『オオカミたちの隠された生活』 ジム&ジェイミー・ダッチャー

 

『オオカミの知恵と愛』を読み、ソーントゥース・パック(群れ)のオオカミたちの事をもっと知りたくなって、参考書のつもりで、手に取った本である。
エッセイと写真で構成されているこの本。
全ページカラーのダイナミックな写真を、まずは写真集として存分に楽しんだ。また会えてうれしいよ、ソーントゥース・パックのオオカミたち!という気持ちだ。


オオカミたちが、大きな誌面いっぱいに踊る。
走り、ころがり、じゃれあい、むつみ合い、揃って遠吠えをする。
雪の大地を、森の樹木の間を、列を作って走り、一頭だけで歩き、梢の陰から顔を覗かせる。
様々な表情、様々なポーズ、動き。
とくとくと血の通う音が聞こえるよう。吐き出される息の熱さも。
何よりも、丸ごとのオオカミたちは、とっても美しかった。


エッセイは、『オオカミの知恵と愛』の内容と被る部分が多いが、後日の話が心に残る。
ウルフ・プロジェクト(嘗てのオオカミ生育域にオオカミを復活させようという計画)終了後のソーントゥース山地のウルフ・キャンプに、後日、著者たちは立ち寄る。そして、新しいオオカミの足あとを発見するのだ。高揚感が押し寄せてくる。
「ソーントゥース群はもうここにはいない。その代わりに、ここを自分たちの場所にした野生のオオカミたちがいるのだ」
だけど、喜びも束の間。
オオカミたちは、家畜を殺すという疑いのもとに、人間たちに追い詰められ、皆殺しにされてしまうのだ。


私たちがオオカミと共存するためには課題がたくさんある。
「彼らの社会構造を深く探り、彼らもまたリーダーシップや学習行動、家族の絆に支えられた社会に生きるものだと認識する必要がある」
と著者は書く。

わたしたちのなかにあるオオカミへの偏見(友としても敵としても)を確認し、本当のことを知りたいと思うことは、共存への第一歩だと思う。
この本は、きっと、その足掛かりのひとつだ。


「オオカミの目を見つめることは
 あなた自身の魂を見つめることである。

   アメリカ先住民のことわざ」