
今度の実習は、インカ帝国を思わせる、神殿のある村で、巨大結晶を探す。
それから、その間に、俄に結成した二回生有志の探偵団(表向きはマラソン部)による探検家学園の秘密探索の進捗が描かれる。外部の協力(?)もあり、この学園の何が変なのか、不気味なのかが、はっきりしてきた感じだ。


これはSFなの?ファンタジーなの? いや、今更何を言うのかと言われそうだけれど、なんとなくそういうジャンルに括ることを読み手として拒否していた。だって、ほら、学園には不思議なことがたくさんあるけれど、それ以外、みんな普通に(実はそれぞれの事情があることも含めて)暮らしているじゃない?
でも、彼らの推理は本当に当たっているのだろうか。いまだに半信半疑。
微かに見え隠れする学園の不穏さも際立ってきた。それはたぶん、最初からうすうす感じていたことではなかったか。これほどに魅力的な学園であるのに、信じ切ることが出来ない気配がある……。
わっと盛り上がる場面でこそ、かすかな醒めた気配に気がついて戸惑う。


さまざまな場面を通じて、この巻の主題は、きっと「ことば」だ。
文字の始まりや、音楽と言葉との関係など、興味深いことばかり。考え進めることの楽しさ。
その一方で、生徒がひっそりと「ことばってこわいですね」と言う、深刻な事態があらわれる、落とし穴みたいに。
何の気もなく受け流してきた言葉、一見罪のない、優しげな言葉に隠された怪しげなものに少しだけ注意深く読む。


読み捨てにできない、哲学的とも思うような深長な言葉が物語全体に散っている。
一気に読んでしまえる冒険物語だ。ああ、おもしろかった、と読み終えていいのだ、と思いつつ、ちょっと立ち止まって、振りかえってみたくなる。
「……そのことを、ずっとかんがえていきたい。いつか、こたえを出せるようになりたい。一生かかっても」という、ある少年の言葉が、読者たちへのエールのように聞こえてくる。