『警視庁アウトサイダー』 加藤実秋

 

警視庁桜町中央署の刑事課に、警視庁組織犯罪対策課「マル暴」から飛ばされてきた架川英児は、ダブルのスーツにサングラス、と格好からして周りから浮いているうえ、鋭い眼光と、押し出しの強さで、独特の存在感を放つ。
この架川とコンビを組むことになったのは、署のエース刑事と誉の高い蓮見光輔。身だしなみから周囲の気配りまでソツがない。いつも笑みを絶やさない蓮見が、新しいパートナーを、本当のところどう思っているか、わかりにくい。


光輔は素晴らしい推理力の持ち主で、だてにエースと呼ばれているわけではないことを、架川とコンビを組んで、最初の事件解決で見事に証明してみせる。
だけど、光輔が真犯人に辿り着いたのは、架川がマル暴時代に着々と気づいてきた経験や人脈によるところが大きいのだ。
さらに、行動をともにするうちに、粗野な架川の意外に繊細で思いやりのある面も、見えてくる。一方、気配りの光輔の、思いがけない厳しい横顔も垣間見える。


まったくタイプが違う二人の刑事、実はそれぞれ隠している秘密があり、なんとしても達したい目的がある。
そのために、今の立場を最大限利用して、互いに協力しあおうと思っている。
「俺のマル暴仕込みの捜査と、お前の推理力がありゃ、どんな事件も解決できる」と架川。
「あんたのマル暴デカの経験と人脈が、俺の計画には必要だ。あんたが俺を利用するつもりなら、俺もあんたを利用してやる」と、これは光輔の心の中での誓い。


こうして、二人、それぞれの能力を発揮し合い、三つの殺人事件を解決しながら、同時に、じわじわと、秘密の目的に近づこうとしている。
もしかしたら、二人が目指しているのは、同じ頂点では……。


物語の始まりで、ひとりの父親が息子にぽつんとこんな話をする。
「だが、世の中には正しいことを喜ばない人間もいる」
それから、物語のおわりのほうで、別の父親が娘にこんなことを告げる。
「だが、世の中には、お前が想像も付かないような悪いやつがいる」
「悪い人間」「悪いやつ」は、どんな「悪」なのか。


二人の刑事の動きをひっそりと(露骨に?)見張る不気味な一群があることも気になる。
一つ終わって、新たに動き出しているが、さて……。


……つづき、あるのですね。
読まなくちゃ。