『フレディ・イェイツのとんでもなくキセキ的な冒険』 ジェニー・ピアソン

 

明日から夏休みという日に、大好きなおばあが亡くなり、フレディは、父さんと2人きりになってしまった。
おばあはフレディに手紙を残していて、彼は、その手紙から、自分の本当の父さんの名前と出生地を知った。
おばあも父さんも隠さなかったので、今までだって、フレディは、いまの父さんのジョーが本当の父さんじゃないことを知っていたが、だからといって、どうということもなかった。フレディが生まれてすぐ母さんが亡くなり、その後、ずっと彼の唯一無二の親だった。
おばあが亡くなった時、ジョー父さんはこんなふうに言ったのだ。
「おまえはおばあにとってすべてだった。父さんにとってはいまでもそうだ」


フレディは、父さんに黙って、本当の父さんに会いに行くことを決心する。
同行するのは親友のベンとチャーリー。二人とも親との間にちょっと問題を抱えていて、最悪の夏休みになることが決まっていたので、その前に、思い切ったことをしたいと思っていた。


おばあはよくキセキの話をしていたけれど、フレディはキセキなんか信じない。たまたまタイミングがよかっただけだ。
だけど、三人の旅は、キセキ的に波乱万丈の旅になる。すぐにみつかるはずの本当の父さんはみつからない。お金はないし、泊まるところもないし……もっといろいろ失くして、だけど、このまま帰るわけにはいかない。
次々に、絶妙過ぎるタイミングで、何かが起こる、巻き込まれる。そのあげくにさらに絶妙過ぎるタイミングで、ギャングの「もとじめ」に追われることになったり、ヒーローにまつりあげられたり。
これ、キセキか?


次々に忙しく場面が変わる三人の珍道中に何度も笑ってしまう。
なんだ、このドタバタは。と思うが、それだけじゃない……フレディの家族、亡くなった人たちや、家に残してきた父さんを思う気持ちが、ドタバタの下から沁みてくる。そして、この旅に何を求めていたのか、何を考えていたのか、本当の彼の気持ちを知る。
それとともに、同行した二人の親友の家族への思いも変化してくる。
三人、この旅の終わりに、何をみつけたのか。見つけなかったのか。
キセキってほんとうはどういうものだろう。(……思うのだけれど、今、ここにいる人に出会えたこと、それこそが最大のキセキではないか。)