『あしたもオカピ』 斉藤倫

 

オカピという動物を、知っていますか? 
「シカや、ウマに にているんですが、しましまが あります。といっても、しましまは、あしと おしりだけなので、シマウマでも ないのです。
みみや、かおの かんじは、ロバにも にています。
よく 見ると、ちょっとだけ つのも あるし、したも、みょうに ながいのです。
そんな、ふしぎな どうぶつです。」


動物園のオカピは、草を食べていた。
飼育員さんに「うまいかい」と聞かれて
「うまくて うまくて、たまらないって わけじゃないね」
と答える。
オカピの毎日ってそんな感じなんだと思う。特に不満はないけれど、特別、ワクワクするようなことも起こらない。最初から期待もしていなかったのかも。


その夜は、空に、なんと珍しい、よつば月が出ていた。
よつば月の夜には、「どうぶつたちの ねがいが、なんでも かなうんだよ」と、飼育員さんが教えてくれた。
だけど、オカピは、ほんとうは、自分の願いは何なのか、願いがあるのかどうかさえ、わからなかったのだ。


「ぼく、きょうも、シカでも、シマウマでも、キリンでもない、ただの オカピだったよ。」
最後にオカピは、言うのだ。
それは、最初から最後まで何も変わっていない。
でも、違う……
今のままの自分でいることと、今のままの自分が「好きだ」と思うことは、やっぱり違うのだ。
それは、願って叶えられるものでもなくて、まだ見たことのないものを、さがしているということさえも気づかずにさがす、ちょっと暢気な宝探しみたいだ。
「生まれてから一番楽しかったんだ」と思える日が、これから先もまだまだきっとあるよね。