『あの子たち!』 M.B.ゴフスタイン

 

砂の向こうから、あの子たちはやってくるのだ。
あの子たちは、太った子も細い子こいるし、大きい子も小さい子もいる。
ネクタイをした子も帽子を被った子もいる。
大きな大きな鍋のようなボールを抱えた子もいるし、野球のバットを担いだ子もいる。
弾むような足取り、踊ったり回ったりしながら。
ころんだり、ねころんだりしながら。
あの子たちは、ホームをさがしているんだって。


あの子たちは、いったい何だろう。子どものようで、何かの動物のようで、もしかしたら妖精かもしれない。
ホームをさがしにやってきて、ホームをさがしに帰っていく。


ホームをさがす、という言葉が何度も出てくるのだけれど、悲壮な感じはちっともなくて、
スープをかき回すのに、野球のバットしかなくたって、平気だ。
つまずいてころんだり、登って踊った木は折れて倒れてしまうし、それでも、ちっとも悲観したふうはなくて、ただひょうひょうと歩いていく。おどるように、はねるように。


あの子たちは何だろうなあ、と思う。
ホームって何だろうなあ、と思う。


きっといろいろな読み方ができると思う。
「『あの子たち』は私だ」ということもできると思う。この絵本の巻末にある「あとがき」の言葉みたいに。
「あの子たち」は、あの人たちだ、ということもできると思う。
もしかしたら、明日のわたしかもしれない。


ここがホーム、と思える場所に、どうか辿り着けますように。